ALCYONE LEGEND For 170馬力への挑戦Vol 1
さて、いよいよ組立編に入るのですが考察編も別に分けて展開する予定だったのですが重複する内容が多いと思いますのでとり
あえずひとまとめにしてこの組立編の中でおいおい説明しながらやっていこうと思います。
アルシオーネの知識細胞?を豊かにする故、お許しいただきたくお願い申しあげます候。
組立の最中に詳しい説明とこのプロジェクトの目玉?であるドーピング内容説明を織り交ぜてやっていきますので組立編は分解
編より長くなりますが飽きずにお付き合い下さいませ。
冒頭
170馬力への挑戦とは単に、区切り的、ゴロがいいとかいう単純なものでありまして別に今回、完成したエンジンが170馬力
あるという事ではありません。
メーカー純正のパーツを用いて出来るだけ手を抜かず?にアップグレードできるかに挑戦しました。
コンセプト発表で公開したように今回はオールニューレオーネの省燃費対策車用のピストンの組み込みをメインにトラブル修理に
便乗してクランクシャフトのジャーナル部「クランクケースとの受ける所」、クランクピン「コンロッドの付く所」を研磨して多
少ながら径が小さくなっています。
これは摺動抵抗を低減するのに有効な手段ですが、あくまでピストンやコンロッドの付随して動くムービングパーツがノーマルに
対して軽量になっているのが肝要です。
メーカー純正ではアンダーサイズベアリングと言ってオイル系のトラブルでこれらのメタルが焼き付いてジャーナル部やピン部に
損傷がある時に研磨加工してクランクシャフトを捨てる事なく再生出来るように設定されています。
エンジンが高い出力を発生するに当たりNA車ではターボと違い、高い回転迄エンジンを回して馬力をまさに絞り出すというような
感じでターボ車のブースト圧を上げるだけのお手軽チューンという訳にはいかずに、とにかく内部のムービングパーツの軽量化に
尽きると思います。
軽量化といっても簡単なものではなく、部品を眺め、ここは駄肉、ここは大事と要所、要所を見極めて切削していくのですが、部
品を単に削るだけでは加工傷から部品の疲労による破壊が始まるのでとにかく最終は磨いて研磨します。
研磨する事により部品表面の粗度が小さくなり応力集中を避ける事が出来て、単にノーマルの純正部品のコンロッドの側面を磨く
だけでも多少は強化コンロッドになりますね。
レースエンジンでのトラブルは概ねコンロッド関係「オイル潤滑の不良やメタル系」が多く、これはレースの現場ではいかに、内
部部品を究極迄減量して高回転まで回しているかという事です。
ターボエンジンの場合は反対に燃焼圧力に対して、いかに耐えられるかがポイントであり、軽量化よりかは頑丈さが要求されます
が、エンジンである以上は軽いにこした事はなくこの辺は各メーカーから工夫をこらした部品が採用されており、一昔前のチュー
ニング屋さんが行っていた作業をメーカーがやっているような感じで魅力にあふれたエンジンが市場にたくさん出回り、初めから
チューン済みのようなハイポテンシャルエンジンがざくざくと目白押しです。
そんな中で設計が古いエンジンを楽しいエンジンにするには!という感じでやり初めましたが、やはり簡単なものではなく試行錯
誤の故、やっとという感じで出来上がりました。
こだわり
冒頭からいきなり派手なエンジンが登場しましたが、これは98年6月下旬に無事に組立が終了してボデーに搭載されて火入れ
式も終わりました。
170馬力への挑戦となっていますがノーマルエンジンが公称150馬力でこれはメーカーが設計して全ての機能部品が完璧に機
能してそれぞれがハーモニーを奏でた時の数値であり大量生産の車である以上、全てのエンジンがラインオフした時点で150馬
力あるとは限りません。
エンジンというのは、そもそも内部部品の的確な動き、正確さ、バランスから成り立っており、その一部でも重さが極端に違って
いたりしていると調律を乱し、不協和音を奏で、振動やフィーリングの悪化をもたらします。
ホンダのインテグラ、タイプRに代表されるような高回転ハイパワー指向のエンジンは大量生産からは生み出される物ではなく、
人間による手作業が入って初めて到達する究極のメーカーチューンのエンジンであり、組立上の偶然の産物「ピストルでいう所の
ワンハンドレッドハンド」で全ての部品の寸法が同一で重量も全て揃っていてもあと、プラスアルファがないと、人の心を刺激す
るエンジンは生まれないと思います。
昔からカワサキのバイクはエンジンのシリンダヘッドのポートの少しの段差を手作業で削っていました。
インテ、シビックのタイプRしかりスバルのレガシーSTIバージョンやインプレッサ系でもやはり人が手作業で細々と仕上げて最
終仕様を決めています。
エンジンとはピストンが燃焼室内での燃焼圧力により押し下げられ、その下に押し下げられた力を回転運動に変換して動力として
いますが、大量に生産されるシリンダーブロック、ピストン、諸々の部品が全てが同一寸法で同重量であるという事は機械で製作
される以上、製造時の公差があり、あり得ない事ですので、これを今回の組立を通じて、ビジュアルに分かりやすいように解説し
ながら組立編をスタートさせます。
上記の画像ですが、今回の主役?である軽量ピストンと分解されたクランクケースとシリンダーヘッド左右です。
6気筒ですので当然、6個使います。
奥側にあるヘッドはまだ清掃されていなくて汚いのですがこのヘッドに深刻なトラブルが発見されました。
これは後ほど解説します。
立てて置いてあるクランクケースは左側で清掃してピカピカになっていますがオーバーホールの作業内容の内、大半は部品の
洗浄や測定に費やされますが、特に永年の埃や油の焼き付きにはかなり手を焼きます。
清掃の仕方はこれといった方法はなく、単に根気の勝負でありまして、掃除しながら、部品の痛み具合や摩耗、傷の発見や割
と大事な作業でありまして、オーバーホール=部品の洗浄といっても過言ではありません。
私のVXは走行が19万キロオーバーで汚れ方はそこらへんのブルセラマニア、真っ青の汚なさでありましていかに楽に汚れ
を落とせるかを試行錯誤した結果、下記の画像のような方法がクランクケースやヘッドのような大きな部品の手早い洗浄に有
効だと行きつきました。
いい湯だなー!という感じで大物の部品を空き缶で煮込んでいます。
エンジンに付着した汚れの大半がオイル系の物質がカンパチになり汚れそのものが簡単に洗浄液で洗った程度では落ちないので
今回のように高温のお湯でぐつぐつと煮込む事で汚れに含まれている油分を浮き出させて残った埃分を柔らかくするとポロポロ
と簡単に汚れが剥がれるような感じで落ちます。
細かい所や手の入らない所にも有効みたいですが最後の仕上げはやはり人力に頼る所が多いですが作業性をかなり高めてくれま
した。
金属に水分というのは大敵でありますがすぐに然るべき処置「十分に乾燥させてCRCを吹き付けておく」を行えば錆びたりは
しないので安心ですね。
この煮込むという方法は空冷エンジンのヘッドの燃焼室やエキゾーストポートに付着した頑固なカーボンを簡単に落とすという
事で一部の修理屋さん?では知られております。
クランクケース内側よりの展望ですが茶色に変色しているのがオイルが劣化して変質?したものと思われますが絶えず、内部で
オイルが流動している部分というのは分解編であったようなチョコフレーク状の物質は見受けられません。
どんなエンジンでもこまめにオイルを交換していても茶色に変色してくるのは避けられないのですがこれはエンジンオイルが高
温下で、含まれている科学成分が変化して付着すると思うのですが詳しい事は分かりません。
掃除しながら考えたのが茶色の色がきつい所程、廻りに鋳造時のパーティングラインや部品の取り付け部の所が邪魔をしてオイ
ルの流れが悪い様でした。
今回のオーバーホールではこの辺りのオイルがオイルパンへスムーズに戻るように隔壁部の所の不要そうな肉やパーティングラ
インを削り落としてオイル回収がスムーズに行くように心がけました。
通常の直列エンジンではヘッド迄、廻ったオイルは重力で自然落下していき割とスムーズにオイルパン迄、戻るのですが水平対
向というレイアウト上、末端のヘッド迄行ったオイルをどうやってオイルパン側迄、戻すか検討しました。
思いついたのがクランクケースやシリンダーヘッド、カムシャフトホルダーという大きな部品の内部下側の面に緩い傾斜を付け
るようにして全体的にスロープ状にして削りました。
勾配度からいくと、ほとんど無いに等しいレベルだと思いますが末端のヘッドからクランクケース迄の部品の合わせ面に段差が
極力出ないようにしてエンジン全体を水準器で傾きを0にしてヘッド側からオイルを流すと、ゆっくりではありますがクランク
ケースの方にしっかりと流れていきましたのでノーマルと比較するとオイル回収はスムーズにいってるものと思われますね。
これがエンジン性能に関係あるかと言われると、全くないのですが、不意のトラブルやオイル消費が過大でオイルパンに残って
いるエンジンオイルの残量がオイルポンプに吸い上げられるギリギリのレベルやハードコーナリングでの油面の傾きでのオイル
ポンプがオイルを吐出するか、だめかという瀬戸際の時に少しでもオイルパンに早くオイルが戻ればオイルの潤滑切れというク
リティカルなトラブルの回避には有効だと思われます。
右側画像は最終仕上げにキャブクリーナーを噴霧しています。
分解編をご覧になられた方はクランクケースの内部が茶色に変色していて通常の洗浄液では落ちないので上記の必殺技にキャ
ブレター用のキャブクリーナを併用して一生懸命に掃除します。
キャブクリーナはスラッジやカーボンを簡単に溶かして落とせる反面、汚れの量に比例してコストが高くつくので最後の仕上げ
に今回は使用しました。
最終仕上げの終わったクランクケースです。
上記画像の左側と比較すると茶色に変色していたケース内壁まで、隅々迄が綺麗になり気持ちいいです。
Presented by ドクター