11.マネジメントシステム
11-1. ファイリングからレコードマネジメントへ
11-1-1. 記録管理のISO15489 (JIS X 0902) (「ファイリングの部屋」アーカイブ)

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スマートフォンにも対応したRenewal版を開設しました。ここのサイトデータもアーカイブとしてコピーしています。Renewal版の「ファイリングの部屋」をご利用ください。新しい内容も、少しずつ追加しています。

 

2001年にISO15489が制定されていましたが、2005年7月にJIS X 0902-1「情報及びドキュメンテーション −記録管理−」として制定されました。
 
ISO15489制定の意義
 

最近企業の不祥事が多発しており、これを受けてコンプライアンスが注目を浴びてきました。コンプライアンスは「法令順守」と訳されていますが、単に法令だけでなく、企業倫理までも含めた幅の広い意味も含んでいます。この動きはさらにCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)までつながってきます。
コンプライアンス、CSR活動を通じて企業の社会的評価を高めていきますが、確かにそのような活動を行っていることを示すためにアカウンタビリティ(説明責任)が必要となります。

このISO15489は、アカウンタビリティのための記録管理をどのようにすればいいかの指針を示しており、今後重要になってくると思われます。

     
ISOの構成
 

ISO15489は二部で構成されています。

     
  ISO 15489-1 :2001 , Information and documentation - Records management - Part 1: General
    今回JIS化された部分です。
     
  ISO/TR 15489-2 :2001, Information and documentation - Records management - Part 2: Guidelines
    第一部で概説している原則、要素に従った記録の管理を確実にするための手順を提供しています。記録管理の責任者のための規格であり、一般の人には直接は関係がありません。
JIS化するとの話もありましたが、もとのISOがまだTR(技術レポート)であることと、ISOそのものが改定されるとの話もあり、止まっているようです。
     
「文書」と「記録」
  JISの解説の部分で、これまで日本では、英語の "document" と "records" の違いをあまり意識せず、「資料」「文書」「記録」などどしてきましたが、JIS化にあたり、これらの違いを明確にする必要に迫られ、結局 "document" を「文書」、"records" を「記録」と定義したと書かれています。しかし、実際にはISO9001やISO14001などでは混乱して使われていたこともあり、外国でも完全ではないようです。
簡単に定義すると、「記録」とは誤りの訂正など以外では、修正してはいけないもので、 「文書」とは「記録も含んだすべての情報と考えることができます。
     
  文書 (document)
    一つの単位として取り扱われる記録された情報。又はオブジェクト。
  記録 (records)
    法的な責任の履行、又は業務処理における、証拠及び情報として、組織、又は個人が作成、取得及び維持する情報。
     
  記録を行動の証拠として位置づけているため、「文書」は修正・変更を行うことはできますが、「記録」となると修正・変更をすることは出来ないだけでなく、真正性、信頼性、完全性まで求められます。
     
 

記録の定義から、事務的な業務処理の中で人が作成するものだけに限定されそうですが、『記録は,関連する処理又は事象の発生時に,又はその直後に,事実について直接知っている個人によって,又は処理を行う業務で日常的に使われる機器によって作成されることが望ましい。』とあるように、機器により作成されるものも含んでいます。
機器により作成されるものとは、センサーや測定器のデータ、監視カメラの映像記録なども含まれると思われますが、これらについてはあまり言及されておらずあいまいな取扱いです。

     
記録管理の目的
 

JISには「規制環境」という項目が設けられています。この規制環境の言葉の定義は明確には示されていませんが、法令や企業倫理間で含めた規制のことを指しています。そして規制環境を順守している証拠として、その活動の記録に残すことを目的とした記録管理であり、アカウンタビリティ(説明責任)のためのものであるとしています。

     
記録管理に求められる要件
  記録管理が正確なものであるために、以下の要件(このJISでは記録の特性)を満たすことが必要としています。この要件は、e-文書法で求められている要件のうちの「完全性」とほぼ同様のものとなっています。(「法定保存文書の電子化」参照)
     
  真正性
    権限のある記録作成者が作成し、権限の無い人が記録の追加、削除、変更、利用及び隠ぺいすることから確実に記録を守るようにし、記録を管理する方針や手順を明確にして文書化していることが必要です。
     
  信頼性
    記録されている内容が完全であることを信じることができることが大切で、そのためには、何かを実施したり起こった時に、事実について直接知っている人が、日常的に使用している機器で作成することが必要です。
     
  完全性
    記録は、その内容が完結しており、変更されていないことを意味しています。記録に対する追加や注釈については、誰が、どのような場合に行っても良いかを明確にすることを求めています。
     
  利用性
    存在場所がわかり、検索でき、表示でき、解釈できるものをいいます。記録は単に保存しておくだけでなく、その後の業務の中で利用し、活用できる内容であることも大切です。
     
何を記録するのか
  どのような文書を記録として取り込むかは、その組織の形態や社会的な情勢によっても異なりますが、リスク分析を行ったうえで、アカウンタビリティのために必要なものを対象とします。
     

このJISは、コンプライアンス、アカウンタビリティの概念をベースに、業務記録にとって何が必要かを明確にしようとするもので、これを正確に保存しようとするものです。単なる文書管理ではなく、もうすこし狭い意味での業務の記録に焦点をあてているものです。

 

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| 4.書類の整理 | 5.書類の電子化 | 6.電子化書類の活用 |

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Updated on 2013/09/28