1.情報の記録
1-3.変化する文書の概念 (「ファイリングの部屋」アーカイブ)

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スマートフォンにも対応したRenewal版を開設しました。ここのサイトデータもアーカイブとしてコピーしています。Renewal版の「ファイリングの部屋」をご利用ください。新しい内容も、少しずつ追加しています。

 

これまでの文化では、紙に書かれた書類が主流であり、文書をどのように整理して、利用しやすいようにするかがファイリングの課題でした。では、ここで簡単に文書と述べているものは、具体的にはどのようなものでしょうか。

広辞苑によると「(古くはブンジョとも) 文字で人の思想をあらわしたもの。かきもの。ふみ。もんじょ。」とされ、また、学研国語大辞典では、「〔実務上必要な事柄を〕文章にして書きしるしたもの。書類。かきつけ。文書(モンジョ)。」と説明されています。

一般には文書と言われると、(昔は木や竹なども使われたようですが)文字を書いた紙を考えますが、厳密な意味ではもっと幅の広い概念が含まれています。また、最近の情報技術(IT)の進歩により、これまでにない新しいタイプのものも増加してきています。

 
最も古い文書の概念
 

法律的に文書の概念を明らかにするものに、大審院の判例(明治43.9.30)があります。これによると、「文書トハ文字若シクハ之レニ代ル可キ符号ヲ用ヒ永続スヘキ状態ニ於テ或物体ノ上ニ記載シタル意思表示ヲ云フ」とされています。
これは、刑法上の文書についてのものですが、ここで文書としているのは次のようなものとなります。

  1. 文字やこれに代わる符号で記載されている。
  2. 永続性のある状態で、ある物体の上に記載している。
  3. 意思表示したものである。

文字に代わる符号とは、盲人用点字(日本点字は1890年(明治23年)制定)、速記(1882年(明治15年)「日本傍聴筆記法講習会」開催)などを示しています。記載する物は、ある程度の永続性をもつ必要があります。また内容については、何らかの意思を示していること必要です。

   
情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)(平成十一年五月公布)での文書
 

情報公開法は、行政機関が作成した情報についてのみ対象としており、行政文書という言葉で定義しています。

「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。(第二条第二項)

この条文で行政文書とは何かを定義していますが、文書、図画、電磁的記録の3種を示しており、行政文書という大きな定義の中に、狭義の文書が含まれています。狭義の文書とは紙の文書を示し、先に示した大審院の判例の定義どおりと考えられます。

行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(平成十二年二月公布)の第九条の(行政文書の開示の実施の方法)で、文書、図画として、マイクロフィルム・写真フィルム・スライドを上げており、電磁的記録に、録音テープ・ビデオテープも例示されており、幅の広い定義がなされています。

これらの写真やビデオテープなどは、民事訴訟法(平成八年六月公布)では、文書に準ずる物件として定義されています。
(第二百三十一条  この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。)

   
JISによる文書の定義
 

JIS Z 6016(平成15年11月制定)の定義では、文書について次のようにしています。

「人の意思を文字その他の記号、画像などの手段で紙、マイクロフィルム、磁気テープ、光ディスク、磁気ディスクなどに記録したもの。
磁気テープ、光ディスク、磁気ディスクなどは、電磁的記録媒体といい、電磁的記録とは、電子的方式、磁気的方式など、人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。」

法律では準文書などとして、文書とは区別していたマイクロフィルム、磁気テープなども文書の一部であると定義が拡大しています。

JIS Z 6016は 2008年に改定され、定義は「人の意思を文字、その他の記号、画像などの手段で、記録媒体などに記録したもの。」と、簡略化されました。これは電磁的記録が一般化され、記録媒体に含まれていると一般に認識されるようになったためと思われます。

   
国際資料研究所がまとめた文書基本法案(2003年9月)
 

第二条 「文書」とは、媒体・形式の如何を問わず、業務遂行上で必要な情報を固定したもののすべてをいう。文書のうち正式手続きを経た意思決定を証するものは「記録」という。

ここで、ようやく媒体・形式にとらわれない定義となっています。

ここに挙げたように文書の概念は、紙をベースとしたものから、普及したものを追加してきていることが分かります。最後にあげた文書基本法案は、まだ提案されただけでどのようになるかは不明ですが、幅広くとらえようとする方向にあることは間違いありません。

 

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Updated on 2013/09/28