わが国ではアリスシリーズの挿絵画家はジョン・テニエルと言うことで知られているが、私の趣味から言えば、テニエルの描くアリスははっきり言って醜い!やはり、真のアリスはアーサー・ラッカム大先生の手になるものでなくてはいけないと思うのである。
作者のキャロルはテニエルの絵を見ていたく感激したとの事ではあるが…(これはもう肉食人種の感覚としか思えない!)
ウォルト・ディズニーのアリスと言うのもあるが、あれも個人的には一寸…しかし、国内で見かける「アリス」と言ったら、肉食テニエルかディズニーの漫画絵の物ばかり。
実はアリスにはかなりの作家が挿絵をかいている。
アリスとしての有名どころでは、国内版では見たことがないが、チャールズロビンソンという画家の描くところの「アリス」と言うのも出版されている。
この、ロビンソン氏のアリスも、美術的に言ったらかなりな物ではあるが、いかんせん肝心の「アリス」が可愛くない。(日本人の嗜好に合わない…だから翻訳、国内出版されない?)
しかし、この時代の商業美術の常として、アールヌーボーの影響下、装飾的手法においてはかなり見るべき物があると思う。様式美の世界、と言ったところでか。
(うーん!アールヌーボーすっきだなー!ミュシャ好き!ビアズレーよい!←やはり私ゃちょっと[あう゛ない]のかも知れない)研究家の間では、オリジナルのアリス(不思議の国)はキャロル本人の挿絵による物を含めて4種類存在すると言うのが定説になっている。
本人の手になる「アリス」はアリス・リデル(モデルとなった「アリス」本人)に贈った物で、37枚の自筆画を添えた手製本だったらしい。
(私も数枚しか見たことが無い。オリジナルは大英博物館にあるそうだ)その後、周囲の勧めで、大幅に加筆して出版した物が、1865.7.4.ロンドンのマクミラン社の物で、通常一番有名な「テニエル版」。
「テニエル版」はもう一種類あり、かなり難解なこのお話を幼児向けに書き直し、別の画家が後から彩色した物が存在するそうだ。
後の2種類が、この「チャールズロビンソン版」と私好み(日本人の嗜好に合った?)アリス、「アーサーラッカム版」である。それぞれの版は、やはりそれぞれの魅力を持っているのだが、(私はテニエルを完全否定している訳ではない)余りに、最初の「テニエル版」のイメージが強かったために、「不思議の国」を描いた画家達は誰一人その後の「鏡の国」には触れないで終っているのがとても残念である。
さて、この「アリス」シリーズだが、1907の版権消滅と同時にあった新刊ラッシュの時の物も含め、最もユニークとされる、あの「ムーミン」シリーズのトーベ・ヤンソンの手になる物まで、その数は優に100を越えていると言われている。
アリスばかりが何故?と言うことだが、それはイギリス人がこの作品に異常なまでの執着と愛情を持っているからだそうだ。
イギリス人を知りたかったら「不思議の国のアリス」を読めとか、この物語の面白さ、真意はイギリス人で無ければ分からない、とまで言われる作品なのだ。さて、肝心のお薦めのアーサー大先生だが、美術関係者の間ではかなりポピュラーな画家なので、他の作品も一般にも比較的入手し易いようだ。
国内では、新書館から私の大大大好きな「カイ・ニールセン」を初め、他の「絵本黄金時代」の作家の作品と共にまとめて出版されていたが、現在も入手可能なのだろうか?
新書館から出版されていた物でお奨めとしては、どれを選んだ物か迷うところだが、「ニーベルンゲンの指輪」(な、なんとワグナーである!全4巻:寺山修司が執筆中に死去したので、途中から訳者が変わっていると言ういわく付き)
そして、代表作と言われる、「真夏の夜の夢」(そう、シェークスピアなんだなー) …と言ったところだろうか。輸入物はそれなりの洋書屋さんなら大抵いつでも数種類は置いてあるはずである。