愚行連鎖

■不思議の国のアリス

お手紙ありがとう

いやはや、いい加減な事は書けないものですね。
私はただのアリス好き、と言うよりアーサー・ラッカムのアリスが好きなんですが、本格的に研究されている木下 信一さんと言う方からお手紙をいただいてしまいました。

木下さんに了承を得られたので、以下に全文を掲載します。


題名:『アリス』について

はじめてメールいたします。Lycosで「キャロル」「アリス」を検索て、このページを見つけました。『アリス』について書かれている文で、少々気になりましたのでメールさせていただきました。
 いわゆる、研究者のいう4つのオリジナルな『アリス』というのは、ページに書かれているものと、かなり違います。つまり、1865年に出版された『不思議の国のアリス』初版本の発売に関するトラブルの結果、

最初に印刷されたもの(初版):2,000部印刷したものの、出版直後にテニエルから印刷具合にクレームが付き、回収。製本されたのは48部のみ。

初版第二刷:上記初版本のうち、印刷されてはいたものの、製本されていなかったもののうち1000部をニューヨークの出版社(アプルトン社)が引き取り、アメリカ版として発売。

初版第三刷:同じく上記初版本のうち未製本の952部に、アメリカで印刷した表紙を付けて製本。アメリカ版として発売。

第二版:1866年の日付入り(1865年には売られていた)。正式に認められた最初の版。

 簡単にまとめればこういうところでしょうか。恐らく四つの『アリス』という言い方と混同してしまったのではないかと考えます。

これは『地底の国のアリス』:キャロルの手書き本でアリス・リデルに贈ったもの。

『不思議の国のアリス』

『鏡の国のアリス』

『子供部屋のアリス』:『不思議の国のアリス』を作者自身が小さな子供(0歳から5歳まで)のために書き直したもの。テニエルのイラストに着色したのは、テニエル自身であるとの説が有力。

なお、手書き本の『地底の国のアリス』については、キャロルの生前からファクシミリ版が発売されており、現在も入手可能です。日本では書籍情報社から『不思議の国のアリス・オリジナル』との題で、手書き本の復刻版とその邦訳のセットが売られています。
また、『子供部屋のアリス』にしても、テニエルのイラストでの訳が2種類出ています(新書館の高橋康也・迪訳『子供部屋のアリス』とほるぷ出版の高山宏訳『おとぎの’アリス’』)。

ラッカムもチャールズ・ロビンソンもキャロルの版権が切れた後で描かれたものです(ともに1907年)。チャールズ・ロビンソンの挿絵の『不思議の国のアリス』は、かつて日本でも立風書房から出版されていました(福島正美訳)。

『不思議』のイラストを描いた後『鏡』を手がけている画家は少なからずおりますよ。僕の手元にもピーター・ニューエル、ドゥシャン・カーライ、日本の金子國義など数点があります。

 お気に障ったとしたら申し訳ありません。ただ、どうにも事実関係で気になったもので……。

木下信一


あの「福島正美」訳のアリスまであったとは…

アリスファンは木下さんのページへ“The Rabbit Hole”へGO!

→http://www2.gol.com/users/kinosita/

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