新・闘わないプログラマ No.84

先生と呼ばれるほどの…


とりあえず、新人研修の講師の仕事は終わりました。疲れました。一頃は人前で話をする機会が多かったのですが、最近はそういう仕事があまり無くて、慣れない仕事をすると大変です。

ところで、「No.78 C言語入門書」で書いた内容に関連してですが、テキストは強引にK&R2「プログラミング言語C 第2版」にしました。だって、あんなクズ本は使いたくなかったですから。
で、この回のお話についていろいろと意見を頂きました。私が驚いたのには、C言語をいま勉強している/使っていると言う人の中に、K&Rを知らない人がかなりの程度いるらしい、ということです。大学や専門学校でC言語を勉強している何人かの方から、どういう本なのか、どこで売っているのか、教えて欲しい、というメールも頂きました。学校の先生は、こういうことは教えないのでしょうか?
C言語の生い立ちを説明して行けば、必然的にK&R(第1版の方)の話題は出て来ざるを得ないような気がしますし、ANSI Cとの対比、という面からもこの本に言及する必要があると思うのですけど。いったい何を教えているのでしょうね、ガッコでは。
それから、私が「No.78 C言語入門書」でボロクソにこき下ろした、件の本についてですが、これについても何人かの方からメールを頂きました。確かに、この本、とっつきやすい本ではありますね。K&Rなどと違って図をふんだんに使っていますし、著者はそれなりに苦労した跡は見られます。
ただ、私の考えをここではっきり書いておきますけど、どんなに説明がうまかろうが、嘘を書いている本はクズだ、という立場です。あの本には、明らかな誤り、嘘、勘違い、誤解を招く表現、バグのある例題プログラム、といったものがあまりに多すぎます。あの程度の文法の知識で、C言語のテキストを書いて欲しくないです。あんな本を参考にして、プログラムを書かれたらたまったものではありませんから。
あと、初心者に概略を説明するときには、ある程度の「嘘」というか不正確な表現も致し方ないのではないか、という意見も頂きました。ここはまあ難しいところではありますね。ただ、あの本の「嘘」は、そういう嘘では無いですね。ただ単に、著者が理解していないところからくる嘘であって。ただ、K&Rが「うまいなあ」と思うのは、そのあたりで不正確な表現を出来るだけ使わないようにしているところだったりします。自分で、この本をテキストとして使って、初めてそのあたりのことが分かりました。例えば、K&R2の一番最初に出てくる有名な例題プログラム

    #include <stdio.h>

    main()
    {
        printf("hello, world\n");
    }

ですが、「main関数の型はintじゃないのか?」とか「int型の関数なら、何か値を返さないといけないんじゃないのか?」とか、だからこれは本当は

    #include <stdio.h>

    int main()
    {
        printf("hello, world\n");
        return 0;
    }

と書くのが正しいのではないか、と突っ込まれそうになりますが、でもよく文法を調べれば、K&Rに書いてある書き方でも文法違反ではないのです。関数の型とか、return文の説明を後回しにして、とりあえずCのプログラムとはどういうものか、という例を(文法上は何の問題も無い形で)示しているわけですね。
あ、でも「#include <stdio.h>」も、printf関数の型はintだから、無くても文法違反じゃないと思うのですが、さすがにこれは省略してませんね :-) でも、私はいつもこの「#include」のところ、説明に困るんですよね。「とりあえずprintfを使う場合には、無条件にこの行を書いて下さい。詳しい説明は後でやります」と言って逃げていますが。
ただまあ、K&Rはとっつきが悪い本ではありますね。図はほとんど無いし、例題のプログラムはかなりアルゴリズム的に凝っていて、初心者が理解するのは大変ですし。なにか、これはいい入門書だよ、という本は無いでしょうか? ご存知の方がいらっしゃったら教えて下さい。

私自身、研修の講師のような仕事は嫌いではありません。自分で説明をして行く、という行為は、単に、本を読んで勉強するとか、研修を受ける、という行為より遥かに得るものがあります。
K&Rにしても、これをテキストとして使ってみて初めて「よく考えられている本だなあ」と思ったくらいですから。あ、でも「第4章 関数とプログラム構造」の章だけは説明が散漫になっている、というか、話題があちこち飛んでいて、いまいち納得できないところなのですけど :-)
でも、こういう仕事は嫌いじゃない、とはいうものの、トシが十うん歳も離れた新入社員相手に研修をするのは、はっきり言って疲れます。ちょっと目を離すと、実習用のパソコンでソリティアは始めるは、ブラウザでえっちなページを見に行くやつは出てくるは(仕方が無いので、外に出て行っているLANケーブルを抜きました)。
最近は女性の採用者の方がずっと多くて、私のやった研修でももう「ピチピチのギャル」(←死語)ばっか。あいつら、人のことを同世代の友達なんかと同じ扱いだもんな。
あ、私に威厳がないだけか。


1999.6.28追記
このページの内容に関連して、(ぱ)さんという方からのメールを掲載いたしました。

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