新・闘わないプログラマ No.83

ネットワーク技術者は何をやっているか?


タイトルに「プログラマ」などと付けているし、最近、プログラミングの話題もよくやっていますけど、私の今の仕事は、どちらかというとコンピュータネットワーク関連が多いです。新しいシステムのネットワークの設計をしたり、その導入を行ったり、トラブルが発生した場合の調査・復旧を行ったり……。もちろん、その一環としてプログラミングをしたり、させたり、という仕事もありますけど。
でもって、このネットワーク関係の仕事と言いますと、これがもう力仕事が多いんですよね。いや、比喩的な意味じゃなくて、本当の力仕事。

大規模なシステムの新規導入の場合には、機器の設置から配線まで、それぞれ専門の業者に頼むので(あらかじめ予算に入っているから、頼みやすい)、我々が手を下すことはほとんど無いのですが、あとから細かな機器の導入を行ったり、小さなシステムの場合なんかは、全部自分でやらないといけなかったりすることもよくあるんですね。
この間やった仕事では、ある大規模システムの開発環境の構築ってのがありましたけど、この仕事がまさにそれでした。「開発環境」って何か、と言いますとですね、あるシステムを新規に構築する場合、そのシステムがカットオーバーするまでは、そのシステム自体で実際に使われる機器を使用して開発が出来るんです(これを普通「本番」と呼んでいます ←変なことを想像しないように)が、カットオーバー後は、この本番の機器を使って開発するわけには行かなくなります。
システムのカットオーバー後になんでまた開発が必要になるんだ、と疑問を持つ人もいるかも知れませんが、バグが出たり、機能の追加・変更が必要だったり。あと、これはきわめてよくある話ですけど、カットオーバー時にすべての機能が完成していない、でも実施時期は、契約に書いてあるとか、社長を呼んでテープカットを行うとか、その他のしがらみで、後ろにずらせない、ってときのウルトラCに「とりあえずカットオーバー」というワザがあります。この場合クライアントを起動すると、メニューに100項目くらいの機能が表示されます。しかし、どの項目を選択しても「準備中」、実際に使えるのは3項目くらいだったりして。そうそう、Webサイトにもよくありますよね、そんなとこ。
まあそんなこんなで、システムが稼動しても開発案件は無くならない、というのは非常に一般的でありまして、そうすると、本番システムとは物理的に別な「開発環境」なるものが必要になってくるのですね。
ところが、こういうのにはなかなかお金が出なかったりするんですね。「『出精値引』しちゃったから、開発環境を整備したら赤字になっちゃうよー、それでなくても開発が遅れて、人件費がかさんでいるんだから」などと言う営業をなだめすかして、なんとか機器の分のお金だけは確保しても、設置費・工事費はもちろん出ない。仕方なく自分たちでやる羽目になってしまったわけですね。

あと、力仕事でよくあるのが、トラブル時の対応。
最近よくあるのに、配線工事をやっているときに、まちがって、他の線を切ってしまった、とか、抜いてしまった、とかいうやつ。
今は、ネットワーク関係の配線は、LANで接続されているものが多いのですが、この線は細い上に、抜けやすかったりするので、結構大変です。しかもこの線が、何百本も縦横無尽に這い回っているところから、問題の個所を調べるのは結構重労働だったりするのですね。
そう言えば、以前にとんでもないトラブルがあって、配線の作業をやっていた人物が、あるLANケーブルを足に引っかけて、抜けてしまったらしいのです。でもって、その人、その場でそのことを報告してくれればよかったのに、その辺の適当なハブに件のLANケーブルを挿して、知らん顔しちゃったのです。しかも都合の悪いことに、そのケーブルを使っているシステムではブロードキャストがルータを越える設定になっていて(通常は越えない)、ブロードキャストストームが発生してしまいました。あれは、調べるのが大変でした。
床下を這いずり回ってケーブルを一本一本辿っていって、間違っている接続を探して、1日かけて間違いを見つけました。そもそも、ケーブルに(これはどこそこに行っているケーブルですよという)タグをちゃんと付けていないのがいけないのですけどね。

ネットワークの仕事をやっていて、一番の重労働は、やっぱりケーブリングのあたりです。ゆかを這いずり回ってケーブルを設置・接続したりしていると、着ているものは汚れるは、腰は痛くなるは……。
コンピュータルームなどは、ケーブルは基本的に床下を這わせます。最近のビルは、通常の事務室のようなところでも、床下に数センチくらいの隙間を作って、そこをケーブルを這わせることができるようになっていることが多いですが、コンピュータルームは高さ数十センチくらいの隙間があって、ここをケーブルが縦横に這い回っています。
こういうところの床板は簡単に外せるようになっていて、普通「サッカー」と呼んでいる吸盤を使って外します。床下は潜って潜れないことも無いくらいの隙間がありますが、服が汚れるので、あまり潜りません。必要な個所の床板を順番に外していって、ケーブルを引いていくのが普通です。
ところが、あるコンピュータルームで配線の作業を行った時のことなのですが、そこには機器が沢山設置してあって、外すことが出来る床板があまり無かったのですね。仕方なく、床下を潜ったわけです。
埃まみれになりながらケーブルを手に持って、床下をネズミのように這いずり回る私。途中、障害物を避けながら進んで行くと、方向感覚がおかしくなってきます。
「本当にこっちの方向でいいんだっけ?」
終業の鐘の音が聞こえてきました。そして、床上では足音が聞こえてきます、それも複数の。床板の隙間から上を見ると、女性が歩いている……。
そういえば、このコンピュータルームのとなり、女子更衣室ぢゃなかったっけ??

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