思ツタコト No.6

理科の実験


小学校の3〜4年生の頃のことだったと思うのですが、理科の時間に、乾電池と豆電球を使った実験がありました。

電池と豆電球の回路図(a)

(1)のように電池と豆電球を繋ぐと豆電球が光ります。
(2)のように2つの電池を直列につなぐと電球の明るさが明るくなります。
(3)のように2つの電池を並列につないでも、明るさは(1)と変わりません。

その時の教科書が手元にあるわけではありませんので、正確な引用ではありませんが、確かこんなことが書かれていたと記憶しています。
そのとき私は、教科書を疑ったのか、それとも、単に時間が余っていて暇だったのか、記憶が定かでは無いのですが、下のような回路を作って実験してみました。

電池と豆電球の回路図(b)

スイッチを切っているときには電池1個になって、スイッチを入れると電池2個が並列につながるようになっています。この回路でスイッチを入れたり切ったりすれば、教科書に書いてあった「(3)のように2つの電池を並列につないでも、明るさは(1)と変わりません」が正しいかどうかが分かるはずです。
さっそく私は実験してみたのですが、スイッチを入れたり切ったりすると電球の明るさが変わるではないですか。確かによく見ないと分からないくらいの微妙な変化ではありますが、電池1個の場合より、2個並列につないだときの方がわずかに明るい。直列につないだときのような明るさにはならないですが、明るくなることはなっている。

私はもしかして、重大な発見をしてしまったのでありましょうか? 教科書には隠された秘密が・・・(^^;)
私はさっそく先生に言いに行ったのですが、
「そんなはずないだろ。教科書に書いてあるんだから、実験の方が間違っているんだ」
私は怒られてしまいました(;_;) 何せ子供のこと、先生にそれ以上抗弁する術を持ち合わせてはいませんでしたから、言いようの無い不満を抱えたまま悔し涙を流したものでした。「だって、実験ではちゃんと明るくなったんだもん」
しかしなんか、中世ヨーロッパのような話ですね。実験事実より聖書の方が正しい、という。私はこのときのことをずっと根に持って生きて行きました。私が物理学科に進んだのも、もとはといえばこの暗い過去が引き金になっているような気がしてなりません。本来なら、文系の学部に入ってちゃらんぽらんな大学生活を送る事もできたはずなのに・・・・小学校のときの担任だったT先生、私の「楽しいキャンパスライフ」(^^;)を返してください。

電池1個の時より2個並列につないだ方が電球の明るさが明るくなる、ということの理由が判ったのはいつの事だったのかもう記憶に無いのですが、多分、高校生のころだったと思います。
これは乾電池の内部抵抗によるものです。電池はみんな内部抵抗を持っていますが、1個の場合に比べて、2個の電池を並列につなぐと、内部抵抗が半分になります。すると、内部抵抗による電圧降下が少なくなって、その分電球が明るく光ります。
まぁ、こんな説明を小学生にしても分からないことは確かなのですが、だからといって、教科書の方が正しい、という先生の言い方もちょっとね。多分、先生もそんなこと知らなかったし、初めて見て動揺したのかも知れませんが・・・
教師って、「赤本」って言うんでしたっけ、教科書に指導の仕方が書いてある本を持っていたと思うのですが、それには何も書いていなかったのでしょうか?? 知っている人がいたら教えてください。案外「そういうひねくれたことを言ってくる児童には、『教科書が絶対に正しいんだ』ということを知らしめ、お上の言う事に疑問を持たない人間に育てるように努めること」なんて書いてあったりして。;-)

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