MoMA ニューヨーク近代美術館名作展


 木曜から土曜は夜8時まで開いているので、1月25日(金)の夕方に見に行った。会場についたのは6時半だったが、来週閉幕だからだろう、入るのに行列ができていて、会場も帯状に人が連なっている。若い人やふだんは展覧会には来ないような人が多い。「ゴッホって自殺しちゃったんでしょ。有名になる前に。」と、デパートの美術展のように気楽に雑談しながら見ている。しんと静まり返った、せきをするのもはばかられるような展観ではない。たまにはそういう展覧会もいいだろう。

 入ってすぐはゴッホの「オリーブの木」。例の“うねうね”としたタッチ。次にセザンヌ「モンジュルーの曲がり道」。セザンヌ流の画面の再構成に「俺にはこう見えるんだー」という主張を感じる。ルソー、シャガールと有名な作品が続いて、第二展示室の入り口にマティス「ダンス(第一作)」が立ちはだかる。
 でかい。横3メートル、縦2メートルはあろうか。その中で5人の女性が輪になって踊っている。簡略化された人物の中に、ロダンのデッサンに感じた「これを描きたいという集中したポイント」と同じものを見た。「ダンス」では四肢ののびやかさがポイントだと思う。人体としてのバランスは崩れているが、四肢だけは生き生きと見える。
 同じことをマティスの他の作品にも感じた。ともに彫刻だが、「ラ・セルバンティーヌ」(蛇のような女)はふくらはぎと肘から手首にかけて、「農奴」は太もも、ふくらはぎ、それに腹の強調する部分がよくつくられている。ポイント以外は写実性が落ちて、極端に細かったり、古典的な均整の取れた像ではない。しかしその「集中」によってマティスの描きたかったことがよく伝わってきて、おもしろいと思った。

 2階の中心はピカソ。教科書に載っているような大作が何枚もかかっていたが、人々の注目を集めていたのは少し離れたところにあった「雌山羊」のオブジェ。かなりデフォルメされているが、コミックのような感じがきわめて現代的。現代作家の作と言ってもわからないだろう。「かわいい」「ギーガーみたい」という声あり。子どももカップルも年配の人も周りに来てはみんな親しげに見ている。
 他にも見ただけで作者が言えるような有名な作品はたくさんあった。また最近の作品も出品されていて、「現代美術に光を当てる」というMoMA設立の精神に敬意を表して、新しいお気に入りを見つけようと思ったが、残念ながらそういったものは見つからなかった。

 じつは実篤は欧州旅行のときにマティスに会っていて(「マチス・ルオー・ドラン・ピカソ訪問記」1937、昭12、全集12所収)、好きな画家のひとりだった。今回はそのマティスの作品をじっくり見ることができたのが収穫だった。それ以外をさらっと流して見ると、え、もう終わりという感じで、ちょっとボリューム感がなかったような気がする。それでも個人的には見るべきポイントのあった展観だったし、それを何度も行きつ戻りつして見たので、満足できるものだった。逆にこれ!というポイントを持たないと、総花的な展示なので、見たようで何も見ていないことになりかねない。

 ミュージアムショップは大繁盛。会場を出ても必ず会場外のミュージアムショップを通るといった念の入りよう。さすが、主催:フジサンケイグループ。

(2002年1月25日見学)
(2002年1月26日:記)

MoMA ニューヨーク近代美術館名作展
2001年10月6日(土)〜2002年2月3日(日)
上野の森美術館


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