美術遍歴 〜実篤コレクションより〜


 実篤愛蔵の美術品を中心とした展示。今回は実篤の著作よりも個々の品の方が主役である。しかしただそれらを単に陳列するだけではない。少し大きめのパネルの上段に作品の解説、下段に実篤のコメントという風に、実篤がそれらをどうとらえていたか、ひとつひとつに解説をつけている。

 展示されている品々は、ピカソやルオーのエッチングのように、昭和11年4月から12月の欧州旅行の際直接作者から入手したものと(このときベルリンオリンピックも観覧している)、国内で古美術商から買い求めた東洋のものとに大別される。古美術品については、「本物と思った」という自分の感じを大事にしていて、中には鑑定してもらった結果「これは珍しいものだから大事にしてください」と言われたものもある。すべてが真筆ということはなさそうだが、ただ真贋にはこだわらず、印象派を自分の目で見いだしたように、古美術品も自分の目で選んでいる。伝梁楷、仙崖、一休、白隠、良寛、伝相阿弥、池大雅、雪舟、八大山人、伝李安忠などなど、実篤の美術論で名前のよく出てくる人物の作品が並べられている。表現の容易さ・繰り返しから平板な印象のある実篤の美術論だが、実物と引き合わせながら一度精密に読む必要があるだろう。

 公園の記念館口では萩が赤い花を咲かせ、ざくろの実が口を開けていた。キンモクセイの香りもし、秋らしさを感じさせる。街路のハナミズキは葉も赤くなり赤い実をつけているが、公園の中の木々はまだまだ緑。記念館の受付に虫除けが置いてあったが、もういらないだろうと思ったところ、公園で蚊に刺されてしまった。家では蚊取り線香をたくことも少なくなったが、公園にはまだ夏の名残があった。

(1997年9月28日見学)

翌1998年の「実篤コレクション名品展」の見学レポートを見る

下記のような催しも会期中に行われた。

展示解説
 「美術遍歴」の展示品解説に加え、実篤と愛蔵品のエピソードを交えたお話
1997年10月10日(祝)13:30〜
解説:武者小路 穣(みのる)氏 (記念館顧問)
申し込み:直接記念館展示室へ。参加費無料、記念館入場料のみ

秋の講座「実篤の遺言」
 実篤の人となり、作品により親しむための講座。今回は現代の人へ実篤が何を語りかけ伝えているかがテーマ。
1997年10月8日(水) 13:30〜15:00
講師:岩井貞雄氏(記念館専門員)
会場:旧実篤邸内
参加費:500円
定員:10名
応募方法:往復はがきに住所・氏名・年齢・電話番号を記入の上、9月30日(火)記念館必着。一人につき1通ずつで応募。応募者多数の場合は抽選。



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