新収蔵品展


 実篤記念館では武者小路実篤や新しき村などに関する資料を収集・研究しているが、そのうち平成11年度〜13年度にかけて新しく収められた資料を今回展示している。この前開かれた新収蔵品展は平成10年度で、その前が8年度、6年度と約2年ごとに開かれているようだ。
 初めて記念館に来られる方には、実篤の全体像を入門的に紹介する夏恒例の「人間万歳」展や、より力の入った春と秋の特別展をおすすめするが、「新しい収蔵品」=「まだ見たことのない資料」という観点から、どんなものが出てくるかというテーマで行ってみた。

 実際に行ってみると、そういった小賢しい視点が飛んでしまい、ひとつひとつの展示品をじっくり見て楽しむことができた。新しいとか、初めて見るとかいうのもあるが、やはり個々の作品や展示物と向き合って、感じたものを大事に記録しておきたい。
 今回見たものの中で、良かったものに「自画像」2点がある。ともに1959年の作品で、鉛筆に肌色、水色の淡彩が施されている。写真でよく見られる晩年の顔で、とてもよくかけていた。油絵3点の中では「裸婦」がよかったと思う。実篤の絵によくあることなのだが、胴に重点があって顔や足に難があるが、真剣に描かれていると思う。
 志賀直哉宛のはがきも何通か展示されているが、実篤と梅原龍三郎が「別府にて/二人」という差出人で出したものでは(昭和12年)、梅原が「昨日武者の息子かと聞いた小女があってよろこんだ」と書いていたのがおもしろかった。実際には梅原が3歳年下なだけなのだが、どうしてそう思ったのだろうか。同じく志賀宛で、将棋の指し手だけ書いたはがきがあり(大正2年)メモをとってじっくり見たが、どうしてその手で詰むのかいまだにわからない。しかし実篤が将棋を指したというのがわかって興味深かった。
 新しき村がつくった出版社・曠野社関連で、新たに原稿が45点見つかるなど、没後25年を経ても資料はまだ見つかるのだなと思った。他の作家についても同様だが(先日も漱石ロンドン留学時代の国勢調査結果とかも出てきている)、実篤記念館の方々にはさらなる研究が待っているのであろう。

 じつは今回の見学と前後して、調布ケーブルテレビで流れているこの展示の紹介番組を見ている。記念館の学芸員の方が展示内容を丁寧に説明してくださっているのだが(約15分間)、毎日決まった時間に繰り返し放送しているので、予習と復習という感じで2回見た。「愚者の夢」の原稿は、戦後インクがなかったため珍しい鉛筆書きであるとか、実篤は仙川を自分の完成の時代と位置づけ、人に会ったりするよりも絵などをじっくりかくことに時間を費やしたなど、貴重なお話を聞くことができた。
 限られた方向けの話で恐縮だが、調布ケーブルテレビを視聴できる方はコミュニティチャンネルの「調布広報」をご覧になることをおすすめする。一日に何回か放送されているようだが、私は20:30〜20:55に見ている。たしか1月24日までだったと思う。後半10分は昨年夏に行われた同館の「実篤に挑戦」の様子が放送されている。団扇づくりの様子が記録されていて、こちらもとても興味深いものだ。

 公園は葉が落ちて冬景色だが、気温は15度ぐらいまで上がった3月下旬〜4月上旬のあたたかさ。池の鯉もえさに元気よく集まってきた。

 なお以前ご紹介したが、実篤記念館では実篤に関係する様々な資料を継続して集めている。「資料収集への協力について」というページにまとめてあるので、適宜ご参照願いたい。

(2002年1月12日見学)

(2002年1月13日:記)


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