Top>「なーんだ、そうだったの?」〜実践ガイド>聖なる身体

■聖なる身体■


身体の感覚の変化ということも、とても大きなポイントでした。いや、「感覚の変化」なんていう生やさしいものではなかったですね。それ以前には見たことも感じたこともなかった身体に「出会った」のです。

「再誕生」の体験の後の一つの感覚として、自分の内側、この皮膚に包まれた内側の存在をとても強く感じる感覚がありました。その内側がブラックホールのようになっていて、何かとてつもないエネルギーが満ちているような感覚。

そして、その感覚がやったきたこととどちらが先だったのかは忘れてしまいましたが、ある日、気がついたのです。この身体に。

お風呂に入ろうとして裸になった自分の身体を見て、感じて、その存在に驚きました。ほんとうに珍しいものでも見つけたかのように、自分の身体をなでまわしては、ため息をついたものです。そしてそれは同時に、とても懐かしい感じをともなっていました。

この世に生を受けて以来、わたしはずーっとこの身体といっしょにいたはずなのに、そのことを完全に忘れてしまっていたのですね。いや、忘れてしまいたかったのかな。

わたしは、身体のことを無視して頭の中だけに生きていました。身体がやりたいこと、身体が必要としていることを無視して、頭で考えているとおりに自分自身を動かそうとしていたのです。

身体のほうに余裕のあるうちは、そんな無理をしてもなんとかこなしてくれていたのでしょう。ところが、いつまでもそんな状態は続かなかったわけです。それらの体験以前の身体の不調は、身体が悲鳴をあげていたのですね。でも、そんなことには気づかずに、なんで調子が悪いのだろう、なんでうまくいかないのだろう、そんなふうに考えるばかりでした。

セラピーの仕事をしていく中で、同じような状態にいる方にたくさん出会って来ました。そういう方は、自分が頭の中だけで生きているということにまったく気づいていません。だって、頭の中だけが「自分」で、その外側にも「自分」が拡がっているということを意識したことすらないのですから。

わたしのその後の意識深化のプロセスの中では、身体を取り戻していくということがもっとも大きな意味を持っていたと言っても過言ではありません。

<前へ 次へ>

Top>「なーんだ、そうだったの?」〜実践ガイド>聖なる身体
Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2001/06/18