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■ブレスワーク体験記2〜手放すことと感じること■


その後も続けてブレスワークを受けていたのですが、起こることは毎回ほぼ同じで、泣いたりわめいたりということが繰り返されていました。それはそれで気持ちがいいのですが、何かが違うな、という感覚も感じていました。

いつものように、泣いたりわめいたりしていたあるとき、セラピストの人がわたしの耳もとでこんなふうに言ったのです。「もっと感情の中に入っていって。」表現は少し違ったかもしれません。ただ感情を表現するだけでなく、それをもっと感じるように、というような意味だったことはたしかです。その瞬間に自分の中で何かがスコンと落ちたような感覚がありました。何かが自分の中で落ち着くところに落ち着いたような感覚です。

その瞬間、感情を表現することと本当の意味で感じるということは根本的に違うことだったんだ、ということに気づきました。この気づきはそのときに感じていたよりもとても深くて大切なものだったなあ、と最近あらためて思っています。

抑圧されている感情を解放し、浄化し、手放していくと深い癒しの体験が起こります。すると、その感情のエネルギーに影響されることがだんだん少なくなっていきます。そんな体験が起こるためには、感情を外に出すだけでなく、本当の意味で「感じる」こと、「十分に味わう」こと、「直接に体験する」ことが必要なのです。

セラピーの中で、激しく泣くことで悲しみを表現したり、大声を出したり、物を叩いたりすることで怒りを表現することは比較的よくあることです。そして、非常に強く感情を抑えてきた人の場合は、癒しのプロセスの中で一度はそんな体験をする必要もあると思います。でも、それだけでは、一時的にすっきりする感覚があっても、深い癒しは起こりません。それどころか、過剰に感情を表に出してしまうというのは、そうすることで感情をしっかり感じとることを避けているとも言えるのです。

いつも周囲の人に怒りやいらいらした感情をまき散らしている人がいます。そんな人は自分の感情をしっかり感じているのでしょうか。それはたぶん、まったく反対でしょう。自分の感情を認められず、できるだけ抑えつけていて、抑えられなくなったエネルギーが自分でもコントロールできない形であふれ出しているのです。

また、セラピーが進むにつれて、自分は感情を抑え過ぎていた、ということに気づき始めた人は「だったらこの怒りを誰かにぶつければいいのだろうか」「でもそんなことをしたら相手を傷つけてしまうのではないか」と悩むこともあります。

真の癒しと内面を統合していく道は、感情の抑圧でも、過剰な表現でもない、自分の内面でその感情のエネルギーをしっかり感じ取り、その存在を許すという方法なのです。セラピーの中でそういったプロセスが起こるときというのは、外からみると非常にリラックスしているようで、一見何も起こっていないかのように思えることあります。

頭で考えると少し難しいことのように思えますが、一度きっかけをつかむと、日々の生活の中で起こることを利用して、自分自身を癒し、浄化していくことができるようになります。普段から内面を感じ取ることが苦手な方の場合は、こういった体験をするためには、呼吸法や瞑想的な実践を意識的に行っていく必要があるように思います。

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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2005/12/30