Children's Corner-『子供の領分』〜ドビュッシーのピアノ曲のために--6
小さな羊飼い




ドビュッシー「子供の領分」より 「小さな羊飼い」




小さな羊飼い


小さな羊飼いは羊を飼う為に羊飼いをしているのではない
小さな羊飼いは人生を羊と共にあることで
沈黙の行を生きている独りなのだ

小さな羊飼いが小さいのはからだの問題ではない
それは無名であるための また無害であるための
洞察されたひとつの答えなのだ

小さな羊飼いは彼の犬よりも目だたない
遠くからみる村人は働き走る彼の犬を見て
小さな羊飼いの存在を思い起こすのだ

「そうだ彼はいたのだ」

小さな羊飼いはいつも大地に溶けあうかのように静かだ
だれもじゃまにしないしじゃまにならない

小さな羊飼いの食事は少しの野菜と穀物
だが菜食主義者というわけではない

主義はなく名も富もないその手には
単純な一本の棒
それが彼の短く美しい言葉に変わる

小さな羊飼いの沈黙は
誰にも知れずに
時間の悲しみを癒す

豊かに



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