強制執行メモ

強制執行は、債務名義の執行力が現存することを公証する執行文の付与された債務名義の正本に基づいて実施される。

債務名義の典型は、判決です。その他、仮執行宣言付支払督促 tokusokumemo.htm 、公正証書、調停調書、和解調書などがあります。

勝訴判決が出され、確定した。もしくは仮執行宣言の付いた勝訴判決が出た。という場合、この判決正本のみでは、強制執行することはできず、原則、「執行文の付与」が必要となります。事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ、執行文付与の申立をします(控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申立てる)。

執行文付与の申立は、申立書1通提出し、添付書類としては、判決正本を付けます(新民事訴訟法では、確定証明書は不要)。1通につき、300円の収入印紙が必要となります。

執行文自体は、判決正本の末尾に記載されるか、用紙が合綴されるかで、判決正本と一体になったものです。

1つの執行では完全な弁済を受けることができない場合で、どうしても複数同時執行が必要なときは、執行文の数通付与申立をすることができます(執行文の付与された債務名義の正本数通交付)。

実務上、裁判所から申請した書類を受け取る場合、「受書(請書)」を提出します(申請の際、受書もいっしょに提出しておきます)。*「受書(請書)」受取証書のことです

執行文

執行文付与は、事件記録のある裁判所(通常、一審裁判所)の書記官(または公証人)に請求(申立)する。

確定については、控訴状は、一審裁判所へ提出することになっているため、確定証明書は不要。

(上告状は、二審裁判所へ提出)

債務名義の正本の末尾に綴り込むか記載される。

執行文を付与する必要がないものには次のようなものがあります。

1、少額訴訟における確定判決

2、仮執行宣言付少額訴訟の判決

3、仮執行宣言付支払督促

4、家事審判法9条1項乙類に該当する事項を記載した家事調停調書(但し、例外があります)

5、家事審判書(*確定証明書が必要)

これらは、迅速な執行を容易にするための手続きですので、通常執行文は不要となっています。

ただ、条件成就の場合や当事者に承継が生じた場合には執行文は必要となります。

執行文付与の要件

仮執行宣言が付いている

確定している

など

参考)

判決による登記、原則として執行文の付与を要しない(確定証明書が必要。確定の時に意思表示があったものとみなされます。ただし、和解調書や調停調書の場合は成立の時に意思表示があったとみなされるため確定証明書は問題とならず不要。送達証明書は不要)。

ただし、1、証明すべき事実の到来にかかるとき。2、反対給付にかかるとき。3、証明すべき事実のないことにかかるとき。執行文必要。執行文が必要な場合、執行文が付与された時に登記申請の意思表示があったものとみなされます。例えば、「500万円を支払ったときは、別紙物件目録記載の不動産につき年月日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ(和解調書などの場合「所有権移転登記手続きをする」)」となっている場合、500万円を支払った振込領収書を裁判所書記官に提出し(執行文付与の申立をし)、執行文を取得する(債務名義に執行文が付与される。実際は債務名義に合綴される)。

判決等につき、裁判所の更正決定がなされている場合(例えば、不動産の表示に誤りがあった、被告の住所に誤りがあった など、 それを訂正しないと登記ができない場合、その更正決定が必要)、その更正決定書と確定証明書が必要(送達証明書は不要)。和解調書や調停調書の場合、確定証明書は不要だが、その更正決定については、確定証明が必要となる。ブログ

用語

・原本 裁判所保存

・正本 当事者へ交付

・謄本 原本のコピー

・認証ある謄本 権限ある者が、原本と同一である旨証明したもの

強制執行には、執行文の付与と、さらに「送達証明書」が必要となります。

(執行官の動産執行などでは、執行と同時送達も可能。その場合、執行官宛、送達申立をする)

判決正本や仮執行宣言付支払督促は、職権で送達されています。ただし、公正証書(執行証書)、認諾調書、和解調書、調停調書については、当事者からの申請により送達されるので、送達申請が必要となります。

申立先は、執行文と同様です。申請書は、正本と副本を各1通提出し、うち副本に「上記証明する」ということで奥書され交付されます。通常、150円の収入印紙が必要となります。

実務上、裁判所から申請した書類を受け取る場合、「受書(請書)」を提出します(申請の際、受書もいっしょに提出しておきます)。

送達証明書

債務者へ、債務名義の正本又は謄本の送達(証明書要)。債務名義について更正決定がされている場合、その決定正本の送達(証明書要)。必要。

債務者へ、条件成就による執行文又は承継執行文が付与されている場合、執行文及び証明文書の謄本の送達(証明書要)。必要。

送達証明書は、事件記録のある裁判所(一審裁判所)の書記官(または公証人)に請求(申請)する。

執行開始の要件

確定期限の到来

担保の提供(条件となっている場合)

反対給付の履行(引換給付の場合)

他の給付の不履行(代償請求)

管轄(執行手続)

・土地又は建物に対する申立

土地又は建物の所在地を管轄する地方裁判所

・債権に対する申立

第一次的管轄裁判所は、債務者の普通裁判籍所在地を管轄する地方裁判所

・動産に対する申立

動産の所在地を管轄する地方裁判所の執行官

 

仮差押

本案の管轄裁判所か仮に押さえるべき物を管轄する地方裁判所

保全権利の疎明、保全の必要性、保証金が必要

(つづく)

執行1

公正証書(債務承認弁済契約公正証書)がある場合

給与(債権)を押さえる場合

1、公証人役場で、執行文を付けてもらい、送達証明書交付申請をし交付を受ける。

2、債権差押命令申立。原則、債務者の住所地の裁判所。第三債務者の調査。

国家公務員の給与(俸給)等を押さえる場合、給与の支払権者と退職金の支払権者が異なることがあるので注意(給与は資金前渡官吏、退職金は支出官)。

執行費用について

(内訳)1

本申立手数料 金4,000円(平成161月から)

本命令送達料 金2,820円(予納郵券にあたるもの。裁判所により異なる)

本申立書作成・提出費用 金1,000円(平成161月から)

執行文付与申請手数料 金1,700

執行証書謄本作成手数料 金1,000

執行証書謄本送達手数料 金1,400

執行証書謄本送達費用 金1,050

送達証明手数料 金250

(請求債権目録で、利息・損害金の記載ができるが、第三債務者のことを考え、申立時までのもので確定額を記載することとなる(取扱が多い)。ここで請求しておかないと、後、配当等の際、請求できなくなる。また、利息・損害金を記載しておいても、(なぜか)配当等の際、配当期日・弁済金交付日までのものは認めない取扱が多い)

3、第三債務者に対する陳述催告の申立も同時にする。

4、裁判所で受付。郵送可。

5、裁判所より、債権差押命令が届く。

6、裁判所より、債務者及び第三債務者に送達された日の通知がある。

7、裁判所より、第三債務者の陳述書が届く。支払意思、他の差押えがないか等確認。

8、債務者に送達されてから1週間が経過すれば、債権者に取立権が発生。任意に第三債務者に支払請求。

(差押えの効力は、差押命令正本が第三債務者に送達されたときに生じ、債務者への送達の有無は差押の効力発生には影響がない。ただし、債務者へ送達されない限り、取立権は発生しない)

9、差押え等が競合している場合、第三債務者は供託する義務がある。競合していない場合でも、供託することができる(権利供託)。

10、第三債務者が供託した場合(執行供託)。配当等手続。

11、第三債務者は、供託した旨を、供託書正本を添えて、裁判所に届ける(事情届)。

12、裁判所より、配当期日呼出もしくは弁済金交付日通知がある(給与差押などの場合、約5ヶ月〜6ヶ月後、ある程度お金が貯まってから、される)。その際、裁判所からの債権計算書の提出催告にもとづき、債権計算書を裁判所へ提出。

「債権計算書」は、弁済等なければ、原則、申立時の請求債権目録のとおり記載することとなる。

利息・損害金については、一応、配当期日・弁済金交付日までのものを記載するが、請求債権目録で記載した範囲でしか認めない取扱が多い?

(第三債務者が供託した場合)配当等の実施は、執行裁判所の書記官が支払委託書に供託書正本を添付して供託所に送付し、債権者に証明書を交付する。

供託金払渡手続。供託金払渡請求書に、執行裁判所の書記官から交付を受けた証明書及び印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)を添付して、供託所へ申請請求。払い渡しを受ける。

(つづく)

参考 Q&A QA4.htm TOP index.htm