少額訴訟 書籍案内 shoseki.htm 「誰でもできる少額訴訟」・実体 shougakujittai.htm

簡易裁判所が管轄する訴訟事件のうち、特に少額で、複雑困難でない、訴額が30万円以下の金銭の支払請求を目的とする訴えについて、一般市民が解決を求めることができるように、原則として、一回の期日で審理を完了して、直ちに判決を言い渡すなどを内容とする特別の手続である。(訴額の上限を60万円に改正)

一回の期日で終わらせるために証拠などに制限が加えられています。相手方は少額訴訟によるのを望まないときは、通常訴訟への移行の申述をすることができます。

1、証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。

即時に取り調べることができるとは、物的証拠の場合は、法廷に持ち込まれているもの、人的証拠(証人)の場合は、法廷に在席しているもの、をいいます。鑑定や現場検証は無理と考えたほうがよいでしょう。

2、被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができるが、被告が第1回口頭弁論期日において弁論をし、またはその期日が終了した後は、この限りでない。

3、少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は判決書に代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間に、その判決をした裁判所に異議を申立てることができる。

このように、少額事件訴訟手続きの大きな特色に控訴ができないということがあります。最高裁判所まで3回の審理が受けられるという三審制がここでは取られていません。この権利を放棄することになることを理解すべきです。しかし、異議の申立ができるのだから、それでいいではないかと考えるかもしれませんが、異議制度がどこまで実効性があるのか、大きな期待はできないと考えます。その判決をした裁判所への不服申立てであるため、それが認められる可能性は少ないと思われます(異議の申立というのは判決を下した当該裁判所に対する不服申立てです)。

利用適格

1、訴訟物は、金30万円以下の金銭支払請求に限る。

原告が同一被告に対し、20万円の貸し金請求と15万円の売買代金請求とを一つの訴えで行う場合、合計金額が30万円を超えているため少額訴訟は利用できないということになります。

一部請求、例えば90万円のうち30万円を請求するような場合については、特に制約がないので利用できる。ただし、裁判所が濫用的と判断する場合その他通常の手続が相当と認める場合は、通常の手続への移行決定で処理されることになろう。

2、同一の簡易裁判所において、原告が、同一の年に利用できる回数は、10回までである。

裁判所が、サラ金業者の下請機関のようになるのを避けるため。

訴訟が却下や取下げで終了した場合や通常の手続に移行した場合も、申述自体はされたのであるから、1回と計算することになると考えられる。

3、原告は、訴え提起の際、その年にその裁判所での利用回数を届出なければならない。

虚偽の回数を届出たときは、10万円以下の過料に処せられる。

4、訴え提起の際、「少額訴訟による審理及び裁判を求める」旨の申述をする。

少額訴訟に関する申述

「本件につき、少額訴訟による審理及び裁判を求める。原告が御庁において、本年、少額訴訟及び裁判を求めた回数は、2回までである」

との具合に記載すればよいと思われる。

手続の選択と通常訴訟への移行

1、原告の選択

原告は、少額訴訟によるか通常の手続によるかの選択ができる。

2、被告の移行申述

被告は、原告が選択した少額訴訟を、通常の手続に移行させる旨の申述ができる。

訴訟は、その申述があった時点で、通常の手続に移行する。訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため指定されている期日は、通常の手続のために指定したものとみなされる。

この移行申述は、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、または、弁論をしなくてもその期日が終了した後はできない。

3、裁判所の移行決定

原告が少額訴訟を選択しても、次の場合には、裁判所が、被告の意思、態度に関係なく、訴訟を通常の手続により審理・裁判する旨の決定をしなければならない。この移行決定に対しては、不服申立ては許されない。

・少額訴訟の要件を満たさない場合

・原告に対し、相当期間を定めて利用回数の届出を命じたにもかかわらず、期間内に届出がない場合。

・公示送達によらなければ被告に対する第1回口頭弁論期日の呼出しをすることができない場合

・少額訴訟手続きによって審理及び裁判をすることが相当でないと認める場合(現場検証が必要な場合、取調べの必要がある証人が多数いる場合等)

審理

1、一期日審理の原則

少額訴訟では、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論期日において審理を完了しなければならない。

特別の事情とは、当事者の申出た証拠によっては、十分な心証が得られない場合、審理に予想以上の時間がかかり、第1回口頭弁論期日で審理を終えることができない場合、裁判所が事前に当事者から聴取していた事項と異なった事実が主張されたり、証拠の申出がされた場合などが予想される。

そのため、その期日前またはその期日中にすべての攻撃防御方法を提出するのが原則である。

当事者としては、このような手続の構造を十分に理解して、第1回口頭弁論期日前の準備を十分に行うことが必要であると考えられる。

2、反訴

反訴の提起は、許されない。1期日審理の原則に適合しないからである。

3、訴えの変更

訴えの変更は特に制約されていないので許される。ただし、変更の結果少額訴訟の要件を欠いたり、少額訴訟が相当でなくなるようなときは裁判所の移行決定で処理されることになる。

4、証拠調べ

証拠調べは、即時に取り調べうる証拠に限る。この証拠制限により、書証と証人尋問及び当事者尋問程度で審理が終了することが多いと思われる。

鑑定はめったに行われないと思われる。また検証も、当事者が法廷に持ち込んだ物については、可能な場合もあるが、現場検証等は適さない。

証人尋問は、宣誓を省略でき、証人尋問、当事者尋問は、一般の交互尋問による必要がなく、裁判官が相当と認める順序でする。

この手続は、ほとんど、一般市民が本人訴訟で利用するものであるので、原則的には、裁判官が当事者に代わって尋問することになると思われる。

裁判所は、当事者の申出があり、相当と認めるときは、電話会議の方法により証人を尋問することもできる。

電話会議の方法とは、裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話することができる方法をいいます。この場合でも、証人に対する日当は必要であり、また通話先までの旅行が必要な場合は旅費が必要であり、また通話料金についても、それらは申出人が概算を裁判所に予納することになります。

調書には証人等の陳述の記載を要しないが、尋問前に裁判官の命令又は当事者の申出があるときは、裁判所書記官は、当事者の裁判上の利用に供するため、録音テープ等に証人等の陳述を記録しなければならない。

録音テープ等への記録は、必要ないと思われても、異議審での証拠にするためにも、録音を申出た方がよい。

判決

1、言い渡し

少額訴訟の判決は、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちに言い渡す。判決の言い渡しは、判決書の原本に基づかないですることができるが、裁判所は、書記官に、調書判決を作成させなければならない。

「直ちに」とされているが、判決の内容の検討、判決の言い渡しの準備、司法委員からの意見聴取等のために、一時休廷されることもある。また、直ちに判決の言い渡しをするのが相当でないと認める場合には、判決言い渡し期日を別途指定されることもある。

2、支払の猶予

裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言い渡しの日から3年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、支払猶予若しくは分割払いの定めをし、又はこれと併せて、猶予された支払期限に支払をしたとき、若しくは期限の利益を喪失することなく分割払いをしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する定めをすることができる。

具体的な事情としては、被告の収入や生活状況、他の債務の有無や債務の総額、原告の意向、原告の権利実現の切迫性等を総合的に考慮される。

3、仮執行宣言

請求認容判決には、職権で、仮執行宣言を付す。

4、執行文不要

少額訴訟判決による強制執行については、単純執行文の付与は不要である。

民事執行法27条(条件成就)の場合を除き、執行文の付与を受けることなく、強制執行の申立ができる。

判決に対する不服申立

1、不服申立ての制限

少額訴訟の終局判決に対する不服申立ての方法は、異議の申立のみであり、控訴をすることができない。当然上告も(憲法違反を除く)できない。

少額訴訟の判決に付された支払猶予、分割払い、期限の利益の喪失、訴え提起後の遅延損害金の支払義務免除の定めに関する裁判に対しては不服を申立てることができない。したがって、その点の不服のみを理由として異議申立てをすることができない。

分割払い等の判決であっても、請求の全部を認容する判決の言い渡しを受けた原告からの異議申立ては不適法であることが明らかであるので、口頭弁論を経ないで、判決で異議が却下される。

2、異議申立て及び異議後の手続

少額訴訟の終局判決に対し、判決書又は判決に代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内又は期間前に適法な異議があったときは、訴訟は口頭弁論の終局前の程度に復する。

異議後の訴訟の審理は、少額訴訟の判決をした裁判所において行われる。その審理・裁判は、少額訴訟の特則によるものではなく通常訴訟による。

そこで、証拠に関する制限がはずれ、一期日審理の原則の適用がなくなる。しかし、反訴の禁止、証人尋問・当事者尋問における尋問順序、判決による支払の猶予は、異議前の少額訴訟手続きと同様であり、また、異議後の判決における原判決の認可・取消や訴訟費用の負担の裁判については、手形訴訟の判決に対する異議後の手続と同様である。

支払猶予等の定めに関する不利益変更禁止の原則の不適用

3751項所定の支払の猶予等の定めについては、訴訟物に関する裁判所の応答ではなく、原告がこの手続を選択したことに含まれ、原告の意思に基づき、裁判所が職権で行う裁判である。

そこで、当事者のいずれの異議申立てによるかにかかわらず、異議後の訴訟の判決における支払猶予等の定めについては、不利益変更の禁止の原則は適用されない。

異議後の判決(補正不要の不適法異議を却下する判決も同じ)に対しては、手形訴訟の判決に対する異議があった場合とは異なり、控訴ができず、憲法違反を理由とする特別上告が認められているにすぎない。

少額訴訟は、原則として、一審限りのものとして貫かれている。

(司法書士裁判ネットのホームページ http://www.shihoshoshi.com/ (少額訴訟)の資料、参照)