脚本ができるまで.その4


資料の送付
 さて。
 仕事の依頼を受けました。
 次に来るのが「資料の送付」。
 アニメ会社から、大抵は宅配便で番組に関する資料が送られてきます。
 送られてくるのは、以下のようなものです。

 ・企画書
 ・原作本
 ・脚本
 ・シリーズ構成案
 ・設定資料
 ・その他

 企画書から書く仕事の場合(シリーズ構成で参加する場合とか)は、上記のものが、まったく存在しないケースが多いです。
 その場合でもプロデューサーの書いた「企画メモ」程度はあるはずですから、それが送られてきます。この場合はFAXですね。
 最近は「企画書を作らない」番組も多いですから、その場合は当然、企画書は送られてきません。

 「原作本」に関しては、作品によって対応がまちまちですね。
 全部送られてくることもありますし、「自分で買って」と言うプロデューサーもいますし。
 原作が既に絶版になっていて、入手困難な場合には、原作本のコピーが送られてきます。
 また逆にまだ単行本化されてない原作の場合は、雑誌掲載時のものがコピーされて送られてきます。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の時は原作本99冊(当時は99巻まで出ていた)が一気に送られてきて、びっくらこきました(^^;)。

 すでに何本か「脚本」が完成していれば、それも送られてきます。
 1話の脚本ができてれば、その脚本が。2話までできていれば、2話まで、
3話までできてれば3話まで……要するに完成している脚本が全部送られてくるわけです。
 ただし長寿番組に途中参加する場合は、全部の脚本だと大変な量になりますから、抜粋して何冊かが送られてくることになります。

 「シリーズ構成案」は、シリーズ構成者が作成した、今後のシリーズの流れを書いたものです。
 表の形にする事もあるので、「シリーズ構成表」あるいは単に「構成表」と呼ばれることもあります。
 この「シリーズ構成案」は企画書内に書かれている場合もあります。

 「設定資料」というのは、アニメ誌等にもよく掲載されていますね。
 キャラクター設定とか、美術設定とかです。
 そんなものが束になって送られてくるわけです。
 個人的に一番ありがたいのは「キャラ対比図」ですね。
 メインのキャラクターが背比べをしてるような、アレです。
 メイン全員の顔と名前が一枚の紙に描いてありますから、名前を覚えるまではそれを机の前に貼っていることがあります。

 他に送られてくるものと言えば、ビデオテープとか玩具とか……
 これらの資料の目的は、「作品世界の雰囲気を掴む」という点にありますから、それに必要なものであれば、さらに色々なものが送られてくる可能性があります。

 資料で思い出しましたが、実は資料だけ送られてきて一本も脚本を書かなかった番組があります。
 別に私が不義理をしたとか、突然制作会社が潰れた(^^;)とかではなく、少々変わった事情で送られてきたのです。

 ある日、よく一緒に仕事をするベテランの脚本家の方から電話がかかってきました。
「今、『○×』って番組やってんだけど……」
 てっきり仕事の打診かと思いました。
 ですがそこは、さすが人の予想をウラ切ることで有名な◎◎さん、こう続けました。
「俺一人で全部書くつもりなんだけど、プロデューサーが心配してさ〜。お前と●●君に資料送らせるから、俺が病気とかになったら、続き、書いて」

 結局、その方は一年間(それ以上だったかな?)にわたる番組を一人で書ききり、我々の出る幕はありませんでした。
 番組自体の評判も上々だったようで、私などが書かなくて正解だったのかもしれません(^^;)。
 こう書くと、それだけで番組名がわかる方もいるかもしれませんが……黙っててね(^^;)。(つづく)


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