前項で「仕事の依頼はプロデューサーからの電話で」と書きましたが、これはあくまでも「形の上では」ということ。 いや実際に「プロデューサーからの電話」が仕事の始まり、ということもあるんですが、半分ぐらい(かな?人によって違うと思うけど…)は前触れというか伏線というか……要するに「事前交渉」みたいなのがあったりします。 具体的にどういうものがあるか書いてみましょう。 一番多いのは「脚本家仲間からの電話」ではないかと思います。 知り合いの脚本家から、 「今度、○○という作品をやるんだけど、手伝ってくれない?」 という電話がかかってくるわけです。 この場合、たいてい電話をかけてきた人がシリーズ構成です。 自分がシリーズ構成を担当する番組に、一ライターとして参加してくれ、ということなのです。 ここで、 「うん、いいよ」 と答えると、シリーズ構成氏はプロデューサーに連絡し、改めて「正式な依頼の電話」がプロデューサーからかかってくるわけです。 次によくあるのが、新番組が現行の番組とほとんど同じスタッフで作られる場合で、「前番組の打ち合わせの時に何気なく依頼される」というもの。 「次、こんな番組やるんだけど……大丈夫だよね?」 「はい」 この場合は、改めて電話がかかってくることはないと思いますが……一人でも新番組に参加しない人がいる場合は、こっそりと打診があった後、正式に電話がかかってきますね。 道(あるいは喫茶店とか駅とか)でばったり会って、その場で打診、というのも、珍しくないようです。 私も少々、面白い(?)依頼のされ方を経験した事があります。 その日、私は新宿某所でパソコン通信のオフに参加しておりました。 そこに知り合いの脚本家が乱入(^^;)してきたのです。 「今度、こんな作品をやるんだけど」 いきなりそんな所で仕事の打診(^^;)。 正直、声をかけていただいた事は非常に嬉しかったです。 仕事の中身も興味ひかれるもので、本来なら、 「やります!」 と即答したかったところだったんですが…… 一つだけ、懸念がありました。 当時私は、他にいくつかテレビシリーズを抱えていたのです。 物理的に、その仕事をやる時間が取れるかどうかわからない、ということ。 それが最大にして唯一の懸念でした。 『引き受けるべきか、断るべきか……でも断りたくない……ああどうしよう』 私が迷っているうちに、オフはお開きの時間となりました。 そして参加者の一部はそのまま徹夜麻雀へと雪崩れ込んだのです(^^;)。 私とその脚本家も卓を囲むこととなりました。 そして……私はボロ負けしたのです。 夜明けのマクドナルドで、私はまた声をかけられました。 「この作品、やるよね?」 「……はい」 これが私が『南海奇皇』を引き受けた瞬間でした。 知り合いの脚本家の名前は會川昇氏。 考えてみれば……。 オフに参加して、徹マンをやってるぐらいだから、それほど忙しくなかった、 ということですよね(^^;)。 悩むことはなかったのかも。 新人がデビューする場合は、自分の師匠から打診があります。 「こういう番組があるんだが、やってみるか?」 と電話なり、直接会った時なりに言われるわけです。 そこで、 「やります!」 と答えると、脚本家への道が開かれるわけです。 ただ、その道をきちんと歩いていけるかどうかは、当人の努力次第ですね。(つづく) |