トゥルル……トゥルル……ガチャッ。 「はい、もしもし」 「もしもし、○○さんのお宅でしょうか?」 「はい、そうです」 「私、△△△(アニメ会社の名前)の□□と申しますが……」 仕事の依頼はたいてい、このような一本の電話で始まります。 かけてくるのはほとんどの場合、アニメ会社のプロデューサー。 面識はあったり、なかったり。 意外と一面識もない人からかかってくる事が多いです。 そういう時は、 「◎◎さんから電話番号をお聞きして……」 と続きます。 この時の「◎◎さん」というのは、脚本家仲間だったり、他のプロデューサーだったり、知り合いのスタッフだったり…… ごくまれに「脚本家年鑑で調べて」という場合もありますが……まあ非常に珍しいケースですね。 そういった挨拶を一通り済ませた後に、仕事の内容の説明。 依頼したい作品というのは…… アニメなのか、実写なのか、音響ドラマなのか。 テレビなのか、ビデオなのか、ラジオなのか。 単発なのか、シリーズなのか。 そしてシリーズ物の場合だと…… シリーズ構成(あるいはメインライター)として呼びたいのか、一ライターとして呼びたいのか。 さらにシリーズ構成の場合だと…… まだ企画段階なのか、もう企画は固まってゴーサインが出てるのか。 企画段階ということになると、企画書(あるいはそれに近い物)を書かなければならない、ということを意味します。 それは同時に企画自体が流れる危険性もある、ということも意味します。 その代わり、自分の考えが多く作品内に入れられるわけですが。 原作がある場合は、当然、それがどんな原作なのかの説明があります。 一昔前だと原作、というと、コミックと相場が決まっていたんですが、最近では小説やゲームも少なくありません。 原作物の仕事依頼の電話、というと、忘れられない想い出があります。 相手のプロデューサーは、電話の向こうで気の毒なぐらい恐縮してました。 「実は……マンガ原作なんですけど……十人中十人が知らないと思うんですが……」 そう前置きして発せられた原作マンガのタイトルは、『クレヨンしんちゃん』といいました(^^;)。(つづく) |