脚本ができるまで.その14


直しの要求
 どういう時にシナリオの「直し」が要求されるのか?
 よくあるケースを列挙していきましょう。


○キャラクターが違う。

 よく出る意見として、「この人物はこんな行動はとらないのでは?」「こん なことは喋らないだろう」というのがあります。
 特に作品に途中参加した場合は、こういう意見が出される事があります。
 無論、脚本家はそれまでの脚本を読んで参加している訳ですが、実際に自分 で書いてみるまでは、なかなか全てのキャラクターを掴みきれるものではあり ません。いや、実際に書いてみても、わからないキャラがいるものです。
 最初から参加している場合でも、特にオリジナル色の強い作品では、各ス タッフが思い描くキャラクター像というのが、統一されているものではありま せん。
 そういう時は、「ここのセリフはこうでいいのか?」「この行動でいいの か?」という具合に意見を戦わせて、キャラクターを作り上げていく訳です。


○面白くない(もっと面白くなるはず)。

 一口に「面白くない」と言っても、いろいろあります。
「全体的に面白くない」「この部分が面白くない」「ここはこうした方が面白 くなるのでは?」とか……。
 『映像作品』というのは、一人で作るものではありません。
 面白い意見があれば、脚本作りの課程でもどんどん取り入れていくべきで しょう。
 脚本家としては、同じ「面白くない」という意見であっても、「こうすれば 面白くなるのでは?」と具体的に示唆して下さる方の方がありがたいです。


○放送できない(かもしれない)。

 自分では「面白い!」と思って書いた部分でも、「ちょっとこれを公共の電 波に乗せるのは、まずいのでは……」という意見が出るときがあります。
 その時はその部分は直すしかしようがありません。
 ただ、明らかに「放送コードに引っ掛かる」場合ならともかく、グレーゾー ンにある場合には、「直し」を怖れず、思い切って書いてみる方がいいのでは ないでしょうか?
 脚本家は「面白い脚本」を書くのが仕事なのですから。
 なお、「放送コード」に関係なく、NGが出る場合があります。
「マニアックすぎて、視聴者がついていけない」という場合です。
 実は私もこれをやっちゃった事があります。
 とある作品のシナリオ会議の時、私の脚本を読んだプロデューサーが、腹を よじって大笑いしたのです。
 他のプロデューサーも「面白い」「面白い」を連発したのです。
「やった!これは一発OKか?」
 私の中で期待は膨らみました。
 ですが、ひとしきり笑った後、そのプロデューサー氏は言いました。
「でもテレビでは放送できね〜〜」
 一般視聴者がついてこれない、という理由でした。
 確かにテレビというのは、0歳児から百歳過ぎの人まで見るものですからね ……


 他にもシナリオに対する意見は色々ありますが、とりあえず今日はここま で。
 「直し」に関する話は、もう少し続けます。(つづく)


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