横田<miskij>萬や 奈良


大和北道路におけるPIについて


大和北道路有識者委員会 が、海外のPI事例をわざわざ翻訳して掲載されているので、それらを取り寄せて比較してみました。
個人的な意見ですが、PDFしか掲載しないのは、回線が細い人にはちょっと辛いんじゃないでしょうか?
問題が世界遺産にも触れている以上、世界からも見られることも意識すると、HTML版もあったほうが優しいと思うのですが… 実際、海外にて日本語フォントを入れてそのまま読んでもらってる日本語ファンの人もおられますし、 翻訳サイトを通して見ることも出来るようになります。

まずは、とっても探しにくい海外のPI事例の直リンクです。

国名サイズリンク場所私の評価
英国2.8MB A .イギリスの概略計画の段階におけるPI 事例の概要 すぐそこ
フランス1.3MB B .フランスの概略計画の段階におけるPI 事例の概要 ここ
ドイツ900KB C .ドイツの概略計画の段階におけるPI 事例の概要 ここ
米国900KB D .アメリカの概略計画の段階におけるPI 事例の概要 ここ


英国のPIと比較してみる

どこが問題?
英国市街地を貫通し2本の主要道路をつなぐ一本道の両端2地点の渋滞
奈良多数の主要道路とその周辺を含んだ多地点の渋滞
 
どのようにする?
英国市街地から離してバイパスを作り、接続地点では高架化(online)か地下化(offline)で立体交差を図る
奈良世界遺産を損傷しないようにすることが優先されることだけ決まってるらしい。
 
保護対象となった史跡は?
英国4000年以上前に設置されたストーンヘンジ。
奈良1200年以上前の埋蔵遺跡。未発掘のものも多い。各地の歴史的建築物。
 
検討した年期は?
英国6年間。1994年に計画案が承認され、1999年末まで意見受け付け、2000年6月に案が発表される。
奈良実質、まだ2年未満(第1回有識者委員会が開催されたのは2002年9月20日)。
東京都1999年からはがきやメールで住民から意見を聞いている。現在も継続中。
 
事業費の概算提示は?
英国各ルート案、工法それぞれに数値を伴って示されている
奈良各ルート案ともに全く示されていない
 
多様な意見の提示は?
英国6ページ目左欄にてコメントとそれに対する回答が示されている。
奈良「地下水検討委員会」「文化財検討委員会」の2委員のみ。
反論も出ているが、これらを事業者発のサイトでは一切紹介していない。
東京都アンケートはがきやホームページ経由の様々な意見を公開.(PDF書類)している。
 
意見公聴、公開の後、大臣が決定した後は?
英国6ページ目中央欄にて、市民からのコメント、抗議の機会を増やすと示されている。
「審査前のパブリックインクワイアリーは反対意見の性質と重要性によっては扱われる。」
奈良現時点では、上記のような仕組みが組み入れられていないようである。
第2回委員 資料-4-1 大和北道路PI プロセスの進め方(案)(PDF書類)を参照して欲しい。
 

過去の事業費

概算の出し方としては、周囲の道路工事とその距離から大まかに割り出せるのではないでしょうか?
公団が民間化されれば、もし有料道路にした場合は通行料に跳ね返ったりし、利用に響くことも考えられます。

情報ソース:
場所構造長さ事業費備考
第二阪奈道路(全区間)阪奈・榁ノ木・宝来トンネル
+4車線+料金所
13.4km 2336億円 学研都市推進機構(関西文化学術研究都市)
月報No.104
第二阪奈道路・阪奈トンネル
1987年工区
山岳トンネル・2車線5.6km69億円 換気設備まで含むか不明
第二阪奈道路・阪奈トンネル
1991年工区
山岳トンネル・2車線5.6km45億円 換気設備まで含むか不明
第二阪奈道路・榁ノ木トンネル4車線0.5km45億円 100mあたり9億円?
第二阪奈道路・宝来トンネル4車線0.3km65億円 100mあたり20億円?
R309・新川合トンネル山岳トンネル・2車線2.7km56億円 県内単独では最長。
100mあたり2億円
R309・水越トンネルトンネル・2車線2.4km68億円 大阪側33億円:奈良側35億円
大阪側2.3km:奈良側1.1km
南阪奈道路
(奈良県土木道路建設課)
竹内トンネル
橋脚、橋梁など
2.0km
14.9km
29.4億円
99.2億円
未完成のため増えると予想されます。
大阪府監査委員事業費見積りの正確性.(PDF)
by google 国道166号 事業費
阪神高速湾岸線南伸部
第1期 出島〜泉大津
高架道路のみ8km195億円項目は道路橋梁
阪神高速湾岸線南伸部
第2期 泉大津〜りんくうJCT
高架道路のみ16.1km361億円項目は道路橋梁
東京・環状8号線
井荻立体事業
井荻トンネル
井荻陸橋
1263m
165m
640億円 経済効果は年200億円といわれ、
3年でモトが取れている
東京湾横断道路
アクアライン.
川崎トンネル+川崎換気塔
木更津橋梁+非トンネル部分
9.4+0.1km
4.4+1.2km
14463億円 軟弱地盤&大深度&諸設備で割高と説明。.
地下40mを通る断面図があります。.

情報がちょっと多い感はありますが、おおまかに見て、高架道路と、トンネルの距離あたり価格は、

気を付けたいのは、阪奈トンネルの値段には「前後の取り付け道路」が含まれてない点です。
阪神高速湾岸線南伸部の工費表には、「インターチェンジの工費」といった単独の項目がないので、これらも道路橋梁の工費に含まれていると思われます。
この第1期は25億円。堺泉北道路との連絡JCTが含まれたためと推測されます。

2003.4.2 追記
阪奈トンネルの事業費について、問い合わせたところ1260億円との回答がありました。
このため、上記のトンネルのキロあたり単価については別ページにて説明しなおします。

考慮されていない点

東西に伸びる大宮通り(阪奈道路)と大和北道路を連絡しようとする場合、トンネルだと、 地下40mまで、ぐるぐると螺旋状に掘り進んでインターチェンジを造る必要があるとされます。
高速道路の勾配は東京港トンネル、アクアラインの例によれば4%くらいまでとされており、 それより低速で走るのだから6%と仮定しても、666m必要なことが判ります。
これを2箇所設けると1km超で20億円超ですね。何回転させるかというと直径20mで10回転は必要になります。
トンネル内の高さは4mぎりぎりになり、ほとんど円筒2本を入れるみたいな恰好になり、地下水脈への甚大な影響は避けられないと思われます。
直径50mでやっと4回転ちょっとになり、トンネルの高さが空きますが、はたして実用になるんでしょうか…。
それと比べるとむしろ地上5m程度の高架道路がずっとまだ安く付きそうです。


フランスのPIを読んでみる

各国のPI一覧へ戻る

フランスのPI資料は、3ルート案と交差交通の子細からなり(保護すべき遺産などは記載されてない)、 これを手本に始点と終点を木津ICと郡山ICに固定しているものと思われます。
6ページ目にある討論調査委員会から知事へ提出された討議等の総括文書(概要)がポイントと思われます。

・・・このままでも充分に参考になりそうです。


ドイツのPIを読んでみる

各国のPI一覧へ戻る

ドイツのPI資料は、2つの市の中心部を迂回するために6ルート案、および整備しない案と、 市民への呼びかけからなります。
ルート案は始点、終点を柔軟に設定してあり、また2市の迂回路を選ぶ関係で、複数の案をつなぐ形にもなっています。
路線案を見るとなだらかなカーブを描いており、景色を眺めながらのゆったりした運転ができそうです。
どこかで見たかと思ったら、名阪国道の伊賀近辺。


アメリカのPIを読んでみる

各国のPI一覧へ戻る

住民が利用するのだからこそ、ということで、冒頭に「主要交通投資分析」(MTIA)の理念が書かれてます。

そして、MTIA は、トランジット(バスやLight Railway Train)、 道路改良、歩行者、自転車またはその他の交通手段を含めた全ての実行可能な代替案を検査する、 という多様な検討を行う…とされています。
今のところ、今回の奈良のPIで提示されているのは高速道路案だけのようです(建設しない、も示されてますが)。
3ページ目には「あなた方市民がコミュニティエンゲージメントプロセス(Community Engagement Process)においてあなた方 の意見を反映させない限り、主催者は責任を果たすことができません。」とあります。
市民としての責務として、意見を出すべき、ということなのでしょうか。
もっとも、現時点では、情報の提示が不十分という印象は否めないものがあります。

MTIAは、下記のような6案を提供しています。やはり事業費の概算も示されてます
TSM:Transportation System Management 交通システムマネージメント 詳細は こちら. thanks to(財)和歌山社会経済研究所
  案1
建設しない
案2
TSM案
案3
LRT案
案4
LRT案
廃線も再利用
案5
道路改善(大)
案6
道路改善(小)
バスやLRTの利用者数
事前予測・平均利用者人数
−−7000125001450060006000
節約される移動時間
1年あたり(百万時間)
−−0.91.31.31.52.1〜1.8
アクセシビリティ
バスやLRTで商業地区まで
30分以内に着く世帯数
14000460005500039000−−−−
環境への影響
立ち退きが必要な居住・店舗の数
18〜2518〜251〜7
環境への影響
歴史的・文化的資源への影響
影響なし最小または
影響なし
直接的影響なし
6つの歴史地区を通過。
14の歴史的文化財に隣接
影響なし影響なし
建設費用(百万ドル) 40430460150230〜160
年間運営維持費用(百万ドル)
 

 
15
23.4km
20
27.2km

11.0km

27.0〜14.4km

数字だとピンと来にくいのですが、PDF版では棒グラフで示されており判りやすくなっています。

2004.Oct.12 一部のリンク切れを修正(修正したリンクには"."が付いています)。

TOP| 奈良めぐりに戻る| 2003年1月時点の所感| いくつか分析
※Web Page以外のメディア(雑誌・放送・CDなど)に掲載する際は連絡乞う。
Copyright by YoKota MItSuhiro <miskij>2003. All Rights Reserved.