西へ。3
かくして私は罠にはまった・・・・・・。
大阪食い倒れもはや何が何だかわからないツアー(完結編)
翌朝である。
睦月さんの家でお世話になった私と化けの兄弟は、睦月さんと共に家を出て、一路大阪駅に向かう。
大阪駅で睦月さんと別れ、ここから兄弟二人での帰郷となったのである。
因みにこの兄弟、はっきり言えば莫迦である。
通常ならば、このまま家にまっすぐ帰ることが通常の人の反応であろう。
だがしかし、だがしかし・・・・・・・、なのである。
新大阪駅でうどんを啜り、
(考えてみれば、関西のうどんを食うのはこれが初めてであった)
新幹線の切符を購入する辺りで、雲行きが怪しくなってくる。
私は東京で仕事をしている身なので、東京都内乗り降り自由な切符であれば、八丁堀駅経由の定期券併用であっさり帰って来れるのだが、木更津に住み、木更津が生活基盤である化け猫は、私と同じ切符を買う謂れは無い・・・・・・、はずだ。
だが、彼奴は私と同じ乗車券を購入しているのである。
たしかに冗談半分、ホンキ半分くらいで、

「アキバに寄って行くか」

などと言っていたものだが、奴はマジだ・・・・・・。
こうなりゃ一蓮托生だと悟った辺りが、もう28年も兄弟をやっている者の馴れ合い息の合ったところであろう。
もはや言葉は要らない、決行するのみだった・・・・・・。

新幹線は走る、一路東京を目指して。
私は打つ、キーボードを・・・・・。
化けは寝る、ただひたすらに・・・・・。
・・・・・・・。
んにゃろう(この野郎)・・・・・・。
こうして浜松までやってきた辺りで、いいかげん目が疲れてきたので、私はキーボードを叩くのを止め、外の景色に目を向けるのであった。

気が付けばここは東京秋葉原・・・・。
私は一体途中で何を間違えてしまったのであろう。
化けと一緒にT-ZONEミナミに向かっていた。
今回の目的は安くなったと評判の256MBメモリの購入である。
私は既に財布の中身がエンプティである。
ここで余計なものを購入する=自らの首をしめる
と言うのは火を見るよりも明らかなのにもかかわらず、化けは平気で人にDVD-ROMドライブを買えだの何だのと言ってくる。
その斬撃を辛うじてかわしていたが、化けが256MBのメモリを4枚購入するに至って、私も心の中で何かが弾けたのであった。

メモリ関連のアイテムを扱っているフロアを離れたとき、兄弟がその手にしていたのは

化け=256MBメモリ×4
私=256MBメモリ×2

しかもお互い、カード払い
嗚呼、揃いも揃って駄目人間だ・・・・・・・・。
しかもこれだけで済まない辺りがこの兄弟の問題点であり、店外に出る為にエスカレータで移動している最中に、それを見た。
うっかりである。
単なる偶然である。
しかし目に入ってしまったのである・・・・。

「俺さ、音源見たいんだが良いかな?」

私は化けにそう提案する。
そう、私は最近自宅の御本尊様がMP3演奏中に不満の声(ノイズ)を発する事があることを気にしていた。
結局これはサウンドカード側のPCIコネクタの汚れが原因と判明し、事態は収拾したのであったが、一度このノイズを気にしてしまうと、解決策を練らねば納得いかない人種である。
ここで私は、最近評判が良いと聞くONKYO製サウンドカードを購入しようと思ったのだが現物は無い。

「ああ、これで一安心」
(何が?)

と思っていたのだが、ONKYO製USB仕様のディジタルオーディオプロセッサが目に入ってしまったのであった。
ふと手にとって見てみると、化けが後ろから、

「USBの音源かぁ・・・・、いいぞ、買え」

と無責任なことを言い放つ。
躊躇する私、だが、

「ノイズを避けたいと思ったら、USBの音源がお勧めですよ」

という、職場の友人の話を思い出した。

考えている。
よく考えている。
もっとよく考えている。

怖い考え(購入決定)になってしまった(爆)。
後ろから見ていた化けが、

「お前さんのアンプ、まだ光デジタル入力残ってたよな?」

あうあうあう、確かに残ってる・・・・・・・。

「これ光デジタル入出力があるぞ」

あうあうあう、それもわかってる・・・・・・。

「さぁ!」

さぁって何だよ!!
と思ってる間に、音源を握らせた化けは、私の両肩を両手で掴み、グルンとレジ側に旋回させて、私を前進させる。
ぅおい!マジか?!
レジの前に連れて行かれたとき、運命は決まった・・・。
ここでも私はクレジットカードを抜き放ち、

「すんません、カードで一括」

と言うしか術は残っていなかったのであった。
そんな昼過ぎ、ちょっとだけ夕方が顔をのぞかせたそんな時間。
互いに荷物やら大阪からの土産やらT-ZONEの袋を抱え、歩行者天国になった中央通りを駅に向かって歩く。
ああ、やってもーた、本格的にやってもーた・・・・・。
やっと自由になる金が来月から増えると思ったのに、いきなり未来の自分に全てを預けてしまった・・・・・。
そんな疲れを肩にどっしり乗せながら、このド阿呆兄弟はツアーの全日程を終了させたのであった。

こうして今回のレポートを書く中で、最大の敵はやはり身内であることが判明したのであった。



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