秋の夜長に
秋の夜は長い。
この時期は食欲の秋、読書の秋などとも言われる、まっこと良いシーズンなのである。
例えば私のような、日中はどこかに出かけないと落ち着かない精神的貧乏性な人間ですら、この季節は夏に比べて早めに日が落ちる分帰宅を早々に完了し、買ってきた本をじっくり読み更ける時間が増えていく。
あとは、夏場に足りなくなっていた睡眠を取り戻し、健康的な生活を取り戻せる時でもある。
だが、この秋の夜長というやつも、突如として私に死ぬより辛い時間を提供してしまう時がある。

「人間とは、忘れる生き物である。」
と言った方がいる。
この言葉に間違いは無く、私なんて覚えたことは基本的に片っ端から忘れる人間である。
所謂一つの駄目人間。
そしてこの究極の健忘症病みっぽい自分が唯一下手なのが、実は忘れることなのである。

あ〜、その辺、座布団を土俵に投げないで下さい。

人間誰しも失敗や失態、トラウマになってしまった出来事、何故か知らないがインパクトが残ってしまうもの等に一つや二つは出会った事があるのではあるまいか?
そして普段ならば、いつの間にやらすっぱり忘れて新しい人生を繰り返すであろう。
だがしかし、嗚呼、だがしかし、私はそんな些細な(と思いたい)ことを突如脳の奥から引っ張り出し、それを契機に芋蔓形式で次から次へと思い出していってしまうのだ。
心が「止めてくれ」と思っても時既に遅し、実は芋蔓なんかではなく竹の地下茎のように張り巡らされた過去の失敗達が、私を責めたてるのである。
少々話がずれてしまうが、忘れることが苦手な私は、更に思考の脱線人間でもあるのだ。
一つが浮かび上がるとそれに付随して、ほんの小さな関連項目・・・・、例えば音感が似ているものや、語感が似ているものを次々連想してしまうという巨大な問題を抱えていた。
城司幾太27歳、一人上手な男であった・・・・・・・・。

さてこの辺から実際の症例を見てみよう。
この男、実に寝つきが悪い。
布団にもぐりこんで寝るぞと言われて恐らく1時間位は意識が残ったままだ。
因みに寝るときと言うのは一日の中で経験したモノを、必要不必要に分けて圧縮格納、廃棄している時間だと個人的には思っている。
齢27年、いつの間にやら身についてしまった悲しい習慣でもある。
さぁ、今日は一体何があったのかな・・・・・・。

30分経過・・・・・・。

突如瞑っていた筈の目が見開かれる。
一体何が起こったのであろうか?なにやら自嘲気味な笑いが口元に張り付いている。
怖い、これははっきり言って怖いなんてもんじゃない。
出来れば口の片側の端だけ持ち上げるような笑い方は、他の人の前ではやらないで頂きたいものである。
どうやら対人関係において、一日を振り返ってる間に、過去の女性遍歴(フられた話限定→というか"それ"しかない)まで思考が及び、自らを考察検討した結果が自嘲と言う行為になって現出したらしい。
何か空しい奴だな。
さて、こういうタスクが実行されてしまうと人間何をおいても悪いこと以外の記憶を呼び出すのは至難の業だ。
何故あの時一言が言えなかったのだろう。
好きだったあの娘(こ)には、当時既に彼氏がいて、それについて色々相談もされていた。
信頼されていたと言っても良い。
逆を言えば、信用され過ぎて頼りにはなるが、ただそれだけの人になってしまった。
そしてこの関係を壊してもと言う勇気が自分には無く、告白の言葉、それだけはどうしても言えなかったのである。
彼女と疎遠になって既に三年近い年月が経過してたっけ・・・・。
そんな事を考え始めたら平気で2時間3時間は経過するのである。

またある時は、会社での失敗を振り返り、大いに憤慨する事がある。
特にそりの合わない上司とやらかした一件は、思い出しただけでも腹がたつ。
特に働かないくせにみたいな事を言われたときは逆ギレを起こしかけ、自分が派遣であると言う立場も忘れて思いっきり噛み付いたこともあったりして、後にクビになったら嫌だなぁ・・・・、とか沈んでみたりみなかったり。
(結局へこんでるじゃないのか?)
まぁ、この手の話題も次への布石と言わんばかりに次々と思い出してしまい、それこそ切れた堪忍袋の緒が蘇生する暇もないほどだ。
こうなるとやはりもう駄目である。
神経が興奮してしまって目は冴え渡り、おもむろにDCのコントローラを握り締め、パンツァーフロントなど始める訳である。
これで更に難易度高めのマップをプレイして、とどめにJS2の128ミリに自分のケーニヒスティーゲルが側面装甲を打ち抜かれようものならもう大変である。
そのマップをクリアするまでやり込んでしまい、なんか外では新聞配達のバイクの音が聞こえてきたりするのである。
ああ、泥沼。

でもまぁ、こんなに悪い事ばかり連鎖で思い出すと言うのも月に3度か4度位なので、まぁ良しとしよう。
その一方、悪くは無いけど不眠に陥る思考の連鎖と言うのもまぁ確かにある訳で、これについて細かく説明を行おうとするとあまりに肉感的な話になってしまい、とても一般の皆様に見せる訳には行かず、婦女子からの非難GO!GO!に晒されるばかりか幹事長も感じちゃうっつーか悶絶生き地獄と言うか、女殺し油の地獄と言うかまぁ、深く突っ込まれたら「いやんいやん」な話になってしまうのでどうか勘弁願いたい。
(何ソレ?)
一言で言うならイジリーも真っ青な訳です。
(きっ巴里)
で、当然こういった話を思いついちゃったのもそういった眠れなくなる要因の一つなのでありまして、時間はえーと午前二時。
さっきから話をまとめようと睡眠時間を片っ端から削り倒しているのだが、眠れぬ夜はまだ続く。



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