近代アイテムと礼儀の狭間

最近駅のホームで電車に撥ねられる御仁がいるそうである。
基本的に世を儚んでな人々がホームからダイビングした戦績の話ではない。
古来より日本人は礼節を尊び、挨拶に至っては基本中の基本。
何においても実行される、礼儀云々を超えた、もはや習性と言っても過言ではなかろう。
で、である・・・・・。

そんな日本人の習性を条件によっては訝しがる方々がいらっしゃるのはご存知か?
そう、日本文化と違う世界に生きている海外から来た方々である。
日本人は電話口において、往々に最後に頭を下げてしまう傾向がある。
まぁ、皆がみんな気がついていることだと思うが、当然電話というのは声だけの通信手段だ。
こちらが相手に頭を下げて挨拶しようとて、相手がそれに気付く訳は無い。
最後の言葉が聞こえて、電話が切れる。
ただそれだけの事である。
この電話口で頭を下げる光景が、海外からいらした方々には相当奇異に写るらしい。
そりゃそーだろうなぁ・・・・・・。
とか思うんだが、私自身自宅の電話においては、時々実行してしまうのだからしょうがない。
昔も今も、きっとご家庭内では電話をきるその瞬間に、壁に頭をぶつけてしまう御仁は後を絶たないと思う。
さて、近代アイテムとしてその存在を知らしめたモノと言えば、携帯電話である。
衛星携帯電話として、世界普及を目指したイリジウムなんてのもあったが、利用料の高さと、
「ヒマラヤの頂上から電話が出来るって、誰がいちいちそこまで行って電話すんの?」
というジレンマによって、とうとう倒産となったのは記憶に新しい。
(これの為に飛ばした人工衛星は引取り手が無く、維持費も払えない為、大気圏突入による焼却処分が決定したそうである)
んが、通常人がいる世界では、あっちで呼び出し音、こっちで呼び出し音と、普及台数はうなぎのぼりに増え、日本で見るとNTTDOCOMOを頂点に相当数出回っている。
かく言う私も、既に斜陽に差し掛かっているDOCOMOの1.5Gの携帯なんぞ持っている。
(いつの間にやら主力の座を退いて、シティフォンとか呼ばれているが・・・・)
で、こうした携帯電話の普及が、一つの悲劇を生み出した訳である。
一見何の関係も無い、この最新技術と日本人の血に刷り込まれた伝統、これがどんな悲劇を生んだかと言えば・・・・・、
駅のホームで携帯電話で話してて、最後の挨拶をしたときに、電車に接触する。
というものだ。
笑ってはいけない。
少なくともこの"事件"は真実なのであり、被害を被った方も確かにいるのだ。
美しき日本の伝統が呼んだ悲劇である。
幸い死亡事故になったかと言われれば、なったと言うところまでは聞かなかったので、恐らく健在なのであろうが、なんともみっとも恥ずかしい話ではないか。
やはり公共の場での電話は、周囲の迷惑になるばかりか、自分まで危機に陥れる行為であると証明されたようなものだ。
少なくともここを読んでらっしゃる皆様には、重々注意して頂きたいものである。
さて、ここで更に気になった点がある。
普通、駅では電車がホームに入る際、
「白線または黄色い線より、ホームの内側にお下がりください。」
というのがお約束である。
これならば基本的に電話していてうっかり挨拶をしてしまったとて、電車に接触するはずは無い。
それが実際に接触している訳だから、この人の素性や身体的特徴など、色々夢想してみた訳だが結局解らない。
どんな御仁であったかを考えだすと止まらないのだ。
まぁ秋の夜長だ、じっくり考えるとしよう。



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