納涼企画第二弾「怖い話」

その男は暑い夜が一段落したその日、熟睡していた。
人間はレム睡眠とノンレム睡眠をその間繰り返しているのは、TVで散々話題として取り上げられてきたのでご存知の皆様も多いと思う。
そして浅い眠りに入った時、夢というのを見ると言うのもご存知なのではあるまいか?
この男もご多分に漏れず、そんな夢と眠りの深淵を行きつ戻りつ眠っているのであった。
そしてこれは皆様もなかなか気付かないと思うが、夢と言うのは目を覚ました時点で恐らくは半分。
そして上体を起こしてまた半分。
立ち上がったときには殆ど忘れていると言う事が多い。
記憶の攪拌の中で見る・・・・、というより"見えてしまう"夢と言うのは、それだけ水泡の如くもろい存在なのである。
だから「俺はもう何年も夢をみてないぜ」というのは、恐らく本人が「夢を見たという事実を忘れ去っている」という事なのだと私は推察している。
現実と言う世界と、夢と言う世界。
人間は二つの世界を交互に楽しんだりしているのかも知れない。

時間は既に明け方と言える午前4時である。
雨が降ったお陰で随分眠りやすい温度まで下がった部屋で、男はいきなり目を覚ます事となる。
曇りの天気でまだ部屋が薄暗い時間。
いきなり足をおさえながらである。
一体この男に何がおこったと言うのであろう。
そして男は顔をしかめながら、こう一言呟いた。

「・・・・・・・っ!足つった・・・・・・・。」

まぁぶっちゃけて言ってしまうとこの男とは私なのだが、これのどこが恐怖体験だと言うのだろう?
夢でいったい何があったのか?
もう一つの泡沫の中にある人生で、自分は一体何を経験したのか。
記憶が無いという事が怖かったのであった。

(前回に引き続き怖くも無いネタを出してしまった)

2000年7月31日



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