ストーキング

つい先日見かけた謎の光景である・・・・・・。

おりしもその日は天候不順、花冷えと思われる寒い日で、
尚且つ激しい雨の降る日の事だった。
いつも通り愛車で駐車場まで乗り付け、
最近の疲労の蓄積からトボトボ駅へ向かった後の出来事だ。
ほぼいつも通りのいつもの時間、
自動改札を抜け、東京方面行きのホームに向かい階段を一歩一歩下りて行く、
いつも愛用している乗車スペースを目指し移動していると、
後方に視線を送り、なんとも不思議そうな顔をしつつも、
恐怖とも思える眼をした、
私自身ですらなんと言って良いやら表現に困る御仁が脇を通り過ぎたのだ。
年の頃なら30代、身長160センチ程、デザートイエローっぽいコートを着た、
何の変哲も無いサラリーマンのおっさんであった。
そんな事はどーでも良い。
(いいの?)
ともかくその御仁は、何かから必死に逃亡を図っている様だった。
それにしても、だがそれにしてもである。
一体彼は何から逃亡しようというのであろう?
実は、一見冴えなさそうなサラリーマンの風貌をしつつも、
凄腕のヒット・マンであるとか、バレてはならない秘密の商売をしているとか、
不祥事の続く警察関係者であるとか、
その辺、この御仁のこれまで培ってきた人生や経験、そして、
現在の職業に関係ないばかりか、
私個人の勝手な推測、憶測、思考、思惑、期待なので、
本人にこんなことを聞いたら、もれなくホームから突き落とされそうな気がするし、
最近更に優秀なチキンになりつつある上に、そろそろ人生3回の裏、
ノーヒット、ランナー無しで、9番ピッチャーに打順が回り、
代打を投入する必要も無く、このままあっさりスリーアウト・チェンジ!
になりそうな、まるで消化試合のような私に、
人生の怖さも、危うさも知らず、それゆえの無鉄砲さと猪突猛進で、
真実一路(かどうかは、自分でも一寸自信は無い)の、
そんなシャバ僧のような勇気は無く、このおっさんに真実をインタビューする事は無かった。
(添削=文章が必要以上に長過ぎです、必要に応じて文章を区切り、読みやすい文章にしましょう 正解時100点満点、採点10点)
まぁ、実際に、
「ついて来んなよ」
とか、半分ぼやくように言いながら、私の横をすり抜け、
ホームの反対側まで辿り着かん勢いを発散しながら、去っていったのである。
朝、毎日同じ時間に電車に乗って仕事に行く方ならば、同意していただけるかと思うが、
いつも同じ電車に乗ってると、名前、素性は知らなくとも、
顔は良く見て知っているという御仁が結構いるものである。
このおっさんも、毎朝見掛ける、
「顔だけは知ってるおっさん」
であった。
さて、このおっさんを見送って、また再び顔を正面に向けようとしたときである。
女が一人、おっさんを追っていた。
さて、この女性も、私が乗る電車の一本前の各駅停車でこのホームから出て行く、
顔だけは知っているねーちゃんだったのだ。
先ほどのおっさんと比べると、いつも見掛けるままののほほんとしながらも、
何を考えてるのか判断できないような無表情で、
その上、その表情を微妙にでも変える事無く、
先ほどのおっさんを追い掛け回しているようだった。

さて、ここでテーブルトークゲームの、「クトゥルー」のキャラクターメイキングで、
精神力の出目が死ぬほど悪くて、何か見かけた途端、
パニクってどっかに消えてしまうような貧相な精神力を宿してしまったみたいな私は、
一瞬にして脳の中で例外0Eの発生を知らせるブルースクリーンが表示される。
(ブルースクリーン=Windows系OSを使っている人間ならば一度どころか場合によっては毎日、人によっては、月に一度のお客さん、運がよっぽど良くなければ見ないで済むことは無いと思われるエラー。同義語Macの爆弾マーク?)
一体何があったのだ?
しかも、このねーちゃん、私の視界から速歩にもかかわらず一瞬にして消え去り、
さっきのおっさんを追いかけて、ホームの反対まで行ってしまわんばかりの勢いを持っていた。

???????・・・・・・・、?
私の脳内では、過去から今までの経験、読書、映画、マンガ、TV、ラヂヲなどで、収集した知識をフル動員し、
そして、怪しく渦巻くシナプスの連鎖反応

連鎖反応の例
カツラ発見、髪形で判断、知り合いと判断=あの人みたい_解答1
カツラが必要な人、要オプション装備、髪が無い人=ハゲ_解答2
あの人みたい_解答1+ハゲ_解答2=あの人って、ハゲ_正式解答


が、幾つもの状況を導き出していく。
1.失敬なことをおねーちゃんにはたらいた
2.ひょっとすると、不倫関係のもつれ
3.よもや認知問題
4.ETC(これ以上は倫理規定に反するため削除)
さぁ、正解は果たしてどれだ?
結局目の前の状況しか見ていないので、どれが正解かは、本人たちに聞かない限り、
一生知る事は無いのであるが、どんどん思考が流れていく。
暫く観察した後、
結局のところ、よーけ解らん
という、まこと明朗な解答に達し、この時点でこの件は闇に"ちゃい"することと相成った。

だが、そのいつも見てる両名の、電車の乗り場を見て「おや?」と思う。
暫く前からオカルト探偵小説モノを読んでいた私は、
明らかに足りないと思われる推理能力を働かせてみた。
乗り場付近に、どうやら傘の水滴を飛ばしたと思われる後が残っていたのだ。
状況証拠から察するに、どうやらねーちゃんが立っていた場所の隣に立ったおっさんが、
無遠慮に傘を振り、水気を飛ばした際に、どーやらねーちゃんにかかってしまった。
これに怒ったねーちゃんが、憤怒、謝罪を求めんが為、無言でにじり寄る。
おっさんは、まさかこの程度で相手を怒らせたとは考えなかったため、
ねーちゃんから発される怒気の理由が判然としなかった。
結果、おっさんはこのねーちゃんの、
本人(おっさん)的には謂れの無い怒りに人類は恐怖した。

採るべき行動=逃亡

一方、ねーちゃんは謝罪無く去ろうとするおっさんに対し、
早く気付けよこの馬鹿!
っつーか謝らないうちは、絶対許さん!!
ってゆーか逃がさん!!!

結果=追跡

どーだ、このハラショーな解答!
俺様ちゃんの灰色の脳細胞ってすごいじゃん!!
とか、表情に一切現す事無く自分に喝采を送る。
問題は、この推理が当たりかどうか、生涯に渡って確認する機会は無いだろうという事だ。
そんな当たり前の事にも気付いてしまった時点で、
「やっぱ、俺ってチキンだなぁ・・・・・・。」
と、自分のチキンさ加減を悟ってしまい、一寸ブルーになってみた。

現在のところ、いつもの時間のいつもの駅では、
その一件以降おっさんの生存は確認されていない。
ただひたすらに、Winnerねーちゃんが電車をいつも通り待つだけである。
こうして、類推する事は出来た事象だが、結局真実は闇の中だ。
ああ、また墓場まで持っていかなきゃならない謎が増えてしまった。

2000年4月24日

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