「新聞部に、写真部。それに目撃した多数の生徒達」
「う……」
「この大多数の好奇と干渉から逃れる事はもう不可能ですわね」
次の日の放課後、薔薇の館の二階で祥子は令や志摩子に由乃ちゃん。
それに乃梨子ちゃんと瞳子ちゃんから一方的に責められていた。
祐巳は令になにやら使いを頼まれて出かけていった。
昨日の醜態はあまりにも多くの人間に見られすぎていた。
放課後になって直ぐの中庭であったのだから当然と言えば当然だった。
あの場にお姉さまや聖さまがいた理由はすぐに本人の口から聞かされ
た。
令が前日に「祥子の様子がおかしい。このままだと大変なことが起き
そうだ」と江利子さまに言ったのだ。江利子さまはお兄様との約束か
らどうしても逃げる事はできずに蓉子さまに連絡した。
聖さまはあいかわらず、信じられない嗅覚で独自に嗅ぎ付けられた。
お姉さまとは正門で一緒になったそうだった。
「で、どうすればこの事態を収拾できるか。ですけど」
「それは…」
由乃ちゃんの非難めいた視線に祥子は俯くしかなかった。
何も考えずに事態を大きくしたのは祥子自身だったからこの場にいる
誰も責める事も恨むことも出来なかった。
「とりあえず、公にするしかないわけよね」
「な、なんですって!」
さすがに今の令の言葉は聞き捨てならなかった。
確かに自分で自分の首を締めたのは事実だったがなぜ、ことさら真実
を公にしなければならないのか。
「じゃあ、祥子は何か解決策。あるの?」
「……ない、わ」
「事実を、といってもつまらない事はいわないけどある程度公にして
しまう以外にこの事態を収拾する手はもうないわけ。誰かが昼間か
ら暴走してくれたおかげでね」
「ぐ……」
まさにぐうの音も出なかった。
「真美さんと蔦子さんをお連れしました」
祐巳が新聞部のエース、山口真美と「カメラちゃん」こと武嶋蔦子の
二人を伴ってビスケット扉から入ってきた。
−こうなったら覚悟を決めてしまうほかない訳ね。
「ようこそ、真美さん。蔦子さん」
祥子は来客用の最上級の笑顔で二人を招きいれた。
翌日の「リリアンかわら版」には、『Autumn crisis』と題された今回
の顛末が祥子本人のインタビューと共に第1回と記されて掲載され、
事実を知る者にも知らない者にも大反響だった。
図らずも冬休みまでのネタを新聞部に提供する事となってしまった。
- f i n -
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