新・闘わないプログラマ No.48

コピー


WinGroove事件(詳細はNo.46を参照)の経緯を眺めていて、ソフトウェアのありかたについて、私にとってはいろいろと有益な議論もあって、皮肉な言い方かも知れませんが、それはそれで有意義でした。

すっかり忘れていましたけど、sharewareって、本来お金を稼ぐためのものじゃなかったのですよね。ソフトウェアを開発するには、機器も必要だし、開発環境も必要だし、いろいろとお金がかかる、だから、このソフトを気に入って使ってくれる人は・・・、という感じです。開発者と利用者、みんなでソフトウェアを共有(share)しましょうね、という思想ですからね。だから、ネットワーク(やCD-ROM)で流通している有料ソフトウェアと全部sharewareと呼ぶのは、考えてみれば変な話なんですね。
もちろん、利益を得るためにソフトウェアを作り、その流通経路としてネットワークを使うこと自体は、別にいけないとは思いません。ただ、不正利用者がいて、それに対する制裁、というふうに行ってしまったことがあの事件の問題点でもあるわけです。そうじゃなく、不正利用者の排除、厳格なユーザー認証の仕組み、を考えるべきでしょう。このあたりもいろいろと議論があって、私はそのあたりはあまり考えたことが無かったのですが、いろいろな手法があることが分かり、勉強になりました。
当然のことながら、厳格なユーザー認証の仕組みは、手間やコストがかかりますから、そういった手法を採用するかどうかは、作者の考え方しだいではあります。ある程度の不正利用者というものを最初から見越しても、厳格なユーザー認証を行わない、という考えも当然アリです。利益を目的とする以上、その利益を最大にするようにすればいいことなのですが、ここには「不正利用者がいるから利益が減った」という簡単な構図では語ることの出来ない、いろんな要因が考えられるわけですから。

市販のソフトには、以前はコピープロテクトというのがかかっていました。ゲームソフトは全然知らないのですが、それ以外のソフトでは特殊なものを除いては、今ではほとんどコピープロテクトはされていません。
コピープロテクトが廃れた一番の原因は、ハードディスクの普及ではないか、と思います。今となってはもしかすると知らない人もいるかも知れませんが、昔のパソコンにはハードディスクは付いていませんでした。昔と言っても、せいぜい6〜7年くらい前かな、ハードディスクが普及しだしたのは。それ以前は、アプリケーションをフロッピーに入れて、それで立ち上げていたんですよね。これだと、ソフトウェアパッケージに付いてくるフロッピーをそのままドライブに入れて、それでアプリケーションを実行させますから、そのフロッピー自体にコピープロテクトがされていれば、それでいいわけです。
ところが、ハードディスクの普及に伴って、アプリケーションをハードディスクにインストールしたい、という要求が高まってきたわけです。こうなると、コピープロテクトは結構厄介になります。簡単に言えば、アプリケーションをフロッピーからハードディスクにコピーするときに、通称「保護情報」と呼ばれるデータ(?)をフロッピーからハードディスクに移動させます。この保護情報が無いとアプリケーションは動かないようにしておくわけですね。
この保護情報は一個しかありませんので、同時に複数台で使うことは出来ないのですが、その保護情報の入ったハードディスクが壊れたり、内容が消えてしまうと、保護情報が無くなってしまうわけです。こういったトラブルはいくらでも起こり得ますし、そのサポートの手間とコストにソフトウェア会社の方が音を上げた、というのが実状のようです。ある程度の不正利用者を見越してそれによる損害を考えても、コピープロテクトがあることによるサポート費用に比べれば、コピープロテクトが無い方が結果としては利益が多い、ということなんでしょうね。

コピープロテクト、と言えば、プロテクト破りのツール、というかプロテクトを無視してコピーしてしまうツール、というのが以前はいろいろと売られていました。もちろん、これ自体は違法なものではない(多分)ですけど、なんかその胡散臭さみたいなものがありましたね。雑誌広告なんかも、今は亡き「The Basic」とか、かなり怪しげな雑誌にしか載っていませんでしたし。もちろん表向きは、ソフトを買った人がバックアップと取るために使う、ということでしたが。
たしか「ファイラ」なんて名前で売っていたように記憶しているのですが、このしらじらしいネーミングは最高です(^^;) そりゃまぁ「プロテクト破りツール」なんて言うわけにはいかないでしょうけど、一応。
そういえば、東南アジアの国々では海賊版ソフトが花盛り(?)のようですが、向こうでは、それら海賊版を「インストーラ」と呼んで売っているそうです(情報をいただきました、ありがとうございます)。これなんかも似たようなセンスでしょうか。
で、その「ファイラ」ですが、自分自身にもコピープロテクトがかかっていて、しかも自分では自分自身をコピーできない、というオチがついていましたね。あれは結構笑えるものがありました。でも、別のファイラを使うとコピー出来たりして・・・。

コピープロテクトとプロテクト破りは、いたちごっこなわけですが、傍から見ているとそれはそれで面白かったりします。でも、例の事件の議論の中で出てきた、究極(?)のコピープロテクト、私は知らなかったのですが、これはすごいです。ここまでやるのか?という感じです。
どんな方法か、と言いますと、フロッピーディスクのディスク自体のある位置に紙やすりを貼るんだそうです。そのある位置というのは、空き領域に相当する部分です。これはどういうことか、と言いますと、通常にそのフロッピーでプログラムを動かしている分には、フロッピーの空き領域にはアクセスしません。そこにはデータが無いのですから、当然ですね。ところが、ディスクコピーの操作は通常ディスクの全領域をコピーしますから、件の紙やすりが仕込んであるフロッピーをディスクコピーしようとすると・・・・
そうです、その紙やすりが貼ってある位置にもドライブのヘッドがアクセスに行って、そのヘッドが壊れてしまう、という寸法です(^^;) ←笑い事か?
ここまでくると、ある意味感動してしまいます。「ふつー、んなこと考えねーし、やらねーよ」(--;)

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