新・闘わないプログラマ No.339

穴がふさがってる


「昨日から、○○社との間のファイル転送がうまく行ってないんですけど」
「それってどんなシステムだっけ?」
「だから、○○社との間で自動的にファイル転送するものなんですけど…」
「それじゃわからん。どういう構成?」
「この資料に書いてあるとおりなんですが」
「ああ、これね。社内LANにつながっているサーバで、タイマーでftpを起動して、インターネット経由で○○社のサーバに接続して…か。それでどんな感じなの?」
「ログを見た限りでは昨日の夜以降、あちらさんのサーバにつながらないみたいなんですよ」
「今はどうなの?」
「今もだめみたいなんです」
「そのサーバで、手動でftpを起動してみたらどんな感じ?」
「やっぱりだめです。つながりません」
「そういや、途中にあるファイヤウォールはどうやって超えてるんだっけ?」
「たしか、○○社のサーバとうちのサーバとの間のftpだけできるように、ファイヤウォールに穴あけてるはずです」
「んじゃさあ、向こうのサーバが死んでるだけなんじゃないの? 確認した?」
「まだです。確認してみます」

「○○社に確認しましたけど、あちらのサーバは問題ないそうです。うちのところ以外からのftpは問題なくできているそうです」
「おっかしいなあ。じゃあ、ウチからもできるはずだよねえ。特に設定は変えてないんでしょ?」
「あのシステム、だれもずっといじってませんよ」
「あちらさんのサーバのIPアドレスが変わってるとか」
「確認しましたけどそんなことはないそうです」
「んじゃ何だろねえ」
「あのー、取り込み中すみません。先ほどセキュリティ管理部から連絡がありまして、うちの部署のネットワークからftpでの怪しいアクセスが外部に飛んでいる、とファイヤウォールの警告があったそうなのですが…」
「それって、もしかしたら今トラブルになっているやつのことでしょうかねえ」
「ちょっと、セキュリティ管理部に電話して詳しい話を聞いてみて」

「セキュリティ管理部に確認したところ、やっぱり○○社のサーバのIPアドレスに対して何度も何度もftpでアクセスしようとして、ファイヤウォールにブロックされている、ということで警告が上がってるようです」
「でも、なんで? 一昨日までは問題なく使えてたんだよね? なんで急にブロックされるようになったんだ?」
「昨日の夕方にセキュリティ管理部の方でファイヤウォールの設定を変えたそうなんですよ。そのときに、意図せずに○○社との間のftpが禁止されちゃったんじゃないか、との話でした」
「『意図せず』ってなんだよ。それって、向こうのミスじゃないのか?」
「『変更前の設定が残ってないので詳しいことはわからない』って言ってました」

「そちらさん、セキュリティ管理部の設定ミスで、○○社との間のftpが出来なくなって業務に支障が出てるんですよ。すぐに元に戻して欲しいのですが」
「まだ、うちのミスと決まったわけではないので…」
「まあ、それは後で調べるとして、すぐに戻して下さい」
「じゃあ申請書を出してもらえますか?」
「なんでこっちが…そんなのは後まわしにして、とにかくすぐに…」
「ちゃんとした理由があって、しかも申請書を出していただかないと、ファイヤウォールのセキュリティを緩めるわけにはいかないんですよ。これは社長の厳命でもありますし」
「だって、いままで使えていたものが、そちらの設定ミスで使えなくなったわけで、それを元に戻して欲しい、って言ってるだけなんだけど」
「いえ、ですから申請書が…」
「わかったわかった。じゃあ申請書を持ってくればすぐにやってくれるんですね?」
「いえ、実施日の2週間前までに申請していただくルールになっていますので、今日申請書を出していただいても、設定変更ができるのは早くて2週間後です」
「あのねえ…だからそっちの…」
「いえ、ですからなんと言われても…ファイヤウォールの設定に関してはうちの部長と本部長と専務と社長の決済が必要ですので、どうしても時間がかかってしまいます。こちらのほうのテストと設定変更のための人の確保の問題もありますし」
「まさかこれで『工数がかかったので、費用が発生します』とか言ったりしないでしょうね?」
「もちろん発生します。後日、そちらに請求書を送りますので、よろしく」

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