ALCYONE LEGEND For エンジン脱着編1
さて、まとまった時間が出来たのでエンジンをとりあえず降ろしました。
このエンジンの脱着の行程としましては初めに用意する物はオイルとクーラントを受けるように何か適当なパン「皿」を準備してまず油脂類とクーラントを抜きます。
当然、エンジンオイルパンのドレンコックは「17ミリサイズのメガネレンチかボックスレンチ」を取って抜きます。
ボックスレンチを使用する場合はなるべく6角の物を用いて、12角でやると万一、ドレンコックのボルトが固く締まっている場合に滑ってボルトの頭をナメて
しまう可能性があります。
レンチをボルトにかけて一気にグイッという感じで緩めます。
じわー、という力のかけ方ではなかなか緩みませんのでここ一番は!という感じで瞬間的な力の掛け具合で緩めます。
クーラントはラジエターのドレンコック「画像参照」とシリンダーヘッドにあるドレンボルト「画像参照」を外して抜けばエンジン内のクーラントはほぼ完全に抜く
事が出来ます。
今回の脱着に当たってはエンジン外観の撮影もありクーラーの配管を外してコンプレッサーをエンジンに付けたまま作業いたしました。
本来は配管が付いたままでバッテリーを取り外し、そのスペースの所へコンプレッサーをよけて置いておくのが正規のやりかたです。
エンジンの降ろし方簡易説明。
注: 先にバッテリーのマイナスターミナルを外してから作業する事。
激注!: エンジンに付いている燃料ホースを脱着する際は事前に必ず燃料配管内に溜まっている圧力を抜く事。
圧力の抜き方は本来はエンジンが始動している状態で燃料ポンプのリレーのコネクターを外してエンストするまで待つ。
又は、完全ではないですがエンジンが始動している状態で燃料ホースのIN側をプライヤー等でつまんでエンストさす。
これである程度の圧力は低下しますのでホースを外した際にガソリンが噴霧する事はありません。
1: 電動ファン左右
これはラジエターのアッパー、ロアーレールに頭が10ミリのレンチで緩められるボルトが四本と三本で固定されていますのでこれらを取り外してファンモータ
ー用のコネクターを分離すれば脱着出来ますが、作業性のよさからいくと右側のファンを外してから、左側のファンを横にスライドさせれば簡単に作業できます。
2: ラジエター関係
ラジエターにATのオイルクーラーホースが二本「バッテリー側」接続されていますが、先にロアーホースを外してからの方が手も入りやすいので作業性はいいです。
アッパー、ロアーホースはプラスの大きいドライバーでバンドを緩めます。
ATオイルクーラーホースは中のプラスドライバーで緩めますが車の個体差で角度的にドライバーが使えない場合があります。
そういう場合は8ミリサイズのスパナか1/4スクエアのラチェットレンチでしこしこ緩めてください。
各々、ホースがパイプに固く固着していますが隙間から潤滑剤を流しながら、先に引き抜くより回転さすようにして手で思い
切り回しますが、不可能な場合は大きいプライヤーやウォーターポンププライヤー「水道屋さんが使う物です。」でグリグリ
やれば外せますが、慎重に行ってパイプ側の変形や破損を引き起こさないようにせねばなりません。
ラジエター本体はラジエターサポートの所で12ミリ頭のボルト二本でブッシュを介して固定してありますのでこれを緩めて
上方向に引き上げて外しますが、VXの場合はサポート右側に10ミリ頭のボルト二本でパネルが一部、取り付けてあります
ので先にこれを外してからでないとこのパネルが邪魔してエンジンルームより出てきません。
3: 吸気ダクト関係
これは超簡単で、エアクリーナケースとスロットルボデーの所でバンドをドライバーかレンチで緩めます。
ダクト自体は本来、柔らかい素材で出来ていますが経年変化で硬化している事が多く、柔軟性が得られない場合が多いので
ダクトが損傷しないように無理な曲げは厳禁にして、慎重に進めます。
ダクト本体にブローバイ系とエアコントロールバルブの配管が付きますのでこれらも外します。
4: ハーネス関係
エンジン電装関係の配線は脱着する際は極めてシンプルであります。
丸い大きなコネクターが二個、エンジン右側後部へ行ってますのでこれを切り離します。
他銘柄ではこの辺りの年式の車では集中コネクターになっておらず、各センサー系のコネクターを一個づつ外すか、ボデ
ー内に入っているハーネスをエンジンコンピューターより外す必要がありますので,こういうリペアラビティーの事迄、
考えて設計しているスバルに感服です。
配線関係は他にエアコンのコンプレッサー部の所に三個付いていますのでこれを脱着する事。
更に、オルタネーターへもバッテリーからのダイレクト線が来ていますので、当然、バッテリーのマイナス
端子を外しておいてから外す事。
それから、オルタネーターにもコネクターが一個、付いていますので先ほどのB端子と一緒に切り離す。
最後にディストリビューターへのコネクターと点火コードが一本、イグニッションコイルに行ってますのでコイルの防水
カバーを外して分離する事。
5: ケーブル関係
ケーブルはアクセル用の物と、クルーズコントロール用のものとがスロットルボデー付近に付いていますので固定用のナット
「12ミリ」を緩めて、スロットルリンクの末端に自転車のブレーキレバーの根本に付いているような太鼓型の丸い部品を外
して分離します。
6: マフラー系
エキゾーストパイプはエンジンシリンダーヘッド部で14ミリ頭のナット&ワッシャーが八個と、ミッションメンバー部で
14ミリが一個、センターパイプとの結合部が14ミリと12ミリ頭のボルトとナットで締結されていますのでこれらを分
離しますが、先にエキゾーストパイプに取り付けられている、02センサーと触媒用のエキゾーストセンサーのコネクター
を分離しておかないとだめです。
7: ホース類
ホース系は先にラジエターのアッパーホースとロアーホースはラジエターより分離出来ていますので、残っているエンジン部
とは完全に分離して作業性を確保した方がいいと思います。
別にホースは外さなくてもエンジンの脱着には支障はないのですがエンジンを降ろす作業の場合、出来るだけ廻りをシンプル
にしておけば、作業中に邪魔にならなくていいと思います
ヒーターホースは二本、エンジン後部左側にありますのでプラスドライバーでバンドを緩めるだけで外れます。
エンジン左側に燃料関係のホースが三本付いています。
フューエルポンプから来るラインと燃料タンクへ返す、リターンライン用とキャニスター「燃料タンク内で蒸発したガスを一
時的に溜めてガスと水分に分離するタンク」用です。
キャニスター用の配管は固定クリップをプライヤーでずらすだけで簡単に外れますが、くせ者は燃料系で高い圧力がかかる
ホースでもあり、簡単にはいかないようです。
燃料ホースはバンドを緩めてから結合部に潤滑剤をまんべんなく吹き付けながら少しづつパイプより抜いていきますが、凄
く固いですので変に、プライヤーでつまんで作業するとホースに傷がいくので慎重にいきます。
後はエンジンルーム前方右側のエレントケースの前に丸いタンク「キャニスター」からのホースが3本。
これは楽勝で外れますのでエンジンとのパイプだけを分離してキャニスター本体はボデーに付けたままでオーケーです。
8: 大物&小物
ここまでくると、後はコンプレッサーをブラケットから外して、バッテリーを外して、開いたスペースによけておきます。
ベルト関係を外して整備する際はクランクプーリーのボルトを先に緩めておきます。
これはかなり固く締まっていますのでトルクコンバーターとの締結ボルト「ドライブプレートとATのコンバーターとを12
ミリ頭のボルトで固定しています。」を点火時期を確認するサービスホール「エンジンリヤハウジング上側」から四本先に
緩めておいてからここへ何かエンジンが回転しないように固定出来るような物を入れてクランクプーリーボルトをバキッと
緩めておきます。
これはエンジンを降ろしてからではクランクシャフトの固定が難しいので必須項目であります。
プーリーボルトが緩めば先ほどのコンバーター用のボルトを四本、完全に取り外して、トルクコンバーターがフリー「指で回
して軽く回転するように」になるようにしておきます。
次に、ピッチングストッパーと呼ばれるエンジンの動きを規制するロッドがミッションとボデーとに結合されていますので、
14ミリ頭のボルト&ナットを外して、取り除く事。
当然、バッファーロッドも外しておきますがこれは出来れば最後にしたほうが、エンジンとミッションを締結している
ボルトを外した時にエンジンが前方へ倒れる可能性があるので出来れば、一番最後に行う事をお勧めします
これらの作業を怠ると、エンジン、ミッションが分離の際に上に持ち上がらないので必ず、外しておきます。
9: 最終工程
ここでは最終的に今まで外した物を最終チェックします。
現在迄の文章中ではオルタネーターとエンジンマウントがまだ外れていません。
オルタネーターやクランクプーリーは付いていてもエンジンの脱着は出来ますが、ここではエンジンをミッションと分離す
る際に前方へ移動した時に反動でクーラーコンデンサーをプーリー関係で破損する可能性がありますので、とにかく、前方
に付いている部品は出来るだけ外してしまいます。
具体的にはクランクプーリー、オルタネーター、ウォーターポンププーリー、ポンプとロアーホースを繋ぐ継ぎ手パイプです。
それからオイルフィルターのポンプの所に油圧計のセンサー「丸い大きな物」がついていて、結構飛び出ていますので、これ
も外します。
ココまで来ればあとはクロスメンバーの所でエンジンマウントと固定している14ミリのナットを外します。
10: 分離作業
上記迄の作業が完全に行われているのを確認した後に、エンジンとミッションを固定しているボルトとナットを外します。
エンジン後部ハウジングの上側にボルトが二本、14ミリサイズです。
上記2本の内、一本はセルモーターと共締めになっています。
下側はちょうど、ドライブシャフトの内側のブーツの前方付近にナット&ワッシャーで固定されていますので、多少固いで
すが外します。
これで分離作業のファイナルですが、VXのエンジンは排気量の割には軽量ですが人力で降ろすには無理ですので、チェー
ンブロックによるつり上げで行います。
オルタネーターの固定に使用されていたボルトにフックが共締めされていますので、前はこのフックを用い、後ろ側はシリ
ンダーヘッド左右にハンガーが付いていますのでここに均等に三点でつり上げても大丈夫なチェーンをセットしてから少し
ずつエンジンを持ち上げていきますが、ここでミッションが一緒に付いてきますので車体の下側にジャッキをセットしてミ
ッションのデフ部分を軽く持ち上げていきます。
これはエンジンがミッションと分離した際に、ミッションが落ちないようにサポートするものです。
持ち上げは最小限にエンジンマウントのボルトがメンバーより抜けて3センチほど高ければいいと思います。
ここからはハウジングの隙間にドライバーみたいな平たいものを入れて、ミッションとの分割をしますが、ここでトルクコ
ンバーターがエンジンに付いてこないように、慎重に作業します。
コンバーターは必ず、ミッション側に残るようにしないと中のシャフトが一緒に抜けてしまうと面倒な事になります。
分離ができたらエンジンがクーラーコンデンサーに当たらないように気を付けながらエンジンルームよりとりだします。
文章で書くとたくさんありますが実際に作業すると非常に簡単で二時間もあれば楽勝でエンジンを降ろす事が出来ます。
尚、ここに書いてある要領は富士重工が発行する整備解説書と異なる部分がありますが、机上での作業と現場作業での
合理的作業では食い違いがありますのでその点をかみ砕いて参考程度にしていただければいいと思います。
作業前のエンジンルームです。
一応フェンダーカバーを付けてボデー保護をしています。
こうして見るとSVX並にギチギチしている感じがありますが画像からみるよりかは、エンジンルームは割とすっきりとして
います。
作業していて手が入りにくいと感じる所はあまりなく、修理する側から見れば秀逸だと思います。
右側は脱着前にリフトアップした所です。
オイル漏れによる恥ずかしいシミがあちこちにありますがエキゾーストパイプの途中で白く見える部分はパワステギヤボックス
から漏れたフルードが焼けて変色したものです。
せっかく製作して耐熱ペイントで綺麗に塗ったのに残念!
でも、前方から後方へ二本で伸びていくマフラーレイアウトはかっこいいと思いませんか?
エンジン下部です。
オイルパン前方より前に伸びているのがエンジンの前方向の振れを抑制するバッファーロッドです。
こうして見るとオーバーハングがすごく大きいのが確認出来ます。
エンジンクロスメンバーよりエンジンがかなり飛び出ていますがこれは従来の四気筒より二気筒増えた分の重量増に対応
した結果です。
これはエンジンが発進時や後退時に上下方向へ動こうとする力を抑制するものですが、エンジンに直に付けると不快な振
動や取り付け部の損傷を招くので大きなゴムのブッシュを介して取り付けられています。
ちなみにこれに似たような物がミッションとボデーとの間にも、ピッチングストッパーという名称で取り付けられています。
これだけエンジンのオーバーハングが大きいと、最近のデザインの流席である、4隅にタイヤを配置するという事は不可能
でありおのずと運動性能も限られて来るのがよく理解出来ると思います。
ラジエターの右側画像です。
左の白いのがクーラントを抜く時のドレンコックです。
材質がプラスチックなので経年変化によりよく割れたり、折れたりしますのでアクセスした際は交換するようにしましょう。
この時に一緒にゴムのパッキンも同時に交換するのがポイントであります。
上の2極の端子の出ているのが水温スイッチで冷却水の温度を感知してファンリレーをスイッチングしてラジエター冷却用の
電動ファンの回転をオン、オフします。
めったに壊れる事はないのですが、こうしてラジエターを外したりや水廻りの整備を行う際は交換しておけば後々に出てくる
トラブルの予防にもなりますので是非、行いたいものです。
右側はボンネットフードを全開にした所です。
スバルの小型車の見えない美点でありますが、通常では他銘柄の場合はエンジンを上から引き上げる際に、あらかじめボンネット
フードを外しておく必要がありますが、スバルの場合はこうしてエンジンを降ろしたりする重整備の時を考えて、フードステーと
ステーを入れる穴の場所を変える事によりわざわざ、フードを脱着しなくていいようになっています。
でもあんまり、車を揺すったりしていると支持棒が外れて頭に空手チョップを食らう可能性がありますので、あくまで一時的な
ものとして作業が終了したら通常の開閉時に戻すようにしておきます。
エンジンハーネスの所の集中コネクターです。
スバルの場合はほとんどエンジン用のコネクターが集中タイプになっており、脱着の際はコネクターを切り離すだけで簡単に
ボデー側と、エンジン側とが分離できます。
反面、この部分のコネクターの中で端子が接触不良になるケースも希にありますが整備性という面から見れば優秀ですね。
他銘柄ではインジェクター、水温センサー、諸々のコネクターを一個づつ分離していかなければエンジンが降ろせないという
事も時々あるのですが、この当たりのスバルの設計思想は素晴らしいと思います。
右側は解度最悪でわかりにくいのですがスロットルボデーにアクセルワイヤーが付く部分です。
半円形の扇型の所にスロットルとクルーズコントロール用のケーブルが付きます。
Presented by ドクター