薫風 チョット 見聞録 !    IN FRANCE  A

  FESTIVAL D' AVIGNON 

 TGVの車窓の絵は、モノトーンからカラーに見る間に塗り替えられていく。

 出発は曇天のパリ、冷たく重い空気漂うリヨンの駅を後に、フランスの新幹線
TGVは、透き通った青いプロバンスの空へと誘われていく。緑拡がるなだらかな
稜線、点在する黄色いパッチワーク、それが向日葵の発色だと気付くのはしばら
くしてから。同一視線の向日葵の大群舞、ムー壮観!筈のない未知との遭遇が
自分の価値観の狭さを露見させる。これも旅の効用!ゴッホの絵の手触りを納得。
3時間半の車中はそんな風景と向き合い、ただ座り続ける旅。時間と空間が私の
ぐるりを飛び去って行く。少しブルーな旅愁が私をシートに沈ませる。チョツト
マッタ!今、私はフランスに居る、でも時差7時間で先を行く日本も現存している
はず、目の前を飛び去る風景も、ズートそこにあるわけで、通過しているのは私。
変化しているのは私の肉体、私自身、ならば、今、何を 如何に・・・この実感、
握り直せば、旅の期待はさらに増す。導かれて、今ここに・・・

 見えて来たアビィニオンの城壁は、その期待に拍車を掛ける。秘密のおもちゃ
箱を開けるみたい。おずおず、わくわく城門をくぐる。そんなに大きいとも思えな
い城壁に囲まれた街はまさしく熱い風が吹いていた。小さなシアターを探して歩
く道程がもう開演真っ最中のオープン会場。道端、露地そこかしこでパフォーマ
ンス、絶妙なペアのクラウン、広場でフルートの生演奏に聞き入りしばし足止め、
食事中でもかまわず店に突入してくるビラ配りの無礼講に唖然。多種多様なデ
モンストレーション。街中がエネルギーのるつぼ。子供も老人も犬も鳥もお祭り
気分の熱い風。小難しいことは置いといて、自分も楽しみ、相手も充分に楽しま
せる。自信満々のコミュニケート、行為する事に意味があり、観客もあえて巻き
込まれて、体感し、反応し、今を共有している。情熱家とヒューマンな人達。そん
な空気に浸っていると、変なこだわりや、不自由さから解放され、なんだかとて
も嬉しい気分!流れてきた曲に思わず身体が踊り出す。きっと今、私は今まで
で一番素敵なダンサー!?この天まで突き抜ける開放感。これだ、これをおみ
やげにしよう!

 私の気分を写したように帰りによったパリも上天気。青い空のキャンバスに白
い雲、奇跡的な自然のデッサン。仕上げは幾本の飛行機雲のアクセント。そして、
ルーブルの額。街中が美術館。文化を生み出す要素の違いを感じずにはいられな
い。ここの人達は、充実した人生の過ごし方を、心豊かに生きる方法を見つける
のが本当に上手。オルセー美術館のコレクションもすばらしかったけど、ティー
ルームのティラミスも絶品!!食べさせてあげたい、本物の味! Meci Beaucoup

 私も日本色の青い空 素敵な風を見つけだし 貴方と共有したいもの・・・
光を刻むその日夢見て、機上の長旅苦にならず、機外は漆黒の闇、UFOの灯で
も見えないかと眼を凝らす。さて、次は宇宙旅行か?タイムマシシーンか?好奇
心はエネルギー源!又、いつの日か・・!

                                    1998.7 渡仏 Kun

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