薫風 チョット 見聞録 !  @

 in NEW YORK CITY

  毎日の生活に追われる中で、何かが失われていく、視野が狭くなり、価値観
も固定してしまう、自分が固まってしまう、そんな直感的な不安感が、私を旅立
たせる理由のようです。風になりたい ・・・・ 一瞬の閃きで行き先決定!!後は
淡々と実行するのみ・・・
  初冬の N.Yは、セントラルパークの枯れ葉が舞うテンポと、足早に過ぎ去る
ニューヨーカーの歩調が、やけに同調している。大都会の季節が織りなす風が、
一人歩きの緊張感に、何故か心地よく感じられる。充実感って、満たされた時だ
けに感じられるものではなく、何が起こるのか不安が入り交じった期待感を持つ
ことも、一種の充実感。一人旅のこういう実感を望む私はヤッパリ ジャジャ馬な
のかな?ヤッパリ
 飛び立つ夜の関空は、海の様。滑走路に長く続く青い光が、静寂の海を思わ
す。着いたN.Yも夜。上空から見た全土を覆う夥しい光。陸地全てが焦土のよ
うに感じられる。全ての欲望が燃え、溶岩となってどろどろと地表に流れ覆い尽
くし、表面下に高熱を抱え込み、いたる所に、チロチロと光を漏らす。他の人が、
「ワーキレイ!」と声を上げている中、痛い戦慄を覚えるのは、私だけなのでしょ
うか?!期待の朝。空の色が見たくってカーテンをあける。ここは高層ホテルの
はず、空が近いはずなのに、目の前にはビルの窓。ずーっとずーっと首を傾けて
見上げなければ、空は無かった。何処を歩いても高層ビルだらけ、どんな形をし
ているのか見定めているうち、首も限界! 人類が積み上げた進歩の箱。何処
までも積み上げ、天に近づこうと言うのか?黒い点が地上に忙しなく蠢く!N.Y
には、自動販売機というものがない。文明の申し子ロボット化 日本では何でも
自販化、言葉を一言も発せず生活することができるというのに、防犯上のことも
あるのでしょうが、N.Yでは、地下鉄のコインを買うにしても、Boxの中の不機嫌
そうなオバチャンに、「One please!」「Yes」「Thank you!」「You are welcome!」
露天でcoffee一杯買うのも、「please!」言葉でコミニュケートしなくてはならない。
必至なって自分の意志を伝えなくてはならない。進歩という名のもとに、全てが
機械化され、人と人が生で係わりあう関係が、希薄になりつつある日本の現状。
超文明国であるN.Yの地上に住む心ある人間の微かな抵抗。人間の証明は、
何処に・・・?道を尋ねても、小さな買い物をしても、「Thank you!」と言うと必ず
「You are welcome!」って返ってくる。なんだかとってもホットになる一瞬。仕事
柄、Dance studio やらTheaterなど観て回る。やはり興味深く思うのはテクニッ
クやテンタティメント性ではなく、人間性、どう生きているのか、自分とは違う価
値観、生活感、そんな人間との出会いが面白く、我が身を振り返る術にもなる。
そんなこんなでウロウロ徘徊独りよがりの一人旅!! 去年はチベット 今年は
N.Y 次は・・・導かれるまま何時の日か・・何処へと・・・又旅立つでしょう!!!
  風になりに・・・
                             1997.12  記  Kun 
 

薫風 チョット 見聞録 !
                    番外

  以前はよく異国を彷徨し、チョット見聞録なぞを記していた。今、身辺ハタと見回すと日常案外意識せず素通りしている事が多いのに気がつく。当たり前の事が本当はとっても大切で、忘れている事の中に宝物がありそうな気がする。カーナビを見てると随分お寺のマークが多いなと思ったりする。きっと日本人の色んな生死観が刻まれているのだろうに・・己の死に様を考え始める歳になると人生の面白みがやっと分かって来るという、あれやこれやの回り道も無駄じゃないけど若い内、今はもう時間も限られてと思うから、この道一筋、人生のおかたずけ更に奥へ歩を進めましょう。しかし我が内を探ると、思いこみや幻想に支配されていることを痛感。明かりに照らされて踊っている時の内的イメージと観ている側のイメージのギャップは・・・後でビデオを見た時の゛こんなはずじゃー゛という思いに今まで随分苦しめられてきた。それも私とこの頃は開き直りつつも、人生はすべて幻想なのかもしれないと思う日々。唯識論じゃないけれど、そう思うからそうなのであって、青空と思うからあの色は青、恋いすればあばたもえくぼ、すれば人生幻想の中、自分らしく自由に謳歌すればいい・・・舞台は一方的に自己表現をするだけの場ではなく、コミュニケートする場・・・先日亡くなられた中村歌右衛門さんのようにこの世の者ではない世界に観客を巻き込み時間旅行を楽しますか、゛あー私だけじゃないんだ゛って人生の共感を呼び覚ましその悲喜劇を面白がらせるか。とにかく面白くなくちゃ意味がない。確かに現代は面白いと思う幻想多種多様、だからこそしかと共有したいから我が内なるおもしろ幻想、おもしろがって寄り集まりここにお披露目致します。
                                  2001/4   中川 薫
 

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