愚行連鎖 “Bone”to be Wild…

GB楽器博物館

骨化計画敢行

私はそれほどいい耳を持っている方ではない、どちらかというと鈍い方なので、コリアン/ミカルタのナット/サドルを骨(牛の大腿骨)に交換したからと言って音の違いはもしかしたら分からないかも知ない。と思っていた…

私の今回の骨化計画の一番の目的は、
以上である。

コリアンはまだしも、あのミカルタの見た目・質感は楽器として許し難い物がある。

持ち込んだのはその作業に定評のある老舗“K”。

“K”のオヤジサンの受け売り。

「Martinがロング・サドルを糊付けするのは、弦を張りっぱなしにされてもサドルスロットに負担が掛からないようにするため。
糊付けサドル糊無し化を実行した場合は、出来るだけ弦を緩めるようにしてください。」

だそうである。
…知らなかった。

ロングサドルのスリット “K”のオヤジさん曰く、
「糊付けのロングサドルの交換、嫌がるリペア屋さんいるんだよね。これがその理由」

写真で分かるだろうか?
只の溝だと思っていたが、なんと、箱形の穴、だったのだ。
サドル作りは楽しいけれど、糊付きサドル外しは自分では絶対やりたくない…
と常々言っていたが、こりゃ、それ以前に“出来ない”。


上に置いてあるサドルの末端に注目。
穴の深さ分だけ立ち上がりがあるのがお分かりになるだろうか?

“K”楽器も、OM-18Vをお願いしたリペア屋さんもサドルの長手方向に鋸を入れて、サドルを真ん中から割って掘じくり出す工法なので、ナットは必要ならオリジナルが戻るが、ロングサドルの場合、元のは帰って来ない。
熱をかけて接着剤を溶かして外す所もあるそうだが…
この方法なら、オリジナルサドルも戻ってくるが、楽器に熱を加えるのは出来る限り避けたい物である。
要らんよ、ミカルタの破片なんか…

マスキング 今回の作業では、骨材の磨き出しまでは頼まなかったので、帰宅後、心ゆくまで表面研磨。
サドルは外して磨けるが、ナットはそう言うわけには行かないのでご覧のようにマスキングを施してから作業する。

骨材は、研磨すると、見た目はもちろん良くなるが、研磨無しの物よりも長持ちするのだそうだ。


さて、肝心の結果報告である。
材質感の向上→これは言うまでもない。
今回の材は随分真っ白に漂白された物であるが、骨材なので、暫く使えば黄ばみや赤みが出て良い色合、渋い風合いになってくるはずである。
磨きだしたので光沢も品がある。
経年変化がない、と言うのが特徴のミカルタではこういう訳には行かない。

で、肝心の音である。
ミカルタと骨の材質差なのか、それともサドルを固定していた接着剤の層のせいなのか…
何とも言えないが、一言で表すなら、“皮が一枚剥がれた”と言う印象である。
腐ってもMartin。オリジナルのコリアン/ミカルタでももちろん、並のギターよりは深い音がするのだが、今回の交換は、鈍感な私でも即座に判った。
今回、敢えて死にかけ弦を張って持ち込んだのだが、それでさえはっきりと違いが判るのだ。

工賃としては決して廉い金額ではないが、これは絶対に損はない出費だと思う。
少なくとも、糊付けロングサドルでないモデルならば、自分でも出来、それならば材料費のみ。
耐久性を第一に考えるならともかく、ミカルタなどと言う材料はやはりナイフの柄か電子基板、コリアンは洗面台や便所の床に使うのが本来なのではないかと思う。


本日のお買い物

本日のお買い物 私は弦殺し…夏場は張って一時間も弾くとプレーン弦のメッキが全部剥がれる。
“K”でオヤジさんとそんな話をすると、「これを使ってご覧」と出してくれたのが右の筒。
“K”でも使っているそうな。

左は途中道草した“I”のパーツショップで発見したFender Vintage用のマイナスビス。
このサイズは入手がなかなか困難なのだ…


“K”で入手した秘密兵器“ghs FAST-FRET”の筒には、クロスと立派な木製の柄が付いたたこ焼きの油引き状の物体が入っている。

How to use… こんな具合に使用する。
まさに、鉄板焼きの油引きである。
フィンガー・イーズの類かと思ったのだがちょっと違うようである。

GLIDES ON,WIPES OFF うーむ…Clean Stringsの上、Lets You Play FasterでBrightnes Soundなんだとしたら…
そいつぁ嬉しいじゃ、ござんせんか!



ネジの頭 さて、お次はFender Vintage用のマイナスビスである。
高い高い!単なる木ねじが単価60円!ネジが欲しいだけなら絶対に買わない。はっきり言って馬鹿げた価格である。
しかし、そんな値段のネジを買ってしまうのがオタクのオタクたる由縁。
お分かりだろうか?
左が使用後、右が使用前
ごく一部、特殊な場合を除いて現在、ネジの頭は+である。


何より機械的に優れているし、構造的に高い締め付けトルクが掛けられる。締め付け作業が楽で効率が高い。…等々プラスネジは全てにおいてマイナスネジより優れる。
そうした理由により現在は市場でもマイナスネジは殆ど姿を消し、あったとしても今回のように非常に高価な物となっている。
嗚呼、それなのに、それなのに、なんで、そんなモン使うかなー。

答は一言「粋だから」。

まさに、ヲタク養い難し…
実は私はずっとずっと探していたのだが、こんな所に気が付く人は、まずいないはずなのである。

交換したネジはOM-18Vに取付けたGotoh SD-770の物である。
無粋で無粋でずっとずっと気になっていたのだ。
(ちなみにWaverlyには標準でマイナスネジが付属する)

頑張れGotoh ! Part-II
GOTOH SD Series SD770

OM-18VをMartin刻印入りペグからGotoh SD770に交換時の感想で…

ブッシュやストリングポストの頭が些かキラキラし過ぎる気もするが…
等と、控えめな記述をしているが、実は、どうしても気にくわない部分があった。
ブッシュである。
その他の部分は(Waverlyと比較したりしなければ…この価格差、比較するのが酷である。)非常に優れており、特に文句の付けようはないのであるが、ブッシュのデザインだけはどうしても納得できなかったのだ。
まぁ、こういう物だろうと半ば諦めていたのだが、先日、某所で見せていただいた、オーダーギターに装着されていたSD700番台のブッシュはWaverlyに遜色ない美しいデザインであった。
その時は、それほど不思議にも思わなかったのだが、何とはなしにGotohのカタログを眺めていると、SD Series、770番のみブッシュのデザインが異なるような気がする。
早速Gotohに問い合わせてみた…

なんと、Martin純正互換の770番のみブッシュが違うと言うではないか。
あくまでもMartin純正互換サイズなので、770番に限りOEMのものと同一のブッシュをセットして出荷しているとのこと。
それでは、ブッシュのみ頒けて頂くことは可能かと問うと、「小売店によってはGotohのパーツ売りはしないと言うところもあるようだが、在庫がある場合には補修部品として出荷する。直接販売も可能だが、送料などが掛かってしまうので、楽器店経由をお奨めする」という非常に親切な回答を頂いた。

SD Seriesブッシュ これが「楽器店経由」で入手した現物。これが欲しかったんだよなー!
左がMartin純正(770同梱品も同じ)、右が700番を指定して取り寄せた物。違いがお分かりだろうか?
デザインはもちろんのこと、仕上げからして格段の差がある。
カタログ図面上では純正品(770同梱品も同じ)は700/780番よりも打ち込み部分の径が太いと言う事になっているが、実は純正品(770同梱品も同じ)は打ち込み部分がテーパーになっており、図上の径寸法は根元の一番太いところなのである。


交換後の様子 よって、純正品や770番同梱品は叩かずとも装着できるが700/780番用は図上寸法が細いのにも関わらず、かなり装着には苦労する。
叩かずに装着できた方が良いと思われるかも知れないが、純正品(770同梱品も同じ)ではヘッド固定に関わる部分はテーパーが一番太くなっている根元部分のみ、現実の弊害として、演奏中にブッシュが緩んでだんだん迫り上がってきてしまうのである。
もちろん、ブッシュが緩んでガタが出るのだから音にも影響が出る。

SD Seriesブッシュ 左図の赤い部分が実際に効いている取り付け部分。

Martin刻印入り純正ペグをSD Seriesに交換をする場合、素直に考えれば互換サイズの770番となるのだが…
実は、780番(若干ネジ穴位置が外より)を選ぶのが正解なのである。
(770と780番の取り付け穴間隔の差は0.6mm…無視できる数値である)


GOTOH SD Series

各型番で異なるのは取り付け穴位置とストリングポスト(700番)のみで、ベースプレートのサイズは同一なので取り付け痕がはみ出す心配はない。
(700番はストリングポストの弦穴位置が低いので弦を沢山巻きたい方には向かない)
ブッシュの固定が確実になったら音色もクリアに明確になった(ような気がする。いや明らかに違う)。
私のはそれほどではなかったが、D-28徹底研究にはMartin純正ではビビリが出るという報告もあった。
やはり、あの純正OEMペグは…早晩交換すべき物ではないだろうか。

交換に際しても、このブッシュが同梱された物であれば、敢えてWaverlyを買おうとは思わない。
やったね!我らがGotoh!!

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