試奏など、迂闊にするモノではない…のかも知れない。
実際に手に取り、抱きかかえて弦を弾(はじ)いて見るまで、デザインや仕上げ処理のセンスが許し難い、と思っていたのは、全く持って真意だったのだ。
モノの本質は姿に現れる。
形から入る、をポリシーにしている私としては…
本当にこのSilene Bassの“形”は、どうにも違和感しかなかった、正直なところ。
デザイン的にいかがなモノだろう、と。
某所でエレクトリック・アップライト・ベースとしては最上級の評価を受けるイタリア製の楽器を触ってから一寸考え方が変わってしまった。
その楽器もデザインがこのYAMAHAと非常によく似ている。
似ているけれど、二つは決してパクりではないと思う。
つまり、“形”を最小限化して必要にして欠くべからず部分だけを残して行くと、こんな形になってしまうんではないかと。
弾くと解る。
これは「人とのインターフェイス・人体との関わり」を念頭に置いてみると、極めて合理的なデザインだと思う。
それが解ると、当初の少なからずあった嫌悪感がどんどん好意に変わって行くのであった…
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ペグヘッドのデザインだけはまだ好きになれないが…
(いくら何でももう少し色気があっても良いじゃないかって)
早速ライブに使ってみた。
「決して悪い音ではないけれど、良く言えばクリアな音色なんだけど、悪く言えばエレベみたい。」
と言う評を頂いた。
それがYAMAHAの“サイレント・ベース”に対するひとつの回答なのかも知れない。
たびたび話題に上げる
クリス・ミン・ドーキー 直伝
アップライト・ベース奏法〜エレクトリック・ベースとの奏法比較考察〜
教則DVDの様な題名だが、実はこれ、実質的にはYAMAHA SLB-200のデモンストレーション・ビデオに他ならない。
ここでクリスが弾くSLB-200は、もう、ベキベキのエレベのような音である。
シールド一本、EQフラットで弾くSLB-200を演奏者が聴くと、あそこまで硬質な音には聞こえない。
実際のライブでは演奏者の聴く音とと客席の音は全く違うので困るのではあるが…
あの一寸硬質な音というのは、やはり現代の音楽に沿った音造りなのだろうか…
クリアな音像を結んで、フレージングやリズムが明確に聞こえる音が流行と言えるのだろう。
実は、今まで、演奏中に自分が弾いた音で4弦の音って音程が取れない…どころか弾いてもステージではまともに聞こえていなかったのである。
SLB-200はちゃんと音程を持って音が聞こえるのだ。
さらに、演奏性は抜群である。
すこぶる、弾きやすい、あの奇妙なデザインは伊達ではない。
ウッド・ベースのつもりで抱えて殆ど違和感がないのである。
この辺り、やはりYAMAHAブランドの持ち味だろう。
車好きにはHondaの単車やTOYOTAの車といったら分かりやすいかな…
楽器として魅力的なのは強烈な個性がある方ではあるかも知れない。
しかし、楽器として非常に魅力的ではある、AtelierZ(=Landscape)やAriaと言ったメーカーの楽器は総合バランスではとても敵わないと思う。
とりあえずはウチのリードギターが音を気に入ってくれた様なので、全く問題なしである。
Bassはあくまでも脇にして土台であるから、上に乗っかるリード楽器と馴染めなければどんなに単体で評価が高くてもどうにもならない。
セッティングに関してはこれから、じっくり煮詰めて行くつもりである。
何しろデビュー戦を終えたばかりであるから。