GBのアームチェアCinema見ist:横道世之介

横道世之介

横道世之介

監 督 沖田修一
出 演 高良健吾/吉高由里子/池松壮亮/伊藤歩/綾野剛/朝倉あき/黒川芽以/堀内敬子/國村隼/きたろう/余貴美子
脚 本 沖田修一/前田司郎
音 楽 高田漣
主題歌 ASIAN KUNG-FU GENERATION「今を生きて」
原 作 吉田 修一「横道世之介」
製作年 2012


日曜日の朝、ゆっくりと起きて題名のない音楽会をぼーっと見ながら珈琲を飲んでいるとカミさんが…

映画行くから、準備して。

なんでも上映館も上映回数も少ないのだそうな。

全く事前情報を持っていなかった映画である。
そう言えば、劇場で予告編を見たし、一寸前にTVで紹介をちらっと見た気がする…

なんか、尺、長いし…
予告編や紹介見ても何ともつかみ所ないし…

いや、映画なら何でもご一緒しまっせ。

横道世之介 小さな劇場は大混雑。
ヲタ丸出しの若者の行列は本作ではなく「とある…」というアニメの入場であった。

監督はあの「南極料理人」や、「キツツキと雨」を撮ったヒトらしい。

導入部分でちょっと後悔した。
なんとも冗長なのである。
カットが長く、シーンがかなりダラダラ続くのである。
これで尺が長いのか?勘弁して欲しいな…

と、思いつつそれでも寝ないで着席していると…
不思議と、飽きない。


いや、冗長さがゆったりと落ち着いた気分に変わってきた。
なんだかこの監督にはめられた様だ。

全く予備知識を持たず、鑑賞前にパンフレットも読まなかった。
前半部分、一寸混乱を生じた。
説明少なに時代が行き来するのである。
よく見ると、古い方の年代は80年代か?
街の情景や人の服装、小道具類などがかなり気を遣って考証されているのが見える。

登場人物はかなり誇張され、ヒロインなどは強烈にエキセントリックではあるが…
不思議に不自然無く物語は進む。

途中で主人公の運命が語られるが、「あれ?これは事実に基づいたドキュメンタリーなのか?」と思う位、自然に映像世界に入り込めた。

一人の少年が大学進学で地方から出てきて過ごした一年間の何でもない物語。

いい人がいい人に囲まれて…

いい人が価値を持つ世の中は素晴らしい。

結末は決して楽しい物ではないのだが…
とっても切ないのだが…

見終わった後の気分がすこぶる宜しい作品である。
が…なんだかつかみ所がない印象は否めない。

横道世之介 原作があるのだそうな。

2008年4月1日から2009年3月31日まで『毎日新聞』にて連載、2009年9月16日に毎日新聞社より発売され、2010年度の柴田錬三郎賞を受賞し、同年度の本屋大賞3位に入賞したと言う。

帰りに文庫を仕入れて読んでみた。

横道世之介(文春文庫)/吉田 修一(著)
文庫: 467ページ
出版社: 文藝春秋 (2012/11/9)
言語 日本語
ISBN-10: 4167665050
ISBN-13: 978-4167665050
発売日: 2012/11/9

映画はほぼ原作を忠実に映像化している。
つかみ所がないという感じは原作を読んでも余り変わらない。

でも、何となく幸せな気分は増幅した。

きちんと結論を求めない物語があっても良いのかも知れない。

現在と過去を行き来する構成の中で、登場人物達みんなが世之介を懐かしく思い出す。

いなくなった後、私も出会った人たちにそんな思いで思い出して貰えるのだろうか…



横道世之介 ちなみに、予告編を見た時から主人公が(作中の年代であっても)古いカメラを持っているのが気になっていた。

知り合いになった写真家から貰った(原作では借りた)カメラと言う設定。
作中ではこのカメラが世之介の人生に転機をもたらす。
原作ではライカだったが、映像ではバルナック・ライカのコピーであったキヤノン製レンジファインダー。多分1950年代製。

何故こんな稀少なカメラを使ったのだろう?
オリジナルライカの方が現存数は多いだろうに…


横道世之介 劇場の売店でつい買ってしまった…
Canon IV Sb:1952年(昭和27)年12月発売モデルだそうだ。

これも映像に出てきた物とは仕様が異なる。
世之介が映画で使っていたカメラのレンズはセレナー50mm F1.8

まぁ、カメラ・ヲタ以外にはどうでも良い事ではあるが…


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