GBのアームチェアCinema見ist:南極料理人

南極料理人

南極料理人

監 督 沖田修一
脚 本 沖田修一
音 楽 阿部義晴
主題歌 ユニコーン「サラウンド」
出 演 堺雅人/生瀬勝久/きたろう/高良健吾/豊原功補/西田尚美/古舘寛治/黒田大輔/小浜正寛/小野花梨/小出早織/宇梶剛士/嶋田久作
製 作 年 2009 日本


南極料理人 カミさんに「映画見ようよ、ホッタラケ」と言ったらね…
「アニメ、要らない。こっちならつきあう」って…

ふうん…
予告編見たことあるし、映画館でチラシも確か貰ったけど…
なんか今ひとつ狙いが見えにくいタイトルだなぁ…


おいしいごはん 準備中。

平均気温マイナス57℃ 日本との距離14000km 究極の単身赴任!

南極、しかしペンギンも、アザラシも、ウイルスさえ存在しない地の果ての高地、“ドームふじ基地”では、8人の南極越冬隊員たちが凍てつく寒さの中で日々研究に励んでいた。そんな南極越冬隊員を支えるべく料理人・西村(堺雅人)が単身赴任してきた。孤立無援の僻地で西村は高級料理や日本で食べるものと変わらない家庭料理を繰り出す。

実際に南極で料理人だった西村淳の原作を元に、8人の男たちが繰り広げる人間模様をハートウォーミングに描く。


南極料理人 結論から言ってしまうと…

これ、良い!
凄く良い!

あまり事前に期待していなかったとか、予備知識がなかったというのも良い方向に作用しているのかも知れないが…

実に良い。

内容は前述の「あらすじ」そのままで、ただただ料理を作る、みんなで喰う!それだけの物語なのだが…

日本映画には「過酷な状況の中僻地で頑張る男映画」というジャンンルが昔からある。
“八甲田山”、“南極物語”、“黒部の太陽”…
最近では“劔岳 点の記”。

シリアスで男臭い作品群。

この作品も実はこの流れなのかも知れない。
知れないが、悲壮感はない。だって、これハートウォーミング・コメディだもの。
ただただ料理を作る、みんなで喰う!それだけ。

まじめに働くヒトをオチャラカすつもりはないのだが、なにも眉間にしわを寄せないと目的が達成できないわけではないだろう。

決して「ふざけている」とは言わないが、大上段に振りかぶるではなく、極限の中での人々の心と営みを飄々と描いてみせる、この作風は新鮮で、面白い。

ただただ料理を作る、みんなで喰う!それだけ。
ウィスルすら死滅するマイナス70度の南極のど真ん中。生き物も、植物もなく、水はふんだんにあるがカチンコチンに凍っている。
その中で一年半にわたり、越冬隊員のために朝も昼も夜も食事を作り続ける料理人の奮闘…の筈なのだが、その描き方は飄々としている。

どんな優れた研究者であっても食欲という本能には抗えず、至って節操がない。
「食べないと死ぬ」、そして「食べればウンコがでる」という当たり前の事実が笑いとペーソス(定型表現だが、まさにそれ)で描かれる。

特殊かつ過酷で閉ざされた環境は充分に描かれているのだが、それでさえも悲壮な感じではなく、人間の自然な営みとして実感的に伝わってくる。

役者も良かったんだろうな。
かなり喜劇的にデフォルメされているのだが「わざとらしさ」や「あざとさ」を感じさせないよい演出である。


南極料理人 生瀬は好きだが、それ以上にきたろうは凄かった。
もう普通におかしく爆笑の渦なのだが、笑いながらも何となく涙が出てしまうと言う複雑なシーンが…
まさか、こんなシーンで泣けるとは思わなかった。
(これから見る方は乞うご期待)

普通にメシが食える幸せと、その幸せを誰かと共有すると言う満足感…

「食べる(食欲)」という、ヒトとしての根元的な問題から、ヒトとヒトのつながり、家族との絆などいろいろなモノが見えてくる。

ラストシーン、帰国後の主人公が妻子と遊びにいった遊園地でのシーン。
このシーンにもやられたな。

劇伴も必要最小限で、カメラもほぼ固定。
ワルキューレの騎行をバックに握り飯と豚汁をかっ込むシーンなども生きてくる。 余計な「味付け」はほとんど無い。それも高評価だ。

美味しそうな料理達は“かもめ食堂”や“めがね”で起用されたフードコーディネーターだそうな。

多分、帰りにラーメンが無性に喰いたくなるはずである。
で、今晩の夕食はまさしくラーメンにした私であった。


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