GBのアームチェアCinema見ist:崖の上のポニョ

崖の上のポニョ

崖の上のポニョ
Ponyo on the Cliff by the Sea

原作・脚本・監督 宮崎 駿
声の出演 山口智子/長嶋一茂/天海祐希/所ジョージ/奈良柚莉愛/土井洋輝/柊 瑠美/矢野顕子/吉行和子/奈良岡朋子
音  楽 久石 譲
製 作 年 2008

宮崎である。とにかく宮崎である。
天才の仕事を見た気がする。
あぁ、頭の中をテーマソングのフレーズが廻るよ…

崖の上のポニョ TVは殆ど見ないし、本作に関しては、ジブリのサイトも見に行かなかった。
宮崎駿は、事前の作品露出を極力避けていたらしいと話に聴いていたから。

本作では、CGによる表現を廃し、全て手で描くアニメーションに原点回帰したという。
のっけからシンプルな線と単純(実はそうでもない、相変わらず非常に綿密に計算されているのだが…)な色彩の動画に、電気の音ではない絢爛たるフル編成のオーケストラとソプラノ歌手の劇伴が流れ、一気に映画世界に引き込まれた。
宮崎も当然見ているだろうが、ディズニーの名作“ファンタジア”、“ファンタジア2000”を彷彿とさせるオープニングではある。


崖の上のポニョ 作品タイトルや、少ない事前情報から、当初これは代表作とその原典、「となりのトトロ」や「パンダ・コパンダ」につながる作品なのかと思っていた。

一見それらの流れを汲むモノの様ではあるが、実は単純に同系列ではないのではないかと思う。

確かに、小さな子供と不思議な“常ならざるモノ”との出逢い、と言うモチーフは同列なのかも知れないけれど…

スクリーンは「天才」宮崎の感性の、文字通り洪水である。

崖の上のポニョ ワーグナーの楽劇“ワルキューレ”やJ.ベルヌの“海底二万マイル”にヒントがある…
アンデルセンの“人魚姫”が下敷きになっている…

等というお話しはどうでも宜しい。
「人が鉛筆で描いた絵が動く」圧倒的な存在感にまず感動せよ。
原点回帰とも言えるシンプルな絵と同期する音楽に感動せよ。
そして、説明不能な不思議な物語に感動せよ。

我らが誇る宮崎は健在であったことに感動せよ。


しかし、宮崎の描く家族はなぜいつも片親不在なのだろう?
そして、劇中老女達がつぶやく「走るって素敵だわ」というセリフは老境に入った監督自身への言葉なのだろうか?



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