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真夏のオリオン

真夏のオリオン/Last Operations Under the Orion)

監 督 篠原哲雄/岡田俊二
脚 色  福井晴敏
脚 本 長谷川康夫/飯田健三郎
音 楽 岩代太郎
主題歌 いつか「願い星〜I wish upon a star〜」
原 作 池上司(「雷撃深度一九・五」文春文庫)
映画化原作 福井晴敏監修/飯田健三郎著(「真夏のオリオン」小学館文庫)
出 演 玉木宏/北川景子(二役)/堂珍嘉邦/平岡祐太/吉田栄作/益岡徹
製 作 年 2009 日本


真夏のオリオン・原作:雷撃深度一九.五 潜水艦映画に駄作なし…とは言うが、“あの”福井晴敏が手がけた作品だという。
福井は確かに筆力がある人ではあるが…
どうなんだろうなぁ…


(画像は原作となった池上司の“雷撃深度一九.五”)

公式サイトによると…

イ-77潜水艦 vs 米駆逐艦パーシバルの壮絶な戦い。
亡国のイージス」「ローレライ」の福井晴敏が、4年の沈黙を破って放つエンタテインメント超大作が遂に始動。

だと…


真夏のオリオン と、言うわけでいつものようにカミさんと(夫婦50割で…)見てきました。

原作とはまるで別物である。
なんだかローレライ-IIのような煽り文句である。
原作の方がローレライより先だけど、ネタが殆ど一緒だから敢えて作り直すか??

まぁ、「イケメン」が出るのでカミさんも飽きないだろうと…

気になって調べたら…
旧帝国海軍伊号潜水艦で二桁番号のものは

伊号第1〜48潜水艦
伊号第51〜58潜水艦
伊号第60,63,67潜水艦
伊号第70,73潜水艦

イ-77潜水艦なんてのは実在しない。
もっと調べたら駆逐艦パーシバルなんてのも架空の艦らしい…
完全なフィクションである。

真夏のオリオン が…結論から言うと、これは「傑作」かも知れない。
最近は傾向が変わってきたが、今までの日本の戦争映画はやたら勇ましいドンパチか、悲壮感のみが溢れまくるお涙ちょうだいか、もしくは一時期の流行に乗った反戦モノか…

この作品はどれにも当てはまらない。
確かに「エンタテイメント」作品ではあるのだが、極めてニュートラルな姿勢で描かれた希望に溢れる物語。

人死にやら、悲壮なる犠牲を美化したモノではなく、最終的には敵味方であった人と人との気持ちのふれあいが感動を与えてくれる。
(全く内容は異なるが…)原作、そして脚本のノベライズを先に読んでいたので話の流れは全部前もって分かっていたが、それでもじんとするシーンはあった。

決して「派手な映画」ではないし、「戦争映画」を期待する向きにも物足りないかも知れない。
しかし、これは実は名作と言って良いだろう。
フィクションかつエンタテイメントではあるが、もちろん“ローレライ”の様なはちゃめちゃ仮想戦記物とは一線を画する作品である。
(どうしても過去の希代の名作“眼下の敵”と比較してしまうのではあるが…)。
ちょっと全体的に「綺麗過ぎる」気もしないではないけれどね。

ちなみに…
冒頭、主人公のイ-77が米国の潜水艦を水中雷撃で撃破するシーンで始まるが…

実は当時の潜水艦が水中の潜水艦を攻撃することはほぼ不可能であったと。

Wikipediaには以下の記述がある。
現実には潜水艦同士が水中で戦闘を行ったケースは唯一、1945年2月に、ノルウェーのベルゲン沖で英潜水艦ヴェンチャラーが、潜望鏡深度を航行中の独潜水艦U-864をソナーで探知後、数度シュノーケルを潜望鏡で目視したのちソナーで追撃し雷撃・撃沈したケースがあるが、実質水上艦艇に対する雷撃と変らないため、潜行中の艦同士の戦闘とは言いがたい。ホーミング魚雷の実用以前の潜水艦は、水中を三次元に移動する目標を攻撃することが困難であり、また現代でも潜水艦を保有する国同士の本格的な戦闘例が少ないためといえる。
まぁ、ミリヲタは映画を観てはいけませんよ、と言うことで…

みんなで帰って、腹一杯メシを食おう!
「両舷前進全速。進路、日本!」

 Orione nel colmo dell'estate

  Oh Orione!
  Guida il mio amato
  Che non possa sbagliare
  la strada di ritorno!

 真夏のオリオン

  オリオンよ
  愛する人を導け
  帰り道を見失わないように

それにしても、池袋の封切館、初日だというのにどう見ても1/4以下の入り。
大丈夫なんだろうか?



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