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メッセンジャー

メッセンジャー

監  督 馬場康夫
音  楽 久保田利伸
主  演 飯島直子
助  演 草なぎ(*)剛/京野ことみ/矢部浩之/加山雄三/別所哲也
製 作 年 1999
シナリオ 戸田山雅司
原  作 ホイチョイ・プロダクション
(*)クサナギのナギ:はJISに規定されているが、俗に言う「機種依存文字」である。
Windows環境の人ならShift-JIS:FA67で“g”(弓へんに剪)が見えるのだが…。

愚行連鎖 …Monologue…(独り言)
酒とビデオの日々-1-:メッセンジャー 2000.3.20.より抜粋加筆
ホイチョイムービー三部作と呼ばれる物に続く4番目、1999年、久々の作品。
前作から10年、馬場康夫は処女作の大ヒットの呪縛と永いスランプから抜け出した…のだろうか?

三部作と言えば、私が大好きな大林宣彦は俗に言う「旧:尾道三部作」を取り終えてからいささかテンションが落ちてつまらなくなってしまったように思える。
(異論はあるだろうが、個人的には「さびしんぼう」がベストだと思っている)
がしかし、ホイチョイムービー4作目は、前作との間隔が長く十分に企画を練れたのか、相変わらず絶好調である。

ホイチョイムービーというと「常にトレンドを発信してきた映画」と言う印象が強い。
確かに若々しい感性とその時々の空気の流れを、印象的な「アリモノ」音楽に乗せて描く手法は大した物だが、単に流行を追う、あるいは流行を発信してやろうという商売臭さだけではここまで注目されないだろう。
監督、馬場康夫は「本当に映画が好き」なのだと思う。
送り出す側が面白がって、楽しく作れば受ける側にもそれは伝わるものだろう。

内容はハチャメチャである。
(訳知り顔に「ご都合主義」などと宣う御仁もいるかも知れない。)
そして、単純明快。結末など最初の数分で分かってしまう位のシンプルさである。
しかし、そのハチャメチャさ、単純さををマイナスに感じさせない何かがある。
一言で言って爽快なのだ。
「結末など最初の数分で分かってしまう」こと等、少しも否定要因にならない。
逆に「あ、やっぱり」「あーよかった」は、この場合観客を落胆させない。
それどころか見ている側は当然の結果に喝采するのだ。

そう、「正義は、勝つ!」のだ。

筋書き等は言うなれば昔のアメリカ漫画そのもの。
偶然の出会いから話が始まり、恋があり、恋敵がいて、悪役も登場(黒ずくめで子供にでも分かる、ほとんどダースベーダーだ)。
危機に一人二人と仲間が増え、見守ってくれる長老格もいる。
この辺りはもう、ハリウッド映画や黒澤を引き合いに出すまでもなく、活劇映画のお約束。
ホイチョイムービーも実はほとんどこのパターンの繰り返しなのだ。
(ワンパターンは決して“悪”ではない)
更に加えれば、全てのホイチョイムービーはかつての清く明るい“青春ドラマ”の伝統をもすっかり包括している。
つまり、欲張りにも、およそお話が面白くなりそうな要素を全て含んでいるのだ。
偉大なるかな、ワンパターン。頌うべきかなマンネリズム。
その上、溢れる速度感、映像も綺麗、トレンディ心をくすぐる演出もばっちり…
もう、娯楽映画本来の楽しさは十二分と言える。
結末など見え見えに関わらず、手に汗握ってワクワクしてしまったのは私だけだろうか?

そう、「そして、幸せに暮らしましたとさ」なのだ。

映画が大好きな監督は、同じく映画好きの勘所を見事に掴んでいるのだな。
「ご都合主義」良いじゃない。
1時間半程度の時間をひたすら楽しく過ごせれば…それが娯楽映画の本質ではないかと思う。

結果的にメッセンジャーは粋でお洒落な傑作なのである。
(ただ、それだけ…と、言えなくもないが)

眉間に皺が寄って、しばらく絶句して考え込んでしまうような重い映画もそれはそれで大好きである。
人間、ひたすら真面目にならなくてはいけないこともある。
しかし、普段着で楽しむなら…「映画はやっぱ楽しくなきゃ」ね!

前作までのホイチョイムービーでは、ヒロインが年下または同年輩の可愛い娘ちゃんであった。
今回のヒロイン飯島直子は少々印象が異なり、最初はどんなモノかと思ったが、ううむ…なかなかである。
結構素敵な女優さんであるな。
SMAPの草なぎ剛も寡黙でまじめであるが、いささか要領の悪い青年を好演している。




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