GBのアームチェアCinema見ist:思い出のマーニー

思い出のマーニー

思い出のマーニー

監 督 米林宏昌
作画監督 安藤雅司
美術監督 種田陽平
出 演 高月彩良/有村架純/松嶋菜々子/寺島進/根岸季衣/森山良子/吉行和子/黒木瞳
脚 本 丹羽圭子/米林宏昌/安藤雅司
音 楽 村松崇継
主題歌 プリシラ・アーン「Fine On The Outside」
原 作 ジョーン・G・ロビンソン
製 作 年 2014



ジブリの…と言うよりも宮崎(+久石)信奉者(だった?)、とはいえ、ジブリは日本映画界でもはや誰も無視できないブランドといえるだろう。
取り敢えず公開初日に観に行く。

何だかんだ言おうともジブリが宮崎ワンマン・ブランドであることは間違いなく、巨匠期待の米林がどう育っているかがこの化け物ブランドの去就を決定づけるのであろう。

そのそそり立つように高く果てが見えない程厚い「宮崎色」を引き継ぐのか、それとも乗り越えるのか。

天才が選んだ後継者は後者を選んだようだ。
本作を素材として取り上げたのは宮崎だそうだが、さて、巨匠はもし自らの手で構築するなら、これをどう料理したのだろう?

後継者米林の前作アリエッティでも感じられたが、本作も余りに従来の宮崎色とは異なるお話である。
(何故か親が欠損した家庭という設定だけは連綿と続いている。宮崎作品で両親健在なのは魔女の宅急便位である。)

映画を鑑賞する際には出来るだけ予備知識を入れないようにしているのだが、帰ってきてから調べたら、キャッチコピーは

「あなたのことが大すき。」
「この世には目に見えない魔法の輪がある。」

なのだそうだ。
そうか…あれは「魔法」だったのか。

舞台設定は変更されているが、筋書きそのものは原作にかなり忠実らしい。
原作を読んでいないので分からないが、なんともホラーというかミステリーというか…
禁断の「夢オチ」ではないものの、「不思議さの必然」がなんとも不自然な物語に感じた。
Wヒロインの主人公達の関係もなんだか不気味な印象である。
原作に忠実なのだとしたら、これは映画制作者の責任ではないのだが…

「この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間。でもそんなのはどうでもいいの。私は、私が嫌い」。
そんなヒロインのモノローグにも好印象が持てない。

いや、言いたいことは解るのだが。

「再生の物語」なのだとしたら、これは確かにそうなのかも知れない。

米林宏昌は「『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』の両巨匠の後に、もう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。この映画を観に来てくれる「杏奈」や「マーニー」の横に座り、そっと寄りそうような映画を、僕は作りたいと思っています」と述べている。

う〜ん…
これ、子供向けなのか?

多感な少女を一寸通り過ぎた位の女性層にものすごく受けそうな作品である。

いや、これは本作が悪いのではなく、原作と私の相性が合わないのかも知れない。
そうだよ、こりゃ男にゃ解らん世界だぞ、と…監督は男だ。

かなり評判が宜しいエンディング曲も、特に心に響く物ではなかった。
作中でストリングスアレンジにスキャットが乗ったワルツが流れる。
どこかで聴いたことがある。聴いたことがあるが題名が思い出せない。

エンドロールに“アルハンブラの思い出”とクレジットがあった。
アルハンブラなんかどこで鳴ってた?

あ…あれはそうか、アルハンブラだったんだ。

それにしても父の背中は余りに大きく、偉大なる父の背中は遥か遥か彼方、刺し殺すにはあまりに遠すぎる…のかも知れない。


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