GBのアームチェアCinema見ist:ゲド戦記
ゲド戦記 TALES FROM EARTHSEA
監 督 宮崎吾朗
音 楽 寺嶋民哉/谷山浩子
主 演 岡田准一
助 演 手嶌葵/菅原文太/田中裕子/風吹ジュン/香川照之
製 作 年 2006
原 作 アーシュラ・K・ル=グウィン
原 案 宮崎駿(シュナの旅)
シナリオ 宮崎吾朗・丹羽圭子
息子宮崎吾郎は、父宮崎駿の跡を継げるのであろうか?
恐らく、意図した結果だと思われるが、予告編を見る限りでは父の足跡をトレースしているだけのようにも見られる。
七光りで終わるか、新たな光として「もう一つの風(The Other Wind)」となれるか、非常に興味あるところではある。
本作は、宮崎駿が大好きでご本人の一つのバックボーンになっている物語だとか、かつて映画化を申し込んだが原作者に断られた、後にジブリ作品の評価が高まり、今度は逆に原作者から映画化の話があったとか、宮崎駿は既に自分が作るべきではないとしたのに、息子の吾朗が作ってしまったとか…
いろいろな話が聞こえてくる。
あちこちググって見ると、それはそれは評判が悪いようである。
曰く
画質、内容ともに愕然としました。
一番辛いのはお父さんだね。
お父さんの足元にも及ばない。
ル=グィンに謝りたい。
予想通り、つまらなかった。
今世紀最大の駄作。
駿の絵とネタの単なるパクリ映画。
息子は、これで終わり。
これは酷い。
これは、「ゲド戦記」ではありません。
等々…
(役に立った順一覧軒並み☆一つのYahooムービー。ユーザーレビューより)
しかし、酷評と良いレビューの差がこれほどある映画も珍しい。
なんとなく、どちらも工作の臭いがぷんぷんするが…
記名記事であり、比較的中立と思われる日経BPの映画評は…
宮崎駿監督のように密度の濃い演出とはいかないかもしれない。くだものに例えれば、熟れて食べ頃なのが宮崎駿監督。熟れ具合ではとても適わないが、まだ青い部分を残しているからこそ、漂わすことができる清々しさを感じさせる、そんな作品に仕上がっている。
と結んでいる。うーん…こちらも何だかとても苦しそうである。
ジブリ(宮崎駿)ファンとしては、世間の悪評が本当なのかどうか確かめるべく、映画館に足を運んだ。
(ブレイブストーリーでは痛い目見たしなぁ…)
人がつまらないと言う作品なら、ジブリファンを自認する自分は冷静中立の目で出来るだけしっかりと、じっくりと見るようと心掛けた。
のだが…
画質が悪いという評があるようだが、それは気にならない。
アニメーションにおける絵の描き込みは、それは制作者の個性だろうから。
しかしながら、その他の酷評は当たらずとも、である。
この進行は何なんだろう。
飽きる、何だか解らないけれど飽きる。
音楽は…そのものは悪くないのだが…
なんで、ここで盛大に鳴る?
なんで、ここでこんなにダラダラとフルコーラス流す?
なんで、ここで鳴らない??
更には、(原作とは全く違う流れだそうだが…)原作の設定をそのまま何の説明もなく唐突に押し込む。
原作を知らない者は見るなといわんばかり。
もはやこれは監督個人だけの脳内完結なのだろうか?
魅力的な人物がひとりも出てこない。
そもそも最初から最期までストーリーに救いようがない。
ジブリ映画で途中退席したくなった作品は初めてである。
エンドロールが終わった後で何ともやりきれない気分になったジブリ映画も初めてである。
この作品に関して、とにかく酷評を非常に多く見る。
感情的と言うか作為的な意見もちらほらと見受けられるが、大部分は冷静に作品を観た上での、嘘偽りない意見であると思う。
むしろ高評価を与えている人達に、大小問わず何か恣意的なものがあるような気がしてならない。
私とて、ジブリファンを自認する人間である。ジブリ作品を心から楽しみたいのだが…
これは…
「第一回監督作品にしては上出来」という評価はすべきではないと思う。
金を払って鑑賞する観客は「素人の習作」を見たいのではなく、「プロが作ったジブリ・クオリティの作品」を見たいのだから。
立派な作品を題名そのままに俎に載せながら…
→これを「原案」と言ってのけてしまっているのは何とも…
シュナの旅 アニメージュ文庫 (B‐001)
宮崎 駿 (著)
出版社: 徳間書店 ; ISBN: 4196695108 ; (1983/06)
ル=グインにも宮崎駿にも失礼というモノであろう。
だったら最初から「シュナの旅」を作れば良かったのだ。
あ、そうか、今回の作品にはタイトルに“の”が入ってないから、最初から駄目なのか?
(ジブリ:宮崎駿作品のゲン担ぎでタイトル決定時に本気で検討するらしい…タイトルの“の”)
これは導入であって、続編を作るつもり、と言うのならまだしも…
(まず、続編はないだろうな、これでは…)
いや、スターウォーズだって、最初の一作目だけでははっきり言って説明不足以外の何物でもなく、後になって、後付の理由で壮大な叙事詩風に仕上げた訳だけれど…
ラルフ・バクシが作りかけて頓挫したアニメ版クソ作品“指輪物語”と、どっこいか?
何も最低ランクの作品の作劇法を真似なくても良いのに。
ハチャメチャで何が言いたいのか分からなくなってしまったブレイブストーリーよりはマシか…いや…どちらとも言えないな。
(ってのは、全く持ってして評価の対象外…)
偉大なる父の背中は遥か遥か彼方、刺し殺すにはあまりに遠すぎた…
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