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The Lord of The Rings

指輪物語:The Lord of The Rings

監  督 ラルフ・バクシ
音  楽 レナード・ローゼンマン
主  演 
助  演 
製 作 年 1978/米
シナリオ クリス・コンクリング


もちろん、J.R.R.トールキンの“あの”「指輪」の映像化作品である。
「旅の仲間」と「二つの塔」の前半までが映像化されている。
これは近年大ブレークした実写版ではなく、撮影した実写フィルムを1コマずつセル画にトレースする“ロートスコーピング”という手の込んだ技法を駆使して作られたアニメーションである。 監督、バクシは「フリッツ・ザ・キャット」で有名。
が…
CGによる効果とは明らかに異なったリアルさであったが、映画そのものも賛否両論だった。
残念ながらこの作品は「指輪」ファンには受け入れられる事なく、原作者の息子、クリストファー・トールキン氏も激怒(何処にだろう?)したらしい。 興業的にも成功とはいい難く、恐らくバクシの映像としての「指輪」は永遠に完結しないこととなるであろう。(と、封切りと同時に見て思ったことが、現実となってしまった。)
この作品で、バクシ監督は大きな負債を抱え込み、結局後編は映画化されないまま、永久にペンディング…可愛そう。
続編を作る予定だったので、話は途中で切れている。

画面そのものはまさにディズニー映画。あまりにイメージを固定しすぎるキャラクターはやはりファンからは拒否されるだろうな。

さるWeb批評では、発売されたDVDに対して、

ポジティヴなことも少しは書いておこう。音楽はそう悪くはなかった。
ロトスコープ方式という、実写をトレスしてのアニメーション映像化技術をもちいた、指輪の幽鬼の表現はなかなかよかった。…
…ほかになにかあったかな。ああ、価格はかなり安いな。
指輪関連と聞けばなんでも集めるなら、買い。
懐が寒く、イメージが壊れるのが怖い場合は、見送り。
指輪物語初心者は、…
…これを指輪物語との出会いにするのは、不幸ではないかと思われる、
とだけ意見しておこう。

とあった。
私の場合は前者、取りあえず、懐かしいから買っておこうてなもんで入手した。
「指輪物語初心者は、……これを指輪物語との出会いにするのは、不幸…」
と言うのは、否定できないかも知れない。



久々に見直してみた。
以前書いた感想で…
「原作者の息子、クリストファー・トールキン氏も激怒(何処にだろう?)したらしい。」
等と書いているが…冷静に鑑賞すれば分かることである。

これは怒るわな、確かに。

冒頭部分はほとんど“ト書きの”説明だけで全速走り抜け、一時間半の枠内に物語り中盤、第一クライマックスまでのエピソードを無理矢理詰め込み…
こんなナレーションは劇場公開時に、入っていたか否かは覚えていないが、映画ラストで、やはり“ト書き”で、「勇者達の活躍で世界に平和が戻った!」と無理矢理終わらせてしまっていた。

終わってないツーに!

この映画のラスト部分は角笛城攻防戦なのだが、これは原作では中盤を過ぎた位置。ストーリーはこれから展開、結末へ向かうというのに、オークを血飛沫上げてバシバシ切り倒し大量殺戮で殲滅して、はい完了。
指輪はどこへ行った?ホビット達はどこへ消えた?
何一つ問題解決していないのだ。

恐らく25年前にこの映画を劇場で見たときには、単純に「指輪が映像になった!」と言う興奮だけで筋なんぞなーにも見ていなかったのであろう…

まさに
「指輪物語初心者は、……これを指輪物語との出会いにするのは、不幸…」
「指輪マニア」「指輪コレクター」なら止めないが、原作をお読みになっていない向きには絶対に勧められない。
アメコミそのまんまのキャラクターもナニだしな。

2004.2.21.加筆


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