GBのアームチェアCinema見ist:魔女の宅急便

魔女の宅急便

魔女の宅急便

監  督 宮崎駿
音  楽 久石譲/ 挿入歌:荒井由美
主  演 
助  演 
製 作 年 1989
シナリオ 宮崎駿
原  作 角野栄子(福音館書店刊)


挿入歌:やさしさに包まれたなら、ルージュの伝言(荒井由美:アルファレコード)
原作は同名の児童書「魔女の宅急便」福音館書店 1,290円(小学校中級以上)
(ISBN4-8340-0119-9 C8093 P1290E)

宮崎作品全てに共通する空中浮遊感覚はそれはもう快感に近いものである。

この作品は、今までのファンタジー的なものと違い、「魔女」と言う非現実的な存在が、現実の世界の「普通の少年少女」の旅発ちと成長にオーバーラップした印象で綴られている。
空を飛ぶことしかできない魔女の少女の能力なんて、田舎から出てきたばかりの少年少女が、「オートバイに乗れる」とか、「ちょっと絵が描ける」程度の能力と同じ様なものだ。
と宮崎氏が何処かで語っていた。
そんな少年少女の鏡像とも言える主人公の挫折と希望を美しい映像で気張らずにみたいものである。

(89-07-30)我慢できずにキキに逢ってきました。

仕事帰りに映画館の前を通ったら、まだ最終回に間に合う。
無意識の内に入場券を購入したしまった私であった。
普通月曜日の最終回などと言うものは、かなりの人気番組でも空き席ぐらいはあるものだが、なんと立見が出ていた。
それも、子どもの姿は殆ど無い。館内は夢を捨てきれない大人達で一杯。


我が、敬愛する宮崎駿先生。

やはり貴方は偉大です。
私は原作付きの物がその原作を凌駕した例をいまだ知らない。
しかし貴方は原作の持ち味を壊さずに更に膨らませ、宮崎駿の「キキ」を私に見せてくれた。
更に、いつもの事ながら言わずもがなの光と陰の魔法。
わが国を代表する映像作家と断言しても異論は出ないでしょう。

特に印象に残ったのは、力を込めて離陸するキキの表情。
いい表情ですね。一枚の絵を完成するのでさえ苦心慘憺している私なのに、貴方はそれをいとも簡単に(見える)動かしてしまう…
やはりこれもジブリの魔法という他はないようです。

ドルビーサラウンドのサウンドトラックもなかなかの物でしたね。
あの町並みにぴったりの可愛らしいタンゴが私の一番のお気に入りになりました。

展開する空間は善人しかいない異常な世界なのに違和感が無い。
これも不思議な宮崎マジック。
宮崎作品にかならずと言っていいほど登場するおばあちゃん。
今回は加藤治子さんそのままの素敵な方でしたね。
私は、オソノさんのご亭主のさりげない存在感がとても好きです。
極め付き空中浮遊感覚!
これはもう何も言う必要はなさそうです。

しかし、一部のファンの為だけに映画を作るつもりはないと仰るとおり、
トトロの続きのつもりの子ども達の若干の失望が館内に多少あったようです。
トトロが情景を描いた作品だとすれば、
この作品は感情を描いた作品と言えるかも知れませんね。
そう考えると小さな子にはちょっと…だったのかも知れません。

それはそうと、宮崎作品に登場するお父さんは何故みんな優しすぎるくらい優しく、頼りなげなのだろうか?

それから、私にもまだ「ホウキ」はあるのでしょうか?
市井の1ファン GB拝


嘘を書いてしまった…
上記、出さなかったファンレター「我慢できずにキキに逢ってきました。」の中の一行
そして、こちらでも書いた一行

「私は原作付きの物がその原作を凌駕した例をいまだ知らない。」

なのだが、実はこれを書いたときにこの「火垂るの墓」が頭の片隅に無かったと言えばこれも又嘘になる。

宮崎作品は文句無しに楽しい、俗世間の嫌らしさを忘れて、すがすがしい空気の中を飛翔することが出来る。
しかし、この宮崎の朋友であると同時に師匠とも言える高畑勳の本作品は人によっては『、出来れば見たくない』と言った印象を持つことも確かではある。
これはかなり辛く、重たい作品なのだ。
そう言った意味で、楽しい宮崎作品のアーティクルを書くときに殆ど「無意識」の内にこの作品を避けて通っているのかも知れない。

全く情けないことに、夢の世界の楽しさの陰で、現実を直視することを避けようとしている自分が恥ずかしいと思う。
夢とは別に「苦しくとも」見つめなければならない現実があることは紛れもない事実である。


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