GBのアームチェアCinema見ist:ハウルの動く城

ハウルの動く城

ハウルの動く城:Howl's Moving Castle

監  督 宮崎駿
音  楽 久石譲/木村弓
主  演 倍賞千恵子/木村拓哉
助  演 三輪明宏/我修院達也/加藤治子
製 作 年 2004
原  作 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
シナリオ 宮崎駿

実は、封切りのかなり前から前売り券を手に入れてはいたのだ…
(何せ、宮崎信奉者だからね)

次の宮崎の原作はこれ!と言う情報が流れた数年前に、下に紹介する原作も上下巻とも入手していた。
読んだ…と書けないところが辛い。
私は大学時代、児童文学の同人にいたこともあり、子供向けの本は大好きなのである。
話題になりそうな子供向けの本は出来るだけ読んでおきたいと思うし、事実、読む。
通常、この程度のボリュームの児童書なら、寝る前に寝床に持ち込んでその日か次の日には布団の中で読了するのが常なのである。
常なのであるが…この本だけは駄目だった。
最初の数頁でくじけ、それでも必死に数十頁読み進んだところで止まってしまった。そして、そのまま。
そもそも、ストーリーに付いていけない、登場人物のイメージが全くわいてこない、当然キャラクターが好きになれない。もう頁をめくるのが苦痛でしかなく、結局挫折した。こんなことは初めてである。
(あくまでも、この作品が悪い、と言っているわけではない、私には合わない、単に好き嫌いの問題なのだ)

そんなこんなで、一応前売りを買っていながら、今日まで延ばし延ばしにしてしまっていた。
やっと重い腰を上げて映画館に向かったのであるが…

宮崎マジック炸裂っ!
なんで、もっと早く見なかったかなーっ!


恐らく、本作も口うるさい映画マニアからはかなり酷評されるのだろう。
が、なんと言っても、単純明快。
思想やメッセージが煩かった“もののけ”や“千と千尋”とちがって、単なるラブストーリーのおとぎ話。(表面的には…ね)
そして、なによりラスト、みんな幸せに暮らしましたとさのハッピーエンド大団円!
悪い人は一人も出てこない。
説教臭い表現もない。
爽快である。快感である。
これぞ漫画映画。
漫画映画に難しい理屈は要らないのである。

付け加えるなら、音楽。
ずっと宮崎とともにあった久石譲は、宮崎のイメージを知り尽くしているのだろう。もう、予想通り、期待通りのサウンドトラックに拍手喝采である。
宮崎作品にはこの人の音を欠かすことが出来ない。
特に全編通して流れるテーマ曲とも言えるワルツ、“人生のメリーゴーランド”はパリのミュゼットを彷彿とさせ、何とも哀愁を帯びて美しい…

エンディングの主題歌は前作“千と千尋”に引き続き、木村弓が書いているが、今度は歌詞が谷川俊太郎。前作の主題歌は日本語としていかがなモノかと思われる耳に突き刺さる歌詞が気持ち悪かったが、今回の主題歌は流石超一流の詩人である。(悪い…曲の方は全然印象に残っていない)

ちなみに一緒に行ったカミさんは見る前、
(彼女はSMAPが好きなので、木村を嫌いなわけではないと思うが…)
「木村拓哉ってのがね…」
と言っていた。つまり、木村拓哉は色が強すぎると言うことである。
しかし、見終わった後には、
「キムタク臭くなくて良かった。ハウルって素敵よね」
だそうである。
確かにこの役をキムタクで演じられたら困ったことになったろうが、本作では彼の起用は悪くなかったと思う。逆に、これはカミさんも同意見だったが、倍賞千恵子は少々無理があったように思う。
呪いで婆ぁにされている時はともかく、19歳の主人公には一寸ね…かなり違和感を持たざるを得ない。
19歳の主人公と言えば、個性を出すためか、いつもの宮崎ヒロインとは一寸印象が異なる。
造形的に漫画家「星里もちる」の描く女の娘と印象がだぶってどうにも困った。
(魅力はあるんだけどねぇ…)



魔法使いハウルと火の悪魔 こちらが原作。
“魔法使いハウルと火の悪魔/ハウルの動く城1”ISBN: 4-19-860709-5
作 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/訳 西村醇子で徳間書店からの刊行。

続編の“アブダラと空飛ぶ絨毯”も入手してはあるのだが…どうもねぇ…

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