GBのアームチェアCinema見ist:ブラス !

ブラス !

ブラス !:Brassed Off

監  督 マーク・ハーマン
音  楽 トレヴァー・ジョーンズ
主  演 ピート・ポスルスウェイト
助  演 ユアン・マクレガー/タラ・フィッツジェラルド
製 作 年 1996/英
シナリオ マーク・ハーマン
原  作 


廃坑で揺れる炭坑の町の名門ブラスバンドが、苦節をへてコンクール優勝の栄光をつかむまでを描いた作品。
「ブラスバンド」というと我が国ではBrass=金管楽器だけではなく、軍楽隊に見られる木管楽器も含んだ編成をイメージするが、本作に登場する「ブラスバンド」は純粋なBrass=金管のみのアンサンブルである。
クラシック系の金管アンサンブルには結構有名なグループも沢山存在するが、かの国ではこっちの方がポピュラーなのだろうか?

劇中の楽曲は、モデルとなった実在の英国の名門ブラスバンド、グライムソープ・コリアリー・バンドが演奏し、演奏シーンでも同バンドのメンバーが出演者にまじって出演している。

ブラス ! 俳優達の演奏シーンは口元や息継ぎの体の動きや指使いが、全くデタラメ滅茶苦茶で白けてしまうが、ちらちらと映るリアルな演奏姿は実際のバンドメンバーだったのだ。

音楽映画を銘打つなら、俳優さんもせめて、指使い位は練習して欲しいモノだ。
演奏は大したことなくても、それなりに、いやそれ故に胸を打つのは作品もあるのだから…

軍事ヲタが戦争映画を見られないように、音楽マニアも下手な音楽映画は見られないのであった…

ところで、だいぶ前に見た作品のDVDを発見したので入手したのだが、この主演俳優…

スター・ウォーズ エピソード2”のユアン・マクレガーやん?

封切り当時、かの故淀川長治氏が作品の甘さや今更のテーマを指摘しながらも結構褒めている。
一寸失礼して全文掲載…

淀川長治の銀幕旅行
■ブラス! (96年イギリス作品1時間47分)

英国の涙を
バンド映画の中に

 見事にイギリス映画。出てくる生粋のイギリス人の顔をながめているだけでも、ニンマリとする気分。ところが、ストーリーがからくも甘い。この映画、日本人を思わせる。日本人と一番気分の異なるはずのイギリス人が、実はなんともまあ日本の木下恵介に似ていることでうれしくなる映画。

 炭坑閉鎖の悲劇。ジョン・フォードものなどでもたんまりと味わわせてもらっているこの悲劇。その炭坑夫たちが、ブラスバンドを作っている。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで晴れの演奏をして男同士抱き合って泣く…。

 そんなラスト今さらねぇ、おもしろくもないのだが、実はこの映画、イギリスの労働者階級の男の顔がいい。女房の顔がいい。その家庭の貧しさも見ていて勉強になる。ここに一人の娘っこ−というよりはしっかり者でいっぱしのビジネスガールを加え、この娘がブラスバンドの一員となって…というところが、甘い、甘い。

 しかし、監督のマーク・ハーマンは楽しく笑って、泣いて、見てもらいたい。そんな気持ちが画面いっぱいにしみこんで、加えてブラスバンドというわけで、失業労働者が命をかけて演奏。そのメロディー、そのラストの大演奏クライマックスが、「ウィリアム・テル序曲」だなんて、ここで胸ワクワク。その出来すぎが、かくもかわいいかと思わせた。

 やっぱり、このイギリス人の顔がみんないいのだ。涙を誘うブラスバンド・リーダーを演じるピート・ポスルスウェイトはじめ『トレインスポッティング』のユアン・マクレガー、すべて男の顔がいい。特におっさんたちのこの男の顔、ただ一人、女性演奏者を演じるタラ・フィッツジェラルドも悪くはないが、男がみんないいい。

 マーク・ハーマン監督は、今年四十三歳。いい年してこの甘さ。けど、日本人をさぞかし泣かすことだろう。名曲「ダニー・ボーイ」も涙ながらの演奏ですぞ!

この記事は産経新聞97年10月28日の夕刊に掲載されました。

流石である。どっかのオカマの似非評論家モドキとはレベルが違う。
映画評論ってのはこうありたいモノである。

こういう評論を読んでしまうと、もう素人が口を挟む余地はなし。

海外ではかなり高い評価を受けてそれなりにヒットしたらしいが…
我が国の映画ビジネスではこういう作品は屁よりも軽い。


return目次へ戻る