楽になっていくためには自分をもっと愛してあげることが必要だ、ということはいろんな本にも書かれていて、みなさんも一度は聞いたことのある言葉なのではないでしょうか。しかし、「自分を愛する」ということの本当の意味を理解している人はずいぶん少ないようです。多くの人が、今体験している苦しさ、辛さからなかなか逃れられなくなっているのはそのせいなのです。
ほとんどの人は「自分を愛する」という言葉を聞いたときに、「こんな自分を好きになるなんて無理だ」と言います。まず、ここに人生を苦しくする大きな誤解があります。「愛する」ことは感情的に「好きになる」こととは違うのです。
今、あなたがあなた自身を嫌いだとしても、それは問題ではありません。自分のことが嫌いな自分自身をそのまま許して下さい。そのまま認めてあげて下さい。「愛する」ということは「そのときどんな状態にあっても、今こうなっているのにはそれなりの理由があって、今はそれでもいいのだ」ということを受け入れるということなのです。
つまり「自分のことが嫌いな自分がいる」ということを、判断したり裁いたりせず、ただそのまま受け入れる、ということなのです。嫌いなら嫌いでオッケー、そんな自分でも大丈夫、ということです。
でも「受け入れる」ってなに?「そのまま認める」ってどいういうこと?という疑問を感じる方も多いかもしれませんね。次の大切なステップはここです。
「受け入れる」「そのまま認める」というのは、頭で考えるプロセスではありません。もしあなたが頭の中で「よし、わたしは自分のことをそのまま受け入れるぞ。自分が嫌いでもいいんだ。うん、そのままでいい!」と考えているとしたら、それはもちろん「どうしてわたしってこんなにどうしようもないんだ。もうこんな自分なんかいなくなってしまえ!」と考えているのに比べれば、とても素晴らしいことです。でも、それだけでは本質的な変化は起こらないかもしれません。
ここで大切なことは、「感じる」ことです。「自分を愛するって何だろう」とか「こんな自分を愛するなんて」とか「よし、自分のことを受け入れるぞ」とか考えている、まさにそのとき、それらの考えをちょっと脇によせて、そのとき感じているさまざまな感情、さまざまな感覚を意識してみて下さい。イライラする感じ、寂しい感じ、なんだか情けないような感じ、ほっとするような感じ、さまざまな感覚があるでしょう。
そして、同時に、あなたの身体をよく感じ取ってみます。身体のどこに力が入っているでしょうか。どの部分はゆったりリラックスしているでしょう。どこかにジーンとするような微妙な感覚はありませんか。それらの感覚を意識して、頭で判断したり分析したりせずに、ただ味わってみましょう。そこにあるのが不快な感覚であっても大丈夫です。ただそのまま感じることができると、その感覚そのものが変化していきます。
そう。実は「自分を愛する」「自分をありのままに受け入れる」というのは、まさにこのこと、つまり、心や身体の奥にある感覚をそのまま味わうということなのです。
日常生活の中で、自分の内側にどんな感覚があるかを意識する時間をできるだけたくさん作って下さい。一回一回はほんの一瞬でもいいのです。長い時間続かなくても大丈夫です。自分の内面をありのままに感じる瞬間が増えてくるにつれて、つまり、自分を愛することができるようになるにつれて、人生は深い部分から変容していきます。少しずつ楽になっていきます。
これはとてもシンプルなプロセスです。あまりにもシンプルすぎて、ほとんどの人がそのことを忘れていたのかもしれません。
「自分を愛する」ということ〜2へ(【まほろば通信】vol.121掲載2008/01/31)