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■「最初の体験」前夜(3)■


休みで実家に戻っていた2月の初め頃だったと思います。最初の症状はいつもの風邪のようなものでした。ちょっと熱っぽくて身体がだるくなる感じ。子どもの頃からお世話になっている病院で風邪薬をもらってきて、早めに寝たりしていました。

思えば、崩壊への予兆のようなものが確かにありました。なんだかわからない苦しい気分を無意識に家族に伝えようとしたのでしょう、わたしは家族に向って突然、「もしわたしが死んでも、……(後半のところは忘れました)」というようなことを言った記憶があります。それは、わたしのギリギリの表現だったのかもしれません。でも、それを受け止めてもらうことはできず、半ば呆れたような、半ば怒りのこもった反応があり、わたしはすっかり落胆したようです。

れは多分、2月の終わり頃でした。詳しい描写は重複しますので、ここでは省きます。今でもはっきり覚えているのは、胸の痛みと、遠ざかっていく天井、遠ざかって行く家族たち、遠ざかって行く世界全体、そしてその一方で、自分の死を身近に感じた不思議な安堵感。

たしはときどき、自分の一連の体験を臨死体験と似たものとして説明することがあります。一般に知られる臨死体験のようなイメージはここでは出てきませんでしたが、それ以前のわたし自身はこのときに「死んだ」と感じているからです。もちろんその時はそんなこと考えてもいませんでしたが、「自分は死んだのだ」という思いはその後自分の気持ちが落ち着くにつれて大きくなってきました。

れから次の体験までの半年ほどの間は、ここに書いた第一の体験よりも前の時期とも、後で紹介する第二の体験の後の時期とも異なる、わたしの人生の中でも不思議な期間でした。死んでから次に生まれ変わるまでの「中間世」と表現されているものはこういう体験をさすのではないかと思っているのです。

の世界にも属さない中途半端な感覚。でも、もう前いたところに戻ることはできない、ということにも薄々気づいていたような気がします。

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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2001/01/27