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■死と誕生の間■


の時点では、まだ自分に起こったことの意味はまったくわかっていなかったと思います。ただ、なんだかわからないけれど自分の内側で大きな変化が起こった、ということだけはうすうす気がついていたかもしれません。正直なところ、その頃のことはあまり覚えていなかったりするのですが。

の中で印象に残っていることをいくつか。

ずは、なんだかわけのわからない苦しさ。もちろん、その苦しさはそれ以前にも同じようにわたしの中にあったのでしょう。ただ、わたしはそれを感じないように無視していたのかもしれない。それが最初の体験をきっかけに意識に浮上してきたようでした。起きているときはもちろん、身体を横たえていても、四六時中、何かに苛まれるような苦しさと不安感が襲ってきます。

して、夜眠れない。夜がくるのが怖い。ラジオの深夜放送をつけ、その声だけが自分をこの世界につなぎとめているような感覚。今はそうではないのかもしれませんが、当時は日曜の深夜はどの局も放送機器点検のため、午前1時から5時までは放送がお休みになりました。その間は、ただ息をひそめて、その苦しさをやり過ごすだけでした。

っと朝が来ると、不思議な安堵感、やすらいだ気持ちに包まれました。それまでの人生の中で一度も感じたことのないような感じです。もっとも、今考えてみると、そのやすらぎは子宮の中で感じていたものと同じものだったような気がします。障子を通って寝室に差し込む白い光と布団の暖かさに包まれて、ひたすら眠り続ける。

まには外に出ようと思うのですが、足が重くて動かないのです。玄関までなんとか出たものの、そこから先には進むことができず、また布団に舞い戻り。このとき病院に行けば、きっと「自律神経失調症」なんていう名前がつけられたのだろうな、と思います。

学を休んでそんな生活をしているうちに、夏も終わり、秋の気配が深まってきます。もう一度生まれるときが近付いていました。

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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2001/02/06