私の「コンピュータ」履歴書 No.8

PC88とCP/MとFORTRANと


やっとのことで手に入れたPC-8801なわけですが、当時はフロッピーディスクなんて内蔵されていません。外付けでフロッピーディスクドライブがあったのですが、これが馬鹿高い、確か本体価格より高かったような記憶があります。ディスクは、今のような3.5インチじゃなくて5インチか8インチのやつ。このメディアも高くて、1枚1000円以上していたような……
そんなわけで、普通の人間は、プログラム等はテープレコーダを使ってカセットテープに録音していたものです(←「普通の人間」はパソコンなんて買わねーよ、という突っ込みは禁止)

まあ、とにかくコンピュータを買ったはいいけど、そんなに大したこともせずに、大学3年は過ごしていました。
そうこうしているうちに、春になり、4年生になって、研究室配属ということになりました。なんか知らんけど、3年のうちに、卒業に必要な単位のうち、研究室に配属になってからしか取れない「卒業研究」の単位以外は全部取っちゃっていて(←謎)、あとは研究室で遊ぶだけ、などと。
ところで、知っている人は知っている、知らない人は知らないと思いますけど(当たり前)、 物理学の研究者って、研究の手法から大きく二種類に分かれます。「理論物理」と「実験物理」とか言いますけど、前者は一日中机にかじり付いて積分ばかりやっている人(←極論)、後者は薄汚い作業着かなんか着て(物理方面はふつー白衣は着ない)力仕事をやっている人(←これも極論)です。要するに、理論物理の研究者は実験は一切やらないんですね。
私はどちらかというと、机にかじり付いているより、体を動かしているほうが好き……いやいや、見栄をはるのはよそう、頭を使うより体を使う方が向いている人間なので、迷わず実験物理の研究室に行くことにしました。
それに実験物理なら、実験データの処理で、コンピュータはいくらでも使えるだろう、という期待もあったのも確かです。でも、あんなに使う羽目になるとは……。

大学の研究室に配属になって、要するに何をやるのか、と言いますと、カリキュラムの上からは「卒業研究」という単位を取得することですね。その内容は、私の行っていた大学の学科では、各研究室が自由に決めていいことになっていたようで、私の行った研究室では、1年間に2つの研究テーマを与えられて、それについて論文を書いて、発表する、というものでした。
配属されて、私の最初のテーマは、ある実験装置の測定器の開発、特にソフトウェア部分の開発、でした。なんて言うと、物理学の研究と全然関係ないように思えますが、実際そうです。実験物理ではそんなのがよくあるんですね。何せ、物理の実験で使う測定器って、市販されているようなものを直接使える、ってことがあまりなかったりします。だから、自分のところで作るしかなかったりして。
で、やっとコンピュータの話に戻るのですが、私が開発することになった測定器の制御用コンピュータとして、PC-8801が使われることになっていたんですね。しかも、個人では高値の花だった8インチのフロッピーディスク付きという贅沢。
今はどうか知りませんが、当時の物理の研究者って、プログラミング言語ってFORTRANしか知らない人がほとんどで、必然的に、この制御プログラムもFORTRANで書くことになりました。まあ、本来ならアセンブラかCで書くのがいいのでしょうけど、まだこの時にはCは私もうわさに聞いたことがある、という程度で、コンパイラもあったかどうか。OSは、今となっては懐かしいCP/Mで、Word Masterっていうエディタを使って開発しました。
私が、OSというものを意識したには、たぶんこの時が最初だったような気がします。PC-8801にはN88-BASICっていうのが付いていましたけど、これは言語インタープリタに、その開発環境やらOS(モドキ)が渾然となったなんかよく訳の分からないモノだったりするのですが、CP/MなるOSを使うと、そのあたりがちゃんと切り分けられている、というのに感動したのを覚えています。
CP/MっていうのはDigital Researchっていう会社が開発したパソコン向けのOSで、MS-DOSはこいつを真似して云々、というような話がありましたね。まあ、CP/MとMS-DOS、使い勝手はよく似ていました、そのまんまやんけー、というくらい。

とにかく、FORTRANで制御プログラムを作る、というかなり無謀なことをやったのですが(だって、制御するためにビット演算とかしないといけないんだもん)、どうにかこうにかプログラムと論文をでっち上げて、1つめの研究テーマはクリアしたわけです ←しかし、むりやりプログラムをでっち上げたりするあたり、昔も今もやることは変っていないなあ。

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