新・闘わないプログラマ No.92

犯人は誰だ


今から数年前のこと、社内のLANのネットワークが頻繁にダウンするという障害に見舞われました。当時は、建物の各フロアにハブをおいて、その間を10BASE5のバックボーンで繋ぐ、という形を取っていたのですが、このバックボーンが頻繁に障害を起こすんですね。
「10BASE5」ってのはEthernetのオリジナルの形(というと語弊があるかな?)のLANで、最近は10BASE-Tなどに取って代わられてあまり使われなくなったものです。これは、通称「イエローケーブル」と呼ばれている太い同軸ケーブルを伝送路として使用し、このケーブルの途中にトランシーバという装置を取り付けて、そこから線を延ばしてコンピュータを接続します。一本のイエローケーブルでLANを構成するわけですが、このケーブルの両端には、信号の反射を抑えるためにターミネータを取り付けます。
で、この10BASE5を使っているバックボーンに障害が発生したわけです。10BASE5の障害で一番ありがちなのが、トランシーバの取り付け不良で、ケーブルの芯線と網線がショートしてしまうケースなのですが、当然このときにもこれを疑ってみたわけです。
フロア間のバックボーンになっているのと、正確な図面が無い(場当たり的に接続していったため)ので、かなり苦労して、あちこちにあるトランシーバの取り付け状況を調べていったのですが、どうしても原因がつかめません。ケーブル自体の断線も疑ってみようか、とも思い始めました。
このイエローケーブル、片方の終端は3階の機械室にあることを確認したのですが、もう片方の終端がなかなか見つからない。12階の事務フロアまで行っているらしいことは分かったのですが、さて終端がどこにあるか、というのが分からない。仕方が無いので、床を剥がしてケーブルを追って行くことにしました。
平日の昼間、みんなが机に向かって仕事している間を縫って、ケーブルの終端を求めて、周りの顰蹙を買いながら辿って行くと、ついに見つかりました、ケーブルの終端。12階のある人物の机の上の端の方にとぐろを巻いているイエローケーブル。
そもそも、なんでバックボーンのケーブルの終端が事務フロアの机の上まで来ているんだ??
その昔、この建物にLANの配線を行ったといわれる古老(?)の話を聞いてみると、どうも初めはバックボーンなんて考えは無くて、このイエローケーブルに全部接続するつもりで、事務机のところまでイエローケーブルを引いたらしい。その後、事務机に置くパソコンには10BASE-Tで接続することに方針変更になったため、この10BASE5のイエローケーブルはそのままうち捨てられたものと判明しました。
そんな話をしながら、件のとぐろを巻いているイエローケーブルを眺めていると……そこの席に座っている奴が、電話を掛けながらケーブルのターミネータを付けたり外したりしている。おいおいおいおい、あ、あのさあ、それ外しちゃまずいんだけど。いくら電話中で手持ち無沙汰だからって。
そーか、そういうことだったのか。なんで平日の昼間しか障害が起こらなかったのか、なんで不規則に障害が起こるのか……

コンピュータを使った最近のシステムって、ほとんどのものが、沢山のコンピュータをネットワークで接続した形のものになっているのですが、この配線が、今ではもう馬鹿に出来ないくらい複雑になってきています。
コンピュータ室(に限らないですが)あたりでは、床下をケーブルが縦横無尽に走り回っていて、どのケーブルが、どのシステムの、どこどどこを接続するための配線であるか、なんてことは訳が分からなくなってしまっていたりします。
結構恐いのは、まちがって別の線を切断してしまったとか、間違ったところに接続してしまってネットワークをダウンさせてしまったとか、ありがちで恐いです。そのために、ケーブル自体にはタグを付けておくことになっているのですが、実際には付いていない場合も多くて、もう訳が分からない状態だったりします。
例えばですね、あなたがもし、ある会社のコンピュータシステムに対して破壊工作を行うべく、その会社の機械室に忍び込んだとします ←極端なたとえ
さて、ここで何をやるべきでしょうか。機器をぶっ壊してしまう、というのも一つの手ですが、それも何やら野蛮です。もっとスマートに行きたいとお考えなら、ネットワーク機器に繋がっているケーブルをめちゃくちゃに入れ替えることをお勧めします。たったこれだけのことで、そのコンピュータシステムはかなりの長期間にわたってダウンしてしまうことは間違いありません :-)

そう言えばありました、最近もこんなことが。
あるLAN上でcollision(データの衝突、LAN上を流れるデータが極端に多くなると発生する)が多発しているんですね。そのせいで、LAN上をデータがまともに通らない状態になってしまっていました。
「なんでこんなにデータが流れてるんだ?」
「ううむ、このLAN、そんなに使われているはず無いんだけどねえ」
「ちょっとアナライザをいてれ調べてみるか」
「なんじゃ? このデータは??」
「変だよね。こんなデータ、ここ流れるはず無いのに……」
「おーい、このハブに付いている、こいつ、これ何だ?」
「え?」

あ゛、ごめん。それ私。繋ぐとこ間違えた。

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